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なぜエネルギー教育が必要なのか?|変わりゆく日本のエネルギー事情

なぜエネルギー教育が必要なのか?|変わりゆく日本のエネルギー事情の画像

毎日欠かさずチェックするスマートフォン、街を明るく照らす街灯、暑い夏を乗り切るためのエアコン…。電気は生活のなかに当たり前にあるものですが、近年は様相が変わってきています。

2022年3月に初めて発令された電力需給ひっ迫警報も記憶に新しいように、現代の日本では、エネルギーの安定供給が危ぶまれる事態に陥っています。さらに電力小売自由化、太陽光発電や電気自動車の推進などにより、生活の中でもエネルギーについて個人で選択すべきことが増えてきています。

揺るぎない存在であった社会インフラから、突然「私たちの問題」となったエネルギーに関して、系統的に学ぶ機会はこれまであまりなかったのではないでしょうか。持続可能な社会を創り、環境保護と生活利便性の両立を目指すために、エネルギー教育が必要とされる時代となっています。

※この記事は、寄稿記事です。

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電力不足に災害リスク|日本のエネルギー問題

エネルギー教育がなぜ必要なのかを把握するために、まずは、現在の日本が抱えているエネルギー問題と私たちの暮らしの関係についてみていきましょう。

2022年3月に発令された電力需給ひっ迫警報に引き続き、今後も夏や冬の電力需要のピーク時には電力が足りなくなる見込みです。なぜ、安定供給が確立されて久しい、現代の日本で電力が足りないのか、それはここ10年あまりで起こったエネルギー業界を取り巻く大きな変化と進行する気候変動に起因します。

2011年の東日本大震災による原発事故をきっかけとした全国の原子力発電所の停止、カーボンニュートラル実現のための再生可能エネルギーの導入拡大、2016年の電力小売自由化などによって、電気事業は構造的に大きく変化しました。

電源構成と電力供給の担い手が変わり、競争も激しくなる中で、電気事業者が採算を確保するために供給力が低下してしまうという事態に陥っています。供給力不足だけでなく、エネルギー資源の高騰による電気料金の値上げも生活を圧迫しています。

さらに、気候変動の影響により自然災害が各地で頻発しており、大規模・長期停電のリスクも高まっています。

もともと、日本は停電が非常に少ない国です。次の図1をみてもわかるとおり、自然災害が発生しない限り、欧米諸国と比較しても停電時間はとても低い水準となっています。

しかし、「自然災害が発生しない限り」という前提はすでに揺らいでいます。

たとえば、2021年の1年間を振り返っても、豪雨や台風、寒波、地震によって全国各地で大規模な停電が何度も発生しています。2022年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震の際にも、東京電力管内で一時的に210万戸超の大規模停電が引き起こされています。

従来の電力網では耐えきれない災害が発生することが増え、停電リスクは確実に高まっていると言えるでしょう。

つまり、現在日本では、需要ピーク時の電力不足と、いつ起こるかわからない災害による長期停電のリスクとの二つの危機にさらされているということになります。

したがって、自然災害を引き起こす地球温暖化を食い止めることも急務ではありますが、すでに進行している気候変動に対して、どのように適応していくかも考えなければなりません。

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エネルギー問題の一端を担う個人の選択

エネルギーの安定供給や気候変動対策のために、国や自治体、電力会社によってさまざまな取り組みが行われていますが、節電や災害への備えは個人が担うべき部分です。

近年では、電力小売自由化や家庭用太陽光発電の普及をはじめとして、エネルギーについて個人が選択するという場面が増えています。

電力小売自由化で広がった選択肢

2016年(平成28年)4月から電力の小売全面自由化、2017年(平成29年)4月からは都市ガスが完全自由化されました。消費者がライフスタイルに合わせて電力会社や料金プランが選べるようになり、省エネ診断やセット割引、見守り機能などのユニークなサービスも広まっています。

図2に示すように、一般家庭でも電力契約先のスイッチングが増加傾向にあり、完全自由化後は10%を超えています。

電力会社選びの指標となるのは、電気料金の安さだけではありません。

たとえば、太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーを購入したい、CO2削減に貢献したいという想いがあるのであれば、再生可能エネルギー中心の事業者を選ぶことができます。

選択をするときは、電気料金の高騰の可能性、災害時の停電リスク、エネルギーの地産地消による地域貢献など、さまざまな視点を持つことが必要です。

停電リスクに強い住宅や居住地選び

日本では、エネルギーリスク分散のために、再生可能エネルギーや蓄電池、電気自動車などの分散型電源を導入することが推進されています。

太陽光発電と蓄電池システム、EV充電設備などを組み合わせた、エネルギーの自給自足ができる住宅であるZEH(ゼッチ)も広まってきています。ZEHは電力消費量を見える化することで、効果的に節電することも可能で、環境にも家計にも優しい住宅です。自宅でエネルギーを創り、貯めておくことができれば、停電が発生しても変わらずに日常生活を送ることができるでしょう。

さらに、個々の住宅だけにとどまらず、地域単位でエネルギーを自給自足し、CO2を削減する、スマートコミュニティやマイクログリッドなどの構想も進められています(図3)。

多くの自治体がカーボンニュートラルに向けて、エネルギー政策をまちづくりに取り入れています。

このような流れを受けて近い将来、住まいや居住地を決めるときの条件として、停電リスクの低さや脱炭素への貢献度などのエネルギー事情が重要視される日が来ることも考えられます。

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持続可能な社会を創るためのエネルギー教育

エネルギー問題を抱える日本で持続可能な社会を創っていくために、エネルギー教育の重要性が高まっています。

学校教育ではSDGs達成のための取り組みとして、2020年度からESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)が取り入れられています。
ESDの一環として実施されているエネルギー教育の目的は、「持続可能な社会の構築をめざし、エネルギー・環境問題の解決に向け、生涯を通じて主体的かつ適切に判断し行動できる人間を育成する」ことです。

経済産業省資源エネルギー庁では、エネルギー教育において以下の4つの視点を定めています(図4)。

「エネルギーの安定供給の確保」「地球温暖化とエネルギー問題」「多様なエネルギー源とその特徴」そして「省エネルギーに向けた取り組み」、これらの4つの視点は、全て現代の生活でまさに直面している課題の解決に役立つ知識です。

小学校でのエネルギー教育は、複数の教科を横断して実施されています。社会科では暮らしとエネルギーの関係や歴史、理科では電気や燃料の仕組み、そして家庭科では地産地消や節電などについて学びます。

次の図5は、資源エネルギー庁発行の「エネルギー教育授業展開例」に掲載されている、小学四年生の社会科の授業「自然災害とエネルギー」の一例です。

この授業では、過去に発生した自然災害がエネルギー供給に与えた影響や、被害が起きないようにする取り組み、家庭での備えについて学習します。この授業の目的は、エネルギーが生活に必要不可欠なものであることを学ぶことです。

このように、さまざまな学習を通じて、SDGs目標7のターゲット7.1「2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。」について、自分なりの考えを持ち、主体的に行動できる人材を育成しようとしているのです。

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まとめ

スイッチを入れるといつでも使える電気は、盤石な社会インフラとして長い間私たちの暮らしを支えてきました。しかし、節電要請が相次ぐ現在の日本では、不自由なく電気を使える日々は、すでに当たり前のものではなくなりつつあるでしょう。

大規模停電が発生し、猛烈な暑さや過酷な寒さのなかで何日もエアコンが使えなくなってしまう状況を想像してみてください。生活や仕事がままならないだけではなく、熱中症や凍死などの命に関わる深刻な事態となってしまいます。

エネルギーの問題が「社会」だけでなく「個」のものにもなりつつある今、次世代を担う子どもたちへのエネルギー教育は非常に意味のあるものです。エネルギー教育では、エネルギーを社会問題や環境問題として捉えるマクロな視点と、日々の暮らしに直結する身近な問題として捉えるミクロな視点の両方を育みます。

エネルギーについて学び、考えることは、持続可能な社会構築のために適切な行動がとれる素地を養うことにつながるでしょう。


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