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マミートラックとは?子育てをする女性のために企業ができる対策

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みなさんは「マミートラック」という言葉を知っていますか?

マミートラックとは、育休明けの社員が子育てと仕事の両立のため、負荷が大きな仕事を任されず、昇進・出世が限定される就労パターンのことを指します。

昨今、日本では「女性の社会進出」が叫ばれています。育児をしながら働く女性は年々増え、企業内でも家事・育児と仕事の両立支援も整ってきているように見えます。しかし、実際に日本は子育てをする女性にとって働きやすい社会なのでしょうか。

「マミートラック」という言葉から、日本社会が子育てする女性にとって本当に働きやすい環境なのか、働きやすい環境にするために企業や個人ができることは何なのかを解説していきます。

今回の記事はこんな人にオススメです
  • マミートラックについて知りたい人
  • マミートラック対策を知りたい人
  • 家事・育児と仕事の両立で困っている人
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日本で女性の労働力は増えるも課題はまだまだある

まず、世界経済フォーラムが公表した、各国の男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」から、日本社会の男女平等について分析してみましょう。

世界経済フォーラムは「The Global Gender Gap Report 2021」の中で、ジェンダーギャップ指数を公表しています。

この指数は、経済・政治・教育・健康の4つの分野のデータから作成されています。スコアは0が完全不平等、1が完全平等を表し、2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156カ国中120位でした。 

過去最低だった、2020年の121位から1つ順位を上げたものの、主要7カ国(G7)では変わらず最下位で、中国(107位)や韓国(102位)、アラブ首長国連邦(72位)など東アジアや中東の主要の国々より下位という結果になりました。

分野別に見ると、「経済」では156カ国中117位(前回は115位)で昨年より2つ順位を下げました。その理由として、以下の点が指摘されています。

  • 管理職の女性の割合が全体の14.7%と低い
  • 女性の72%が労働力になっているがパートタイムの職に就いている女性の割合は男性のほぼ2倍
  • 女性の平均所得は男性より43.7%低い

1989年と2019年の女性就業者数は、厚生労働省の「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」内のデータから、増えていることがわかります。つまり、日本社会は女性の労働力が増えているにも関わらず、女性の非正規雇用労働者の割合が高く、平均所得や管理職の数で不平等が生じているということです。

女性活躍が政策として掲げられ、働いている女性も増えているはずなのに、なぜこのような状況になってしまうのでしょうか。

女性の家事・育児の負担は依然として大きい

不平等が生じている背景の1つに、日本の既婚女性の家事・育児における負担がOECD諸国と比べ大きいことがあります。

総務省「社会生活基本調査」の「6歳未満児のいる夫の1日当たり家事・育児関連時間の国際比較」では、日本の夫の1日当たりの家事・育児関連時間が1時間23分に対し、妻は7時間34分と、夫の約5倍の時間を家事・育児に費やしています。

また、他国と比較してみても、アメリカの夫は3時間10分(妻は5時間40分)、スウェーデンの夫が3時間21分(妻は5時間29分)と、日本の夫の家事・育児関連時間は諸外国の半分以下で、日本の妻の家事・育児の負担が大きいことがわかります。

当たり前ですが、女性が家事・育児に費やす時間が多いほど、就労に費やす時間が少なくなり、育児をしながら続けられるパートなどの非正規雇用を選ぶ人や、正社員でも時短勤務や残業ができない働き方を選択し、なかなか昇進の機会を得られず管理職になりたくてもなれない人など、不平等が生じています。

以前よりは家事・育児と仕事の両立支援は整ってきている

とはいえ、以前に比べれば、企業内の両立支援制度は整ってきています。

厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査」によると、2017年10月1日から2018年9月30日までの1年間で、在職中に出産した女性(男性の場合は配偶者)の中で、2019年10月1日までに育休を開始または申し出をした女性は83.0%(前年度調査では82.2%)、男性7.48%(同6.16%)と男性の育休取得率の低さは問題になっているものの、女性の育休取得率は8割と高い水準となっています。

また、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングの「育児休業制度等に関する実態把握のための調査(企業アンケート調査)」(2011年度)によると、「企業規模別離職防止に役立った取り組み」として、大企業は「短時間勤務制度を利用できるようになったこと」、中小企業は「育休制度が取りやすくなったこと」との回答が多くなっており、企業も子育てと仕事の両立支援に力を注いでいることがわかります。

しかし、出産を機に離職する女性は未だに年間20万人いるという試算もあることから、出産・育児をきっかけに離職してしまったり、仕事で力を十分に発揮できずに悩んだりする女性は依然多いのが実情といえます。

それでは、女性が働きやすい社会にするためには、何が必要なのでしょうか。マミートラックという言葉から考えていきましょう。

マミートラックには良い面と悪い面がある

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マミートラックとは、育休明けの社員が子育てと仕事の両立のため、負荷が大きな仕事を任されず、昇進・出世が限定される就労パターンを指します。

マミーは英語のmommyで母を指し、トラックは英語のtrackで陸上競技場の周回コースを指します。マミートラックは復職後、勤務形態が時短勤務になったり、残業ができない働き方になったりする女性に補助的な業務が割り合てられ、その結果昇進・昇格から遠のく場合も多く、その様子が陸上競技場の周回コースを回るような代わり映えのない仕事を繰り返す様子を示しているといわれています。

そんなマミートラックは悪いイメージで使われがちですが、マミートラックにもメリット、デメリットの両面があります。以下の4つについて説明していきます。

2つのメリット
  • 家族との時間を取れる
  • 周りに迷惑をかけない
2つのデメリット
  • 就業意欲の低下やキャリア形成への懸念がある
  • 劣等感を感じやすい

    メリット1:家族との時間を取れる

    時短勤務や残業をしない就労体制を選択することで、保育園や幼稚園へのお迎えに間に合う時間に帰ることができたり、子どもや家族と過ごす時間を長く取れたりします。

    メリット2:周りに迷惑をかけない

    お迎えの時間や、子どもの急な体調不良などで子育て中の社員は、思いがけず会社を抜けないといけない状況になり得ます。補助的な仕事を行っていれば、突然の休みでも周りが対応しやすく、急に休みを取る時の精神的な負担を少なくできます。

    デメリット1:就業意欲の低下やキャリア形成への懸念がある

    単純作業や補助的な仕事ばかりを任されると、働きがいのある仕事をできないことから就業に対するやる気が低下し、最悪の場合、退職してしまうケースもあります。また、補助的な仕事ばかりで昇進・昇格の機会が得にくくなることも懸念され、それがまたやる気を低下させる一因にもなります。

    デメリット2:劣等感を感じやすい

    他の社員が残業をするなか、お迎えの時間に間に合わせるために仕事を途中で終えて帰宅しないといけないなど、職場で肩身の狭い思いをすることがあります。また、昇進の機会が得にくく、同期や後輩と比べ出世が遅いことへの劣等感を感じやすいこともあります。

    マミートラックでもやもやするママたち 「悲しい」「悔しい」などマミートラックへの反応

    マミートラックに陥ったと感じ、もやもやした思いを抱えている人たちも多くいます。SNSでの声を見てみましょう。

    マミートラックを解消するために企業ができる対策

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    このようにメリット、デメリットがあるマミートラックですが、デメリットを抑えて社員の就業意欲を低下させず、働きやすい職場を作るために、企業ができる対策として以下の4点を紹介します。

    • 育児中の社員の働き方についての理解を深める
    • 本人の希望を把握する
    • テレワーク・フレックス勤務を導入する
    • 保育制度やベビーシッター代の補助など福利厚生で働きやすい環境を整える

    育児中の社員の働き方についての理解を深める

    育児をしている女性に対する「できる限り短時間勤務にするべき」「女性は出産すればキャリアから外れて当たり前」といった考えを持つ管理職や経営者は未だに少なくありません。

    そのような考えを変えてもらうための工夫として、育休・産休についての勉強会や、女性が抱えている問題や課題などについて話し合う研修を取り入れるなど、育児中の女性に対する理解を深めることで、マミートラックについて無理解な管理職を減らすための第一歩となるはずです。

    管理職だけが研修を受けるのではなく、これから結婚・出産について考えている女性、男性社員も巻き込むことで企業全体が子育てをする女性に対する理解を深めることができます。

    本人の希望を把握する

    おもに男性が持つ「女性は育児を優先したがる」といった思い込みにより時短勤務を無理に勧めたり、家事・育児を優先しやすいように部署を変えたりと、女性社員本人が望まない方向へと勧めてしまうことも多いといわれています。

    配慮による行動の結果ではありますが、そんな風にマミートラックに陥った女性はやりがいを失ってしまうかもしれません。

    そのため「理解を深める」と同様に一人ひとりの希望は異なるという前提を持ち、定期的な面談などコミュニケーションを取ることで、本人の希望にしっかりと耳を傾けることも必要です。

    テレワーク・フレックス勤務を導入する

    新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業が仕事場を制約せずに働けるテレワークや、始業および終業の時刻を会社が設定しないフレックス勤務で働くことができるようになりました。

    子育てをする女性は、子どもの保育園・幼稚園へのお迎えや家事などに追われ、できる限り無駄な時間は少しでも減らしたいと考えています。テレワークを導入すれば、勤務先が遠く、通勤時間が長くかかってしまっていた人でも、通勤時間に割いていた時間を仕事に充てることができます。また、フレックス勤務にすることで朝早く出社する代わりに、退社時間を早めるなど各家庭に応じた働き方を提案することもできます。

    保育制度やベビーシッター代の補助など福利厚生で働きやすい環境を整える

    福利厚生を充実させることで、マミートラック対策を行うこともできます。子どもが小さい時には、子どもの送り迎えが働く女性には大きな負担となります。そのため、企業内保育園の設置や、ベビーシッター代の補助金を企業が負担するなど、福利厚生でサポートすることで、女性が働きやすくなります。

    個人ができるマミートラック対策

    企業ができるマミートラック対策を4点紹介しましたが、育休明けで就業する社員自身はマミートラックを回避するために何ができるでしょうか。以下の3つの対策について考えてみましょう。

    • 希望をはっきりと伝える
    • 夫と家事・育児の分担について話し合う
    • 家事・育児の負担を軽減する工夫をする

    希望をはっきりと伝える

    職場の上司は「育児中の女性は忙しい」という思い込みから、部署替えや時短勤務を勧めてくる可能性があります。望まないマミートラックを避けるためには、産休・育休期間中から、家族で話し合い、自分がどのような働き方・キャリアを歩んでいきたいのか、希望をしっかりと固めて上司に伝える必要があります。

    また、すでに部署替えや業務変更をされてしまい、もやもやした気持ち一人で悩み抱え込んでしまっている人も、上司にどのような働き方を望んでいるのか伝えましょう。希望を伝えることには勇気が必要かもしれませんが、伝えなければ上司も企業も対策の取りようがありません。自分や家族のためにも、自分がどんな働き方を望んでいるのかしっかり考え、伝える姿勢を持ち続けることが大切です。

    夫と家事・育児の分担について話し合う

    日本の女性の家事・育児負担は他の国に比べてもかなり大きいです。「母親だから」と一人で抱え込むのではなく、夫や周りの人を頼りましょう。産休・育休期間中は家事・育児をすべて担当していたとしても、復職後は同じようにできないことや、助けてほしいことなどを夫に伝え、家事・育児の分担を考える必要があります。

    男性は家事の全体像を把握していない人も多いため、普段やっている家事・育児をリスト化して見せ、分担を話し合える工夫をするといいかもしれません。

    家事・育児の負担を軽減する工夫をする

    家事・育児は働く女性、男性にとって負担の大きいものです。家事の負担を軽くすることができる家電製品の導入や、家事代行サービスを利用するなど、家事・育児にかかる負担そのものを削減することで仕事に集中する体力や時間を捻出することも、マミートラックを回避する工夫になります。

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    まとめ

    以前に比べれば、働く女性は増えてきており、育児をしながら働き続けたい女性を支える制度も充実してきています。

    その一方で、制度以外で実際に女性個人がどう働きたいか、これから働き続けるために何が必要なのかを考える時代となり、マミートラックのような言葉が出てきたのではないでしょうか。

    不用意なマミートラックによって、悔しい思いや悲しい思いをすることがなくなるように、企業に限らず、社会全体で考えていきたい問題ですね。

     

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