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ESGとは

ESGとは|環境・社会・企業統治の意味・メリットと導入の6つステップを解説

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SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))を学びはじめると、「ESG」という言葉を目にするようになります。ESGはなんとなくしか理解できていない方も多くいるのではないでしょうか。

この記事では、SDGs研修やコンサルティングサービスを提供する株式会社Dropが、ESGの意味やESG経営に取り組むメリット、ESG経営を導入するためのステップを解説します。

SDGsをより深く学ぶためにESGを正しく理解したい方、ESGがなぜ注目されているのかを知りたい方、勤めている企業でESG経営に取り組みたい方は、この記事をお役立てください。

今回の記事はこんな人にオススメです
  • ESGの意味を知りたい
  • ESG経営に取り組むメリットを知りたい
  • ESG経営を導入する具体的な手順が知りたい

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ESGとは

ESG(読み方:イーエスジー)とは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の頭文字をとった略語です。企業が環境・社会・企業統治に配慮する考え方であり、社会に負う責任でもあります。

ESGは、企業が長期的に成長するためには欠かせない考え方として世界に広がっており、裏を返せばESGが示す環境・社会・ガバナンスの3つの観点への取り組みや配慮が不十分な企業は長期的に成長が見込めない企業だということを意味します。

なお、ESGSDGsと同じアルファベット3文字のCSRCorporate Social Responsibilityの略/企業の社会的責任)やサステナビリティSustainability/持続可能)などの用語もSDGsを学んでいるとよく目にします。

各用語の違いやそれらの関係性を簡単に理解するには、持続可能な状態、つまりサステナビリティを実現するための手立てがSDGs・ESG・CSRだとお考えください。

各用語の違いや関係性を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

GPIFPRIに署名し、日本にもESG投資の波が到来

従来の財務情報だけでなくESGの要素を考慮した投資のことを「ESG投資」と呼びます。欧米ではESG投資の市場規模が拡大するなか、日本でのESG投資は推進に積極的ではありませんでした。

しかし、2015年に日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、PRI(国連責任投資原則)に署名したことをきっかけに日本でもESG投資が注目され始めました。

PRIとは、ESGの観点を組み込んだ投資の原則を意味します。世界最大の投資運用機関であるGPIFがPRIに署名したことは日本国内に投資の価値観が変わっていくのだというインパクトを与えました。

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ESG経営とは

「ESG経営」とは、企業がESGに考慮して経営を行うことです。先述のとおり2015年にGPIFPRIに署名したのをきっかけに、投資家もESGを重視して投資先を選ぶようになりましたその変化を受けて、投資される側の企業も以下のESGに関連する課題を考慮して経営するように変わってきました。

ESG課題の一例表:
環境(E)気候変動・資源枯渇・廃棄・汚染・森林破壊 など
社会(S)人権・強制労働・児童労働・労働条件・雇用関係 など
ガバナンス(G)贈収賄・汚職・役員報酬・役員構成・多様性・ロビー活動・政治献金・税務戦略 など

ESG情報開示実践ハンドブック|東京証券取引所を基にSDGs mediaが作成

なお、 QUICKリサーチ本部ESG研究所が2022年1月に公表した「ESG投資実態調査2021」によると、2021年度に重視しているエンゲージメントのなかで最も多かったのが「気候変動」で有効な回答者数の92%でした。

次に「人権」と「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の尊重)」が59%で同率2位、続いて「環境サプライチェーン」と「生物多様性」がともに同率3位で36%でした。

この調査結果からは、ESGのE(環境)とS(社会)が特に重視されている現状があるとわかります。

 2021年度:ESGに優れた優良企業ランキングの紹介

2021年10月の東洋経済ONLINEに、「ESGに優れた企業ランキング」が公表されました。トップは4年連続でSOMPOホールディングス。率先して環境負荷に取り組む姿勢や社内のダイバーシティや働きやすさの推進、グローバルな社会課題活動が評価されました。

自社ESGに取り組む際は、ランキング上位企業の取り組みを各社のレポートから学び、自社でも活かせる点を考えてみましょう。 

1位 SOMPOホールディングス
2位 オムロン
3位 J. フロントリテイリング
4位 富士フィルムホールディングス
5位 KDDI
6位 東京海上ホールディング

7位 丸井グループ
8位 TOTO
9位 トヨタ自動車

10位 日本電信電話

引用元:最新「ESGに優れた企業ランキング」トップ200社|東洋経済ONLINE

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ESG経営に取り組む3つのメリット

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ここからは企業がESG経営に取り組むメリットを3つ紹介します。

メリット1:投資家からの評価を得やすい(資金調達がしやすくなる)

SDGsの達成には、企業の主体的な取り組みが必要不可欠です。企業はSDGsに向けた取り組みをするにも、事業を運営する資金が必要です。

そのためESGに取り組むことで、投資家からESG投資を募ることができます。さらに資金が集まれば、社会問題解決に向けた新規事業にも手を伸ばすことができ、企業としてさらに成長する機会につながります。

メリット2:企業価値が高まる

ESGの取り組みが消費者から好意的に捉えられれば企業のブランド価値が向上し、熱狂的なファンの獲得につながります。

たとえばアウトドア用品を手掛けるパタゴニアは、競合メーカーに比べて製品の価格が高いです。しかし、環境に配慮する商品として消費者に浸透しており、消費者は価格に左右されず、パタゴニア商品を選択します。

 メリット3:優秀な人材が確保できる

就活生が就職先に求めることは、年々変化しています。昔は「高収入」や「自己成長」が求められてきました。しかし、最近の調査では「安定」や「プライベートの充実」など働きやすさが求められる傾向があります。

育児休暇や時短勤務など働きやすい労働環境、つまりSocialの面が充実している企業には優秀な人材が集まりやすくなっていると考えられます。人手不足が深刻化している時代だからこそ、人手が必要な会社はESGに取り組むことが選択肢の1つになります。

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ESG経営を導入する6つのステップ

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ここまで企業がESG経営に取り組むメリットを3つご紹介しましたが、実際に自社にESG経営を導入するには何から始めればいいか迷われる方も多いかもしれません。

東京証券取引所の「ESG情報開示実践ハンドブック(以下、ハンドブック)」では、ESG経営を導入して情報開示するまでの手順として以下4つのステップが示されています。

STEP1 ESG課題とESG投資
STEP2 企業の戦略とESG課題の関係
STEP3 監督と執行
STEP4 情報開示とエンゲージメント

ハンドブックのSTEP1では、「ESGとは何か」「ESG課題とはどういうものか」を理解することを目指します

ここからは、SDGs media を運営しながらSDGs研修やコンサルティングサービスを提供している弊社株式会社DropハンドブックのSTEP1以降のステップの内容をさらに分解し、わかりやすくまとめた6つの手順を解説していきます。 

  1. 社内でESGに関するマテリアリティを特定する
  2. 経営者・取締役会と実務担当の役割を明確にする
  3. 各指標の現在値と目標値を決める
  4. 目標値に対する取り組みを決める・ロードマップを描く
  5. PDCAの実施、取り組んだ結果を測定する
  6. ESGレポートなどを作成して定期的に公表する

1. 社内でESGに関するマテリアリティ(重要課題)を特定する

ESG課題は、先程の「ESG課題の一例表」で紹介したように、内容が多岐にわたります。そのため、すべてに取り組むのではなく、自社の理念やビジョン、経営資源と戦略などに関係するマテリアリティを特定しましょう。マテリアリティ特定から取り組みまでの流れに決まったものはありませんが、以下で一例を示します。

まずは幅広くマテリアリティになり得る候補をリストアップしましょう。その際に活用できる情報はおもに5点あります。

  • 自社を取り巻く外部環境や事業環境の分析レポート(発行物)
  • 国際機関が公表している枠組み(GRIスタンダード・SASBスタンダードなど)
  • ESG評価機関のレポート
  • ステークホルダーの自社に対する関心や期待
  • 業種に共通する課題リスト

これらの情報は無料で公開されているものや購入が必要なもの、情報取得に一定の時間が必要(例:ステークホルダーへのアンケートや対話の機会を設ける)なものもあります。社内でゼロから議論しても思い付くことができないマテリアリティを見つける情報源として、これらを活用しましょう。

幅広く集めたマテリアリティから自社のマテリアリティを特定するために、評価軸を用いて重要度を決めましょう。評価軸に決まったものはありませんが、ガイドラインでは「自社にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の2軸が紹介されています。この2軸と課題が自社とステークホルダーに影響を与えるまでの時間軸を考慮して、自社にとって特に重要なマテリアリティを特定しましょう。 

特定したマテリアリティに取り組むことがESG経営につながっていきます。そのため、マテリアリティに対応していく方針や計画が必要です。これらの方針や計画が中期経営計画やトップメッセージに組み込まれていくことで、取り組みが社内外で認められ進んでいきやすくなります。

2. 経営者・取締役会と実務担当の役割を明確にする

前の手順で定めた自社のマテリアリティに取り組み、企業価値の向上を目指すには、取締役会と実務担当がそれぞれの役割を全うし続けることが必要です。

経営者の主な役割は、ESG課題の取り組みに関与することです。経営者に対して取り組みへの責任を与えた上で必要な情報を提供・開示しましょう。これらのプロセスの開示は、ESGへの取り組みをアピールすることに繋がります。

取締役会の主な役割は、ESG課題への取り組みを監督することです。実務担当から取り組み状況が取締役会へ報告される仕組みを設けて、進捗状況を定期的にモニタリングしましょう。また、取締役会で経営に関する議論がなされる際に、ESG課題が考慮されているかどうかを監視する役割も担います。

実務担当の役割は、ESG課題の取り組みを実際に進めていくことです。企業によって新たに担当部署が設けられるケースや、部署を横断してプロジェクトチーム・委員会として活動するケースがあります。

実務担当の実務の具体例として以下の5点がハンドブックに紹介されています。

  • 事業環境の変化に関する情報収集と整理
  • 組織内の調整
  • 取締役会や役員会への報告
  • 外部とのエンゲージメント
  • 社内への浸透

3. 各指標の現在値と目標値を決める

企業がマテリアリティに取り組む際に自社が目指す将来を明確にした上で課題に応じた指標を設定しましょう

指標は定性的なもの、定量的なもののどちらもなり得ますが、自社のオリジナルなもの、既存の枠組みを参考にしたものなど自社に適した指標を設定することが期待されます。設定した指標に応じて目標値を決めて公表することも考えられます。具体的な目標値の設定方法として、ハンドブックでは以下の2点が紹介されています。

・実現可能性の観点から、過去の実績を積み上げて将来の予測値を算出し、目標値とする。
・環境や社会的課題に関する国内外の目標値などを参考にして、自社の目標値を定める。

なお、2つ目は「バックキャスティング」と呼ばれる方法で、気候変動に関する事柄に推奨されています。

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4. 目標値に対する取り組みを決める・ロードマップを描く

設定した目標値を達成するための具体的な取り組みを決めて、バックキャスティングでロードマップを描きましょう。自社の掲げる長期的なビジョンを達成するために、短期・中期で何を、どこまで目指すかという視点が必要です。

5. PDCAの実施、取り組んだ結果を測定する

自社で決定した取り組みを着実に進めていくために、PDCAサイクルを回していきましょう指標や目標値の達成度合いを振り返り、課題がある場合は取り組みや課題を見直し、指標や目標値の再設定を行います。

社内での取り組みが予定どおりに進まない場合、マテリアリティの項目・内容・重要性の評価方法の再検討がこのタイミングで行われる場合もあります。

6. ESGレポートなどを作成して定期的に公表する

企業がESG情報開示する場合は、投資家に企業価値を適切に評価してもらえるように工夫しましょう。たとえば、自社にとってマテリアリティだと特定したESG課題に関するリスクと機会戦略指標など企業価値に良い影響を与えることをわかりやすく示さなければなりません。

ハンドブックでは、投資家向けに具体的に開示する情報を以下のように紹介しているので、参考にしてみてください。

  • 企業の戦略とESGの関係
  • マテリアルなESG課題とその特定プロセス
  • トップのコミットメントとガバナンスの体制
  • 指標と目標値

なお、情報を開示する場合には、自社の情報を届けたい対象を必ず検討しましょう。対象が投資家なのか、そのほかステークホルダーも含めるのか議論し  サステナビリティレポートやCSR報告書、環境報告書などの作成が必要かどうかも社内で検討しましょう。

また、海外の投資家を対象にした英語での情報開示、自社に海外投資家の株主がどれだけいるか比率をもとに考えましょう。

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ESGレポートの参考にもなる『SDGsレポートのはじめ方』

ESGレポートとSDGsレポートは、同じようにステークホルダーを対象にして制作されるレポートです。まったく同じ内容にはなりませんが、それぞれのレポートから学ぶ点はあります。

SDGs media では、企業向けに無料で提供している『SDGsの社外開示がわかる資料2「SDGsレポートって何?」』という資料を用意しています。ESGレポートやSDGsレポートの制作をされる際は、ぜひご活用ください。

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ESGに関わる日本と世界の動き

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2015年以来、日本でもESGを重視した投資が普及し始めましたが、ここからは2015年以降に起こったESGに関わる日本と世界の動きをご紹介します。

日本:地方銀行による優遇利子の取り組み

東邦銀行が、20187「ESG/SDGs貢献型融資」を創設し取扱いを開始したと発表しました。これは、SDGsの達成に取り組む企業に金銭面でサポートするための商品で、融資金は事業に必要な運転資金や設備資金として使うことができます。

東邦銀行以外でもESGやSDGsに関する融資商品の取り扱いが広がっているので、融資の利率や金額など詳細は各Webサイトで情報を得るようにしましょう。

世界:投資額・投資割合の高まり

日本では、ESGSDGsに積極的に行動する企業に優遇した取り組みが地方銀行で広がっていると紹介しましたが、世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIA が発行した統計報告書GSIR2020年版統計によると、2018年から2020年の2年間で世界のESG投資額は15.1%増加したことがわかりました。
※国際団体GSIAの正式名称はGlobal Sustainable Investment Alliance
※統合報告書GSIRの正式名称はGlobal Sustainable Investment Review

特にアメリカの投資額が急成長しており、2018年から2020年を比べると42.4%増加しており、2020年の投資額は17810億米ドルでした。

一方で、欧州とオーストラリアは定義が大幅に見直された結果、過去との比較が難しくなっています。2018年から2020年を比べると欧州は48.8%から41.6%、オーストラリア・ニュージーランドは63.2%から37.9%に下がり、統計上これら2つの地域の投資額のみ減少しています。

まとめ

この記事を読んで自社でESG経営にどう取り組めば良いのか、以前よりイメージできるようになったでしょうか?

「自社でSDGsに取り組みたい、でもなにをすればいいのか分からない。」そんな方はまずESG視点で何ができるか考えてみましょう

短期的な視点では、ESGの取り組みはコストがかかるもののように思えるかもしれませんが、長期的に考えると企業がESGに取り組む価値があることを理解頂けたらうれしいです。

弊社株式会社Dropが運営するYouTubeでもESGに取り組むメリット、ESG投資について紹介しているので、さらに学びたい方はぜひご覧ください。

自分が勤める企業がESGに取り組んでいないと企業の先行きが心配になることもありますよね。

この記事を読んで、自社では具体的に何をすればいいのか迷われた方は、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。

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また、そもそも企業がSDGsに取り組む理由を知りたい方は、以下のSDGsビジネスセミナーの受講がオススメです。きっとSDGsとビジネスの関係について理解を深められますよ。

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