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ハラスメントを許さない職場づくり|個人と組織ができることとは

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ハラスメントには「嫌がらせ」や「いじめ」という意味があり、個人の尊厳や人格を不当に傷つける行為のことです。直接的な暴力行為はなくても、相手を不快にさせる、人格を否定するなどの行動や発言もハラスメントに該当します。

パワハラ、セクハラなどのハラスメントは、以前から社会問題として認識されており、ハラスメントを発端とした事件がメディアで取り上げられることもしばしばあります。2019年に成立したパワハラ防止法は、2020年から大企業、2022年から中小企業向けに施行され、現在はすべての企業でパワハラの防止措置が義務付けられています。

ハラスメントに対する問題意識が高まっている一方で、依然として多くの相談や被害が報告されています。つまり、仕組みづくりは進んでいるものの、ハラスメントに悩まされ、傷つく人を救うことはできていないというのが現状です。

※この記事は、寄稿記事です。

職場で起こりやすいハラスメントとは?

ハラスメントには様々な種類がありますが、特に職場で起こりやすいものとして、パワーハラスメント(パワハラ)、セクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)の3つが挙げられます。

 パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、以下の3つの要素のすべてを満たすものとして、厚生労働省が定義しています。*1

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

つまり、上司や部下といった職場での力関係を利用し、業務の範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与えることです。同僚であっても、一方が専門知識や経験が豊富であるケースは、優越的な関係とみなされます。

頻度や継続性が考慮されることもありますが、強い身体的苦痛、精神的苦痛を与える場合は、たとえ1回でも就業環境が害されると判断されます。

パワーハラスメントの典型的な事例は、以下表1の6類型に分類されています。*2

なお、この6類型はあくまでも典型的な事例であり、パワハラに該当する言動すべてを網羅してはいないため、これ以外の行動であれば問題にならないというわけではありません。*3

 セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントとは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることと定義されています。*1

上記の「職場」には、事業所内や勤務時間内でなくても、出張先や宴会の席なども含まれます。職場での関係を利用して、自宅などのプライベートな場所で行われた場合も、会社が対処すべきセクシャル・ハラスメントに該当します。*4

セクシャルハラスメントは、互いの立場や性別、性自認に関わらず、相手に性的な言動をおこない、受け手が不快に感じれば認定されます。

パワーハラスメントは社会通念上の許容範囲であるかや指導の適切な範囲であるかが考慮されるのに対して、セクシャルハラスメントは受け手が不快に感じたかどうかが判断基準となります。*5

職場でのセクシャルハラスメントには、「対価型」「環境型」があります。

対価型セクシャルハラスメントとは、性的な言動を拒否したことで、解雇や降格、不利益な配置転換、昇進の妨害などがおこなわれることです。

一方で環境型セクシャル・ハラスメントとは、性的な言動が職場環境に悪影響を及ぼし、能力を十分に発揮できないなどの労働をおこなう上で看過できないほどの支障をきたすことです。*6

マタニティハラスメント

マタニティハラスメントとは、正式には「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」のことで、他にもパタニティハラスメントやケアハラスメントと呼ばれることもあります。*1

妊娠による解雇、育児休業明けの降格など、妊娠・出産・育休をきっかけとした不利益な扱いが該当します。不利益な扱いとして、具体的には図1のような例があります。*7

図1のようなマタニティハラスメントは、違法行為であり、より悪質である場合は事業主名が公表されます。

なお、違法に当たるのかを判断する際には例外が設けられており、経営悪化などの業務上の必要性や労働者が同意しているかどうかなどが考慮されます。

 ハラスメント相談は増加している?

2019年に成立したパワハラ防止法では、2022年4月から企業の規模に関わらずパワーハラスメント防止措置をおこなうことが事業主に義務付けられました。また、セクシャルハラスメントとマタニティハラスメントは、男女雇用機会均等法と育児・休業法によって、対策を講じることが義務付けられています。*6

法整備が進み、ハラスメントへの意識の高まりや社会の成熟が期待されますが、現状はどうなっているのでしょう。厚生労働省が発表している民事上の個別労働紛争の統計では、「いじめ・嫌がらせ」が最多となっており、2021年度(令和3年度)では約8万件を超えています(図2)。*8

また2021年に経団連が実施した調査によれば、パワーハラスメントの相談件数は5年前と比較して「増えた」がもっとも多く、セクシャルハラスメントは「変わらない」が多くなっています(図3)。*9

相談件数が増えているということは、組織がしっかりと対策を講じ、相談しやすい職場づくりが実現しつつあると、前向きにとらえることもできます。

一方で、そもそも相談すべき事象が多く発生しているという事実から、ハラスメントが発生しやすい職場環境や加害者側の意識は変わっていないとも解釈できるでしょう。

ハラスメントが起きやすい職場の特徴

職場のハラスメント対策としては、トップのメッセージを明確にすること、実態把握のためのアンケートの実施、ハラスメント教育、相談窓口の設置などがあります。*10

組織として制度を整えることはハラスメント防止に有効であると感じられますが、ハラスメントが起きてしまう原因は他にもあるのではないでしょうか。

次の図4は、厚生労働省の調査結果にもとづいたパワーハラスメントが発生しやすい職場の特徴です。*11

図4によると「上司とのコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」、「残業が多い/休暇を取りづらい」の項目で、パワーハラスメントを経験した人と経験しなかった人の差が大きいことがわかります。

これはセクシャルハラスメントに関しても、同様の結果になっています。

目指すのは「心理的安全性」が確保された職場

管理職と一般社員に対してハラスメント研修を実施すれば、どのような言動がハラスメントになるのか、知識としては理解することができるでしょう。しかし、実際にはハラスメントは業務上の指導との線引きが難しいことが問題となっています。*12

さらに、先ほど図4で紹介したハラスメントが起きやすい職場の特徴として、上司と部下のコミュニケーション不足や失敗が許されない職場の雰囲気が挙げられているように、コミュニケーション不足や組織風土がハラスメントの原因になりうることが窺えます。

職場におけるコミュニケーション不足の解消のヒントとして、「心理的安全性」というキーワードがあります。心理的安全性とは、一般的に「風通しの良い」と表現されるような、不安やおそれを感じることなく、チームの誰に対しても率直に発言や質問ができる環境や関係性のことです。単に仲が良いというわけではなく、問題点やミスについても指摘しあえる関係を指します。*13

組織風土とハラスメントの関係に着目した研究では、「仕事以外のことで気を使うなど、心を煩わされることはない」「反対意見や違う意見などを言いやすい」「何かしようとするとき、それをメンバーが受け入れてくれる」といった心理的安全性が高い職場ほど、ハラスメントの発生割合が低い傾向にあるという結果が得られています。*14

しかしこのような心理的安全性の確保は一朝一夕でできるものではないため、組織として中長期的に取り組んでいく必要があるでしょう。

まとめ

職場でのハラスメントは、相手の心身を傷つける許されない行為であり、時には生きる希望やその後の人生を奪ってしまうことにもなりかねません。ハラスメントが横行している不健全な職場環境は、社員のモチベーション低下や企業経営にも影響を及ぼします。

「全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。」*15

これは、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」報告書で紹介されたある人事担当役員の言葉です。個人がどのような背景や価値観をもっていようと、ハラスメントが許されないことには変わりありません。組織における立場の違いだけで、人間として他者への尊重を軽んじることにつながらないように、まずはハラスメントの正しい知識をもつことから始めてみましょう。


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