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全ての人にフードセーフティネットを!フードバンクの役割とは

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現在日本では、数多くのファミリーレストランやファーストフード店が24時間営業しており、コンビニエンスストアも全国に5万店舗以上存在しています。好きな時に好きなものを食べられる環境が整い、むしろ食べすぎを気にする人も多くいるでしょう。

そのような日本社会において、SDGsに掲げられている「飢餓をゼロに」という目標は、遠い国の問題というイメージがあるかもしれません。

しかし、実は日本でも食料の調達がままならない人がいます。特に近年では、新型コロナウイルス感染症の流行やロシアによるウクライナ侵攻に起因する物価高騰で、満足に食事を取ることができない人が増えています。このような背景から、日本政府も食料支援の取り組みを強化する方針を示しています。

その中で注目されている取り組みが「フードバンク」です。今回は、近年重要性を増すフードバンクの役割や、国内外の取り組み事例を紹介します。

※この記事は、寄稿記事です。

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フードバンクとは

「フードバンク」を直訳すれば「食品の銀行」です。その名前から「食品を貯めておく施設」をイメージされるかもしれませんが、農林水産省によると、フードバンクは以下のように定義されています。*1

「食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設等へ無料で提供する団体・活動」
引用元:フードバンク|農林水産省

このフードバンクの活動は1967年にアメリカで開始されたと言われており、現在はカナダやイギリスなど世界各国に運営団体が存在しています。*2

日本では、2000年に現セカンドハーベストジャパンが炊き出しのための連帯活動において、寄贈された食品を使ったことが始まりです。*3, *4

2022年現在、農林水産省が活動を把握しているフードバンクの団体は、全国で215に上り、企業や農家などから食品を寄贈してもらい、福祉施設やホームレス支援団体などへ無料配布しています(図1)。*1

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フードバンクの役割

フードバンクには食品ロスの削減、食料調達が困難な人への食料支援という役割があります(図2)。

元々日本におけるフードバンクの活動は、食品ロスの削減や環境負荷の縮小などの環境的目的を主としていました。しかし、近年では生活困窮者や児童福祉施設等に対する食料支援といった福祉的目的が重視されています。*4

特に2020年以降は、新型コロナウイルス感染症が流行したことで収入が減少した人も多く、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する物価高騰もあり、福祉的役割が大きくなっています。 *5, *6

このような社会的情勢から、政府としてもフードバンクの福祉的役割を重要視しており、2022年度第2次補正予算案に食品ロス削減及びフードバンク支援のため3億円の予算を盛り込みました。*7

さらに、子供食堂(無料または安価で栄養のある食事や団らんを提供する子供向けの食堂)や、地域食堂(子供食堂と同様のサービスを提供するが子供から一人暮らしの高齢者まで利用できる食堂)の登場により、フードバンクに新たな役割が生まれつつあります。 *8, *9

フードバンクがこれらの食堂活動を支援することで、孤立しがちな高齢者や低所得世帯に居場所を与える「包摂的な地域コミュニティ形成への寄与」にも貢献しているのです。*10

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国内外のフードバンク活動事例

日本の食品ロスは2017年の推計値で年間612万トン、日本人11人当たりの廃棄量に換算すると、毎日お茶碗1杯分のごはんと同等の量の食べ物を捨てていることになります。世界的にみると、年間13億トンもの食べられる食品が廃棄されているのです。*11

日本

この食品ロスの問題は、メディアで取り上げられる機会も増え、日本における認知度も年々向上しています。2019年度の消費者庁の調査では80%以上の人が食品ロス問題を「知っている」と答えており、76.5%の人が「取組を行っている」と回答しました。*12

食品ロスを減らす活動をする企業も多く、製パン大手の山崎製パンは製品の一部をフードバンクに寄贈しています。*13

フードバンクに食品を寄贈する企業は、上記のような食品会社というイメージがありますが、食品メーカー以外でもフードバンクに食品を寄贈する取り組みは行われています。埼玉りそな銀行では勤務する従業員の家庭で余った食材を福祉協議会に寄付する取り組みを行いました(図3)。*14

その他、イベントで発生する食品ロスを削減する取り組みも行われています。2025年に開催される予定の国際博覧会(大阪・関西万博)では、余った食材をフードバンクに渡す取り組みを計画中です。*15

企業が行うフードバンクの取り組みには、SGDs達成への貢献、企業自身のイメージアップと言ったメリットがあります。他にも、企業がフードバンクへ食料品を寄贈した場合、一定の条件を満たせば経費として全額損金算入が認められているため、税制上の優遇措置を受けることができるというメリットもあります。*16

韓国

韓国では1995年ごろからフードバンクについての議論が始まりました。*17

大きく分けて、政府系のフードバンクと政府の補助無しで運営されている民関系のフードバンクの2つが存在しており、政府系のフードバンクの存在はアジアでは珍しい事例です。*18

日本と同様、特定の拠点を構えて運営するフードバンクもありますが、バスで食事を配布する「配食バスサービス」もあります(図4)。

韓国では、政府がフードバンクの活動を支援することで、物資の流れの構築、政府による人件費の負担や土地建物の提供などが実現しました。その結果、フードバンクの継続的な運営が可能になったのです。*19

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アメリカ

アメリカは1967 年にアリゾナ州において世界で初めてフードバンク活動が開始された、フードバンク発祥国です。2018年時点で1,304のフードバンク団体が存在しており(図5)、同じく2018年の⾷品寄付量も推計で年間739万トンと世界最⼤を誇っています。*20

アメリカのフードバンクは、寄付金や食品を受け取り、地域の協会や施設、団体へ食べ物を提供しています。その中で、寄付が少ない生鮮食品(肉や乳製品など)はフードバンクが購入しており、栄養バランスまで考慮された活動が行われていることも特徴と言えるでしょう。*21

さらに、余剰農作物を政府が買い上げ、フードバンクに提供する、寄付した⾷品に起因する意図しない事故の免責制度がある、余剰⾷品の寄付を奨励する施策があるなど、フードバンクの活動を支援する体制が整っています。*20

フードバンク発祥国として、多くの知見・長い歴史があるアメリカだからこそ、政府としてフードバンクを支援する制度が整っているのかもしれません。

フランス

フランスのフードバンクはアメリカのフードバンクをモデルとして1984年にパリに設立されました。*22

フランスでは、表1に示すように寄付される食品の種類が提供者によって異なることが特徴です(図6)。

フードバンク 画像6

図6 提供者と寄付される食品の種類|諸外国のフードバンク活動の推進のための施策について|農林水産省(PDF)p.221を参考に筆者作成

2016年には「⾷品廃棄物削減に関する法律(ギャロット法)」を交付し、期限切れ等の理由による売れ残り⾷品の廃棄が禁⽌されました。この法律に違反すると罰金が課せられる、一定規模以上の事業社はフードバンク団体とのパートナーシップの提案が義務化されるなど、食品を破棄するよりも寄付する方がメリットを享受できる法体制になっています。*22

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フードセーフティネットとしてのフードバンク

日本国内のフードバンクは右肩上がりで増えており、特に2019年から2022年の3年間で団体数は2倍近くに増加しています(図7)。

フードバンク 画像7

図7 国内フードバンク団体数の推移|フードバンク:農林水産省フードバンク活動の現状と課題:消費者庁(PDF)p.3を参考に筆者作成

農林水産省や全国フードバンク推進協議会が把握していない小さな団体も含めると、その数はさらに多くなるでしょう。これらの数字は、支援の輪が確実に広がっていることを示しています。

しかし、2018年時点でのアメリカの寄付量は739万トン、イギリスは3.3万トン、2019年のフランスの寄付量は11.5万トンであるのに対し、日本の寄付量は2,850トンです。 諸外国に比べると圧倒的に寄付量が少ないことがわかります。*23

また、2022年度は3億円の予算が盛り込まれましたが、日本のフードバンクは慢性的な資金不足、人員不足といった問題も抱えています。*24

前述の通り、フードバンクは食品ロスの削減、食料支援、さらにコミュニティの形成といった重要な役割を担っています。フードセーフティネットとしての役割を継続して果たすためにも、公的な支援が強化されることが必要ではないでしょうか。

そして、私たち一人ひとりができることを考えることも大切です。余った食品や自分が好きではない食品もすぐに捨てるのではなく、近くに寄付できる団体がないか調べてみませんか。


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