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日本発のSDGs貢献技術「ファインバブル」とは?

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私たちの生活において「泡」は非常に身近な存在です。例えば、炭酸飲料をコップに注いだ時にも泡が発生しますし、熱帯魚や金魚などの水槽でブクブク泡が出ているところを見たことがある人も多いでしょう。

これらの泡のほとんどは、その直径がミリメートル、センチメートルといった大きさです。

一方で、今回紹介する「ファインバブル」は、さらに小さい泡のことを指します。近年、この小さな泡が様々な力を秘めていることが分かってきました。しかも、SDGs 達成に有効な技術として各方面で期待されています。

ここでは、小さな泡「ファインバブル」がSDGsにどのような関わりがあるのか解説していきます。

※この記事は、寄稿記事です。

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ファインバブルとは

まず、ファインバブルには、様々な製品やサービスの国際的な基準を定めるISO(国際標準化機構)によって決められた明確な定義があります。

ファインバブルとは、泡の大きさにより「マイクロバブル」と「ウルトラファインバブル」の2種類があり、それぞれ以下のように定義されています(図1)。*1

  • マイクロバブル(Micro-Bubble:MB):直径100μm未満で1μm(=0.001mm)以上の泡
  • ウルトラファインバブル(Ultrafine-Bubble:UFB):直径1μm未満の泡

特に、ウルトラファインバブルはナノサイズの泡であるため、昔はナノバブルやナノマイクロバブルと呼ばれていましたが、今やそれらは正式名称ではありません。

ここで、ファインバブルの歴史をみてみましょう。ファインバブルという単語が国際的に定義されたのは2013年と比較的最近のことです。

もともと、泡のサイズや名称について明確な定義はありませんでした。しかし、2000年頃に広島でのカキ養殖に微細な泡が使われたことにより注目が集まり、「細かい気泡」のことを「マイクロバブル」と呼ぶことが定着しました。

さらに2007年頃にナノサイズの泡、今でいうウルトラファインバブルが医療や農業分野で活用されるようになりました。これらの小さな泡の活用事例が増えるとともに名称や定義を決めるニーズが生まれ、国内外の健全な製品や技術を育成するため、日本が主導して国際標準化に至ったのです。*2

2000年代以降、ウルトラファインバブルの洗浄・殺菌効果を世界で初めて証明し、また世界で初めてウルトラファインバブルの存在を証明するなど、日本はファインバブル技術の先進国として世界をリードしています。*3

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ファインバブルの特徴

このファインバブルですが、直径が小さいことによりセンチメートルやミリメートルサイズの泡とは違った特徴を持っています。

マイクロバブル

マイクロバブルは非常に小さな泡ですが、肉眼でその存在を確認することができます。しかし、非常に小さい泡であるため、一見水が白く濁ったように見えます(図2)。

また、泡が微細であり浮力が小さいため非常にゆっくりと上昇し、水中で溶解が進むと収縮して消滅します。*1

ウルトラファインバブル

ウルトラファインバブルはマイクロバブルよりさらに小さく、肉眼で確認することはできません。そのため、ウルトラファインバブルが含まれる水は、透明に見えます。

簡易的にウルトラファインバブルを確認する方法として、レーザーを照射する方法があります。*4

ウルトラファインバブルを含む水にレーザーを照射するとバブルにレーザーが散乱し、光の筋を確認することができます(図3)。

ただし、水中のゴミにもレーザー光が散乱するので、必ずしも光の筋=ウルトラファインバブルとは言えないので注意が必要です。

また、ウルトラファインバブルの浮力は非常に小さいため、浮上せず水中にとどまります。ミリサイズ、センチサイズの泡はすぐに浮上して水面ではじけてしまうのに対し、ウルトラファインバブルは保存状態が良ければ、水中で数週間~数カ月の寿命があると報告されています。*1

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なぜファインバブルがSDGs 達成に貢献できるのか?

たかが泡がなぜSDGs 達成に貢献できるのでしょうか?その理由はいくつかあります。

まず、ファインバブルは基本的に「水」と「空気」というシンプルな成分から構成され環境にやさしいこと、さらに、シンプルな成分でありながら、農業や水産や洗浄など幅広い分野に応用できることが理由として挙げられます。*5

これらのファインバブル特有の性質や、その応用技術が具体的にSDGsのどの目標達成に寄与するのかという点は、既に2021年にガイドラインとしてまとめられ国際標準化されています。*5

ファインバブル技術がSDGs達成に貢献できる技術であることは、国際的にも認められているのです。

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SDGs達成におけるファインバブルの貢献分野

ファインバブルは基本的に水と空気から作られるので、SDGsの目標の中でも目標6「安全な水とトイレを世界中に」と相性が良い技術です。

それだけでなく、その他の目標達成にも貢献しています。ここでは、ファインバブルが活用されているいくつかの事例と関係するSDGsの目標を紹介します。

農業・水産分野

世界の人口が年々増加する中、将来的に食料不足が起きることが危惧されています。既に世界では飢餓で苦しんでいる人もおり、効率的かつ安定的に食品を生産することは重要な課題です。ファインバブルはこの食糧問題を解決する技術になり得るかもしれません。

例えば、ウルトラファインバブルを含む水に大麦の種を浸漬させると、バブルを含まない蒸留水に比べ発芽率が向上したという報告があります(図4)。

他にも、トマト栽培や、イチゴの高設栽培においてウルトラファインバブルを含む水を供給したところ収穫量が増えたという報告もあります。*6, *7

水産分野においても、魚の養殖にウルトラファインバブルを利用した場合、成長速度が速くなったという報告もあり、食品の安定供給に貢献する技術として期待されています。*8

工業分野

現代は日本のみならず、世界各国で様々な製品が生産されています。そしてその製品を生み出す工程には、エネルギーや水、原材料などが必要です。

しかし、エネルギーを作り出すにも地球温暖化ガスであるCO2の発生が伴いますし、もちろん水や原材料を加工・精製する工程でもCO2が発生します。つまり、生産という行為には大なり小なり環境負荷が伴うのです。

工業分野において省エネや効率アップを図ることは、環境負荷を低減することに繋がりますが、ファインバブルは工業分野の省エネ・効率アップにも貢献しています。

材料を削ったり、穴を開けたりして目的の形状を削り出すことを「切削」と言い、ものづくりには欠かせない加工方法です。切削には「クーラント」という液体が使われ、この液体には材料と材料を削る砥石の潤滑性を高める、削り屑を排除する、発熱を抑えるなどの役割があります。*9

クーラント液にウルトラファインバブルを含ませると、切削のスピードや精度が向上し、砥石の寿命が延びたという報告があります(図5)。

ウルトラファインバブルだけでなくマイクロバブルも活用されています。

機械の部品はその製作工程で油が付着することがありますが、最終的には除去しなくてはいけません。そこでマイクロバブルを使って部品の洗浄を行ったところ、なんと油の除去率が90%も向上し(図5)、洗剤を使った洗浄と同等の効果が得られました。*10

加工工程で使う部品の寿命が延びることや加工工程の効率があがること、洗剤を使わずにモノをきれいにできることは、環境負荷低減に繋がります。さらに、企業としてもコストダウンにつながるため、製造分野でファインバブル技術を使うケースが今後増加するかもしれません。

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医療分野

医療で用いられる製品やサービスは、高い精度が求められます。この医療分野においても、ファインバブルが活躍しています。

医療で使われる医療器具は直接人体に触れるため、清潔でなければいけません。そのため、医療器具は加熱や加圧した状態で、時間をかけて滅菌する必要があります。*11

この滅菌の工程にファインバブルを使うと、滅菌時間を短縮することができます(図6)。

この他にも、バブルを直接体内で利用する技術もあります。

マイクロバブルは赤血球よりも大きさが小さく、細かい血管に入り込むことができるため、これまで見えなかった血流を可視化することができます。これまで見えなかったものが見えるようになれば、さらなる病気の早期発見・診断につながるでしょう。*12

さらに、マイクロバブルを使い、狙った場所に薬物を届けるドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究も進められています。

例えば、がん治療には抗がん剤という薬が使われますが、抗がん剤はがん細胞だけではなく正常な細胞も攻撃してしまうため、重い副作用を引き起こしてしまいます。マイクロバブルを使ったDDS技術が実用化されれば、狙ったがん細胞だけ攻撃することができるため副作用を最小限にすることができるのです(図7)。*12

このように、ファインバブルは人々の健康維持にも貢献しているのです。

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日本発の技術でSDGs達成を後押し

私たち人間は紀元前から「泡」という存在に興味を示し、世界各国で研究が行われていましたが、ファインバブルという小さな泡の技術においては、今や日本は先進国です。*3

今回紹介したトピック以外にもファインバブルは多くの分野で使われており、土木・建設分野、エネルギー分野、インフラ分野など、その範囲は多岐に渡ります。*13

近年ではファインバブルを発生させるシャワーヘッドが登場し、家庭でも利用できるようになり身近に感じている人も多いでしょう。

ご紹介したように、ファインバブルは数多くの効果が実証されていますが、どんな問題でも解決できる「夢の技術」ではありません。

再生可能エネルギーや海水の淡水化技術などSDGs達成に貢献できる技術は数多くありますが、どの技術も全てを解決するものでなく、あくまで「手助け」をするものです。

SDGsを達成するためには、私たち自身がよく考え、ファインバブルのような革新的技術を上手く活用していく必要があります。


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