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日本の人権問題|国連機関の審査と国際NGOのレポートから紹介

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新型コロナウイルスが世界を揺るがす中、今まで以上にさまざまな形で人権が脅かされています。

そんななか、2020年10月12日から11月6日の通常会期で、日本の人権状況が国連組織の一つである自由権規約委員会で審査される予定でした。しかし、新型コロナウイルスの影響で審査が延期されています。

自由権規約委員会の審査において、日本は人権を守れているのか、守るために最善を尽くせているのか、国際的に吟味されるのです。

人権問題といえば中国の新疆ウイグル自治区問題やアメリカの黒人差別問題など、海外の事例を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、日本国内にもまだまだ人権に関する課題は存在しています。

今回の記事では、人権に関する以下の内容を取り上げます。

  • 世界で定められる人権の定義
  • 各国の人権状況が審査される仕組み
  • 国連機関と国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」が懸念する日本の人権問題

 

今回の記事はこんな人にオススメです
  • 人権問題に興味がある
  • 日本にはどんな人権の問題があるのか知りたい
  • 世界から指摘される日本の人権状況を知りたい

人権とは

人権とは、簡単に「人間が人間らしく生きるために必要な権利」と理解されています。人種・肌の色・性別・宗教など関係なく、全ての人が自由に思ったことを表現すること、宗教を信仰すること、学校で学ぶこと、選んだ人と結婚すること、必要な医療を受けることなど、こういった自由を私たちは生まれながら持っています。

言葉のとおり人権は権利の一種です。権利とは、社会が守るべきルールに則ること、また、そのルールが守られることを要求できる地位を示します。つまり、権利は誰かに実現を求めることができ、そこには実現しなければならない責任者がいます。

そして、なかでも権利の保証について重大な責任を担っているのが国家です。

人権状況を審査する国連自由権規約委員会とは

世界で初めて、人権が国際的な基準として公式に認められたのは、1948年の世界人権宣言です。第二次世界大戦後、改めて世界は国境を越えた人権を守る努力と基準が必要だと認識したことを、この宣言が示しました。

世界人権宣言の中には「自由権」と「社会権」の二つの権利が明記されています。

  • 自由権
    身体の自由、思想・表現の自由、参政権などの市民的・政治的な権利を示す
  • 社会権
    労働や教育などの経済・社会・文化的な権利を示す

自由権と社会権は、それぞれ国際条約として1966年12月に国連総会で採択されています。前者の条約である「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(略して自由権規約)を締約国が守っているかどうかを審査・監督する国連組織が自由権規約委員会です。

自由権規約委員会は、国連人権理事会のように加盟国から成る組織ではなく、18名の専門家委員で構成されています。委員の任期は4年で、締約国から委員が属する国の重複がないように選ばれます。委員会は通常年3回、3週間の会議を開き、締約国の人権状況の審査を行います。

審査の仕組み

日本は自由権規約を1979年6月21日に批准しています。よって、自由権規約委員会に定期報告を提出する義務があります。定期報告は通常4年前後に一度提出されるもので、日本は2014年の第6回報告に続き、2020年に7回目の報告書を提出しました。

第7回の報告書はこちら(リンク先のPDF資料に移動します)

審査の流れ
  1. 自由権委員会は、審査対象となっている締約国に対して「事前質問」という、定期報告で触れて欲しいトピックのリストを提出。事前質問は、その国特有の課題や出来事をもとに作成されており、例えば日本政府には日本国憲法改正やアイヌ・琉球民族に関する質問が用意されています。
  2. 政府は、この事前質問票に答える形で定期報告を作成し、自由権委員会に提出。
  3. 自由権委員会の会議で、定期報告と「シャドーレポート(後述します)」をもとに審査。
  4. 審査後、「最終見解」と題し、懸念事項や勧告を締約国に通達。
  5. 次回の定期報告時には、対象国がこの「最終見解」に基づき、人権問題解決に取り組めているのか再審査。

シャドーレポートとは

自由権規約委員会による審査の3段階目で「シャドーレポート」という報告書が出てきます。シャドーレポートとは、NGO(非政府組織、Non-Governmental Organization)が作成する報告書です。オルターナティブレポートやカウンターレポートなどとも呼ばれます。

シャドーレポートは、政府が提出する定期報告で「はぐらかされる・不正確である・省かれる」などのおそれがある内容に対して、正しい情報を提供するために作られる“影の”レポートです。

定期報告は政府が作成・提出するものです。よって、必然的に政府の見解が反映される内容になります。そこで、人権状況をより多面的に見るため、政府と利害関係のないNGOがシャドーレポートを作成・提出します。

国連はシャドーレポートを有益な情報源として認めており、自由権規約委員会も審査に使用する資料として採用しています。

アムネスティ・インターナショナルとは

1961年に発足したアムネスティー・インターナショナルは、200カ国で活動する世界最大の国際人権NGOです。

主な活動は、情報発信と国連や政府への提言です。世界各地で政府や活動団体、人権侵害の被害者と対話するなど、独自調査をもとに調査レポートを作成し、世界に発信しています。また、自由権規約委員会へのシャドーレポート提出など、国連や各国政府に対して人権状況を向上させられるよう働きかけています。

アムネスティ・インターナショナルの日本支部は1970年に設立され、公益社団法人として日本の人権状況を向上するために活動しています。

 NGOが国連と国家に対して果たす役割

NGOという名称はもともと国連と関係をもつ政府以外の組織を指す用語でした。今では人権、平和、貧困、紛争など様々な問題を解決する目標をもとに活動する非政府・非営利組織のことをNGOとよびます。特定の地域のみで活動するNGOもあれば、世界中に拠点を置く国際的なNGO団体も存在します。

NGOは国連との情報共有や活動方針の策定支援と、国家がきちんと人権などの責任を果たすためのサポートや外圧をかける役割などを担っています。

たとえば、アムネスティが自由権規約委員会へ、日本の取り組みに関するシャドーレポートを提出することは、日本政府が人権を守る責任を果たせていない箇所を自由権規約委員会に知らせ、委員会はその情報をもとに日本政府に勧告という流れで圧力をかける結果に結びついています。

事前質問で日本に求められた14の項目

自由権規約委員会が事前質問票で日本に求めた情報は、大きく分けて以下の14項目になります。

  • 人権の促進と保護のための憲法及び法的枠組み
  • 国民的、人種的、宗教的憎悪の唱道の禁止
  • 男女の平等
  • 緊急事態及びテロ対策の措置
  • 性的暴力及びドメスティック・バイオレンスを含む女性に対する暴力
  • 児童、生命に対する及び公正な裁判の権利、拷問又は残虐・非人道的・品位を傷つける取り扱い、もしくは刑罰の禁止
  • 身体の自由と安全に対する権利、自由を奪われた者の取り扱い
  • 奴隷、強制労働、人身取引の廃止
  • 難民及び庇護申請者を含む外国人の取り扱い
  • プライバシーの権利
  • 思想、良心、宗教的信念及び表現の自由
  • 平和的な集会
  • 公的な生活に参加する権利
  • マイノリティの人権

アムネスティがシャドーレポートで取り上げた日本の人権問題

これらの項目をもとに、アムネスティは現在最も危惧、懸念している日本の8つの人権問題についてシャドーレポートで言及しています。このセクションでは、アムネスティが報告する日本の人権侵害の現状と勧告の内容を項目ごとに紹介します。

人権に関する憲法及び法的枠組みがないこと

これまでに国連人権理事会や自由権規約委員会からの勧告があったにも関わらず、日本にはまだ国内人権機関(NHRI)を設置するための活動が見られていません。国内人権機関とは、裁判所とは別に人権を推進する目的を持つ国家機関です。

裁判所に訴え、損害賠償などを得るには時間がかかりますが、人権救済は迅速・簡易・そして効果的な対応がカギです。たとえば、国籍・障害・宗教などを理由に賃貸契約や雇用契約から排除された場合、厳格な手続きや弁護士への依頼が不可欠な裁判所への訴訟活動は、被害者にとってハードルが高いプロセスです。このような人権侵害を受けた人々を救うためには、NHRIが必要となってきます。

また、日本は自由権規約第1選択議定書を批准していません。この選択議定書は、日本国民が人権侵害を自由権規約委員会に報告する権利を規定する内容のものです。この議定書を日本が認めていないことにより、人権侵害を公式に訴えられない状態にあることが問題となっています。

アムネスティが人権に関する憲法・法的な枠組みについて日本へ勧告している主な内容
  • アムネスティはNHRIの設置
  • 自由権規約第1選択議定書の批准を勧告しています。

死刑制度

日本は自由権規約の第2選択議定書、別名死刑廃止議定書を承認しておらず、死刑制度廃止への動きを見せていません。第6回報告書を提出した2014年から2020年までに31名の死刑を執行され、2020年7月時点で110人もの死刑確定者が存在していました。

日本の死刑制度の現状には、国際条約と相入れない複数の問題点が見られます。

1つは透明性の欠如です。一般的に死刑執行の決定は、死刑確定者に対して数時間前の通知、家族などには執行後の報告のみとなっています。また、一般社会への報道も事後報告となっています。

2つ目の問題は上訴中の死刑執行です。恩赦や減刑を申し立てしている最中に刑を執行することは国連決議で禁止されていますが、2018年に死刑が執行されたオウム真理教13人中10人が上訴中でした。

最後の問題は精神疾患の方への執行です。国際基準では、精神・知的障がい者の死刑適用が除外されていますが、日本では死刑確定者の精神状態を把握することなく、刑を執行しています。

アムネスティが死刑制度について日本へ勧告している主な内容
  • 現状存在する死刑判決を拘禁刑にすること
  • 自由権規約第2選択議定書を批准すること
  • 死刑確定者の精神状態を調査すること
  • その他国際基準にあった措置を導入すること

性的指向または性自認に基づく差別

現在、日本には包括的な差別禁止法が存在しません。よって、性別・ジェンダー・性自認に基づく差別を法的に罰せられない状態にあります。2018年には衆議院議員が月刊誌上で「LGBTは『生産性』がない」など差別的な発言をしたことや、LGBTIコミュニティーの人権を守るための措置を政府が十分に実施できていないことが目立ちます。さらに、日本は国として同性婚を認めていません。これは自由権規約第23条に反することです。

また、生まれた時に判断された性と性自認(ジェンダー・アイデンティティ)が異なるトランスジェンダーの人たちは、法的手続きで性を変えることができるものの、その条件として一定の判断基準が設けられています。この判断基準は、たとえば性転換手術を受けていること、不妊手術を受けていること、など差別的な内容です。

アムネスティが性的指向・性自認に基づく差別について日本へ勧告している主な内容
  • 包括的な差別禁止法を国家レベルで取り入れること
  • 同性婚を認めること
  • 法的に性を変える条件に不妊・性転換手術の強制を排除すること

少数民族への差別

少数民族への差別も禁止法がないため、さまざまな形で差別が生まれてしまっています。なかでもヘイトスピーチは、政府が取り締まれていない重大な問題の一つです。

2016年にヘイトスピーチ対策法が成立したものの、罰則規定がないため大きな変化をもたらしたとは言えません。現に、2016年と2020年の東京都知事選では、元在特会会長の候補者が反外国人の政策を掲げていたのに対し、政府は反応を見せませんでした。

さらに、朝鮮学校がコロナの政府支援から排除され、一部の幼稚園や大学の生徒は在日韓国人であることを理由にマスクが配布されなかったり、授業料免除の対象外になったりしました。

アムネスティが少数民族への差別について日本へ勧告している主な内容
  • ヘイトスピーチ対策法を改正し罰則を導入すること
  • 朝鮮学校への政策的差別をなくすこと
  • 差別を禁止する法律を制定すること

難民・庇護希望者・移民への制度

入管施設に収容された庇護希望者や非正規移住者が、不適切な扱いを受けていることが問題視されています。国際基準に反した無期限の収容や強制送還の恐怖、不適切な医療設備などにより精神・身体ともに健康に悪影響を及ぼしています。

2015年から2019年の期間に7名の自殺者、2019年9月時点で198名のハンガーストライキ参加者がおり、そのなかの収容者1名が2019年6月に死亡しました。

自由権規約委員会は、原則として書類手続きや身元確認が行われている短期間のみの収容を認めていますが、日本では2019年6月時点で収容されている1,253名のうち251名が2年以上収容されていました。

加えて、研修及び労働目的で日本に在住することを認める技能実習制度の実習生たちへの人権侵害も多く発見されています。厚生労働省が2018年公表した報告書で、調査対象の技能実習生を雇う7,334企業のうち5,160社が労働基準法を侵していることを明らかにしました。

アムネスティが難民・庇護希望者・移民への制度について日本へ勧告している主な内容
  • 公正な収容の基準と期間を明らかにすること
  • 技能実習生を含む労働者への扱いの実態調査と、責任を問える仕組みの構築

ムスリムの監視及び情報収集活動

2010年にはすでに日本政府が、ムスリムを対象とした広範な監視及び情報収集活動を行っていることが明らかになっていました。その内容は、「テロリスト」の疑いがあると認識された人物の名前、人間関係、崇拝場所などの個人情報の収集です。これを受け、17名が警視庁を訴えましたが、最高裁はこのような監視及び情報収集活動を認める判決を出しました。

さらに、2017年6月に日本はテロ等準備罪法の成立によって、テロ等の犯罪を犯す可能性があるとみなされた個人や団体を監視する行為を許可しました。この法案で可能になった監視活動は人々の表現と結社の自由を奪うと懸念されています。また、法案の「組織的犯罪」の定義が曖昧なことから、NGOの活動も監視下に入る可能性があることも危惧されています。

アムネスティがムスリムの監視及び情報収集活動について日本へ勧告している主な内容
  • 差別的で非合法な広範監視及び情報収集をやめること
  • テロ等準備罪法での「組織的犯罪」の定義を明確化すること

第二次世界大戦前・大戦中の日本軍性奴隷制

日本政府は軍政奴隷制度の生存者への十分な補償を否定し続けています。1932年から第二次世界大戦の終結まで、日本帝国軍はおよそ20万人もの女性と女児を強制的に性奴隷としました。

政府は1951年のサンフランシスコ平和条約で、すでに問題は解決されていると表明しています。しかし、この条約が締結された当時、日本政府は日本軍性奴隷制度が存在したことを認めていなかったため、条約文ではこの問題について言及していません。

この条約により、日本は被害者への賠償・救済措置の義務から免除されたわけではなく、条約締結後にさらなる賠償支払い等をする可能性が永久に除外されたわけでもありません。つまり、日本はまだ被害者に対する補償義務を果たせていないと認識できます。

加えて、政府レベルで決められた慰安婦問題日韓合意は、生存者の正義・真実・賠償への権利を奪っているとアムネスティは判断しています。意義のある救済措置は、生存者やその家族が納得できるようなものでなければありません。記念碑を建てるなどの象徴的措置から政府による経済的補償まで形はさまざまですが、責任を部分的に否定し続ける日本政府は、現状十分な措置をとれていないと指摘されています。

アムネスティが第二次世界大戦前・大戦中の日本軍性奴隷制について日本へ勧告している主な内容
  • この問題を意義のある形で解決するために、生存者やその家族への賠償と金銭的以外で生存者が求める補償を認めること
  • 過ちを繰り返さないよう軍性奴隷制の正確な教育を日本で行うこと

表現及び集会の自由の抑制

沖縄の米軍基地移設問題は、長い間沖縄県民の反発を生んできました。2016年8月20日、平和的なデモの最中、現場へ取材に訪れた沖縄の新聞記者2名が機動隊に拘束されました。これは報道、及び集会の自由を制限しようとしたと多くの批判を集めましたが、警察はこの2名が記者だったことを認識していなかったとしています。

さらに、2019年8月に名古屋で開かれた展示会が政治的タブーを展示しているとし、自民党議員から「政治的プロパガンダだ」と批判の声が上がり、名古屋市長からの要請があった後、閉鎖されました。このような出来事は表現の自由の抑制だと判断できます。

アムネスティが表現及び集会の自由の抑制について日本へ勧告している主な内容
  • 警察や機動隊が法的・状況的根拠なく集会にいる人物を取り押さえないこと
  • 集会での平和と秩序を妨害するのではなく守ること
  • 表現の自由を守ること

まとめ

目標10

「人や国の不平等をなくそう」というSDGsの目標10は、年齢・性別・障がい・人種・民族・出自・宗教・経済的地位などを問わず、「誰一人取り残されない」世界を実現することを目標にしています。そのためには、差別的な法律・政策・慣行をなくすことが不可欠です。

最終的に法や政治を動かすのは国の政治家ですが、日本政府が表しているように、政治家は必ずしも人権を尊重し守るために働いてくれるわけではありません。今回紹介したアムネスティ・インターナショナルのシャドーレポートのようなNGOの働きかけや、わたしたち一人ひとりの行動や意識が国を動かす力になります。

法的ではありませんが、2015年に成立した同性婚を「パートナーシップ」として認める渋谷区の「パートナーシップ証明書」など、地域単位で見られる進展はあります。しかし、国家レベルの動きは、自由権規約委員会が事前質問票やシャドーレポートの内容を読むに、依然として十分ではないと言えます。

日本の第7回報告書に対する自由権規約委員会の「最終見解」が近いうちに発表されます。そこで出される勧告をもとに、日本がこれからどう人権を守る責任者として役割を果たしていくのか、わたしたち個人個人も互いの人権を守る責任者として何ができるのか、ぜひこの機会に考えてみましょう。

 

参考サイト:

 

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