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途上国にも現代的で持続可能な電力を「ミニグリッド」の技術とは

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現在、世界では、7億人以上が電気を使えない生活を強いられています。

特に途上国では、都市化が進む地域もあれば、一方で農村部や島のように電力インフラの状況が変わっていない地域もあります。かといって農村部まで届くような電線設備を敷設できるかというと、これは膨大な資金がかかる話になってしまいます。

このような問題を解決するために注目されているのが「ミニグリッド」と呼ばれる技術です。太陽光を電源としていることもあって、クリーンなエネルギーを途上国の農村部などに届けることが可能なツールとして期待されています。

どのようなものでしょうか。

※この記事は、寄稿記事です。

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世界では7億人超が電力を使えない

国連の報告によると2020年段階で、世界では7億3300万人が電力にアクセスすることができずに暮らしています(図1)。

また上の図のように、国連は世界が気候目標を達成するためにはエネルギー効率を向上させる必要があるとしています。しかし2020年の段階では、依然として非効率かつ環境汚染につながる調理システムを使用している人が24億人にのぼっています。

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大規模発電施設を必要としない「ミニグリッド」の登場

大掛かりなインフラ整備が難しい状況のなかで、注目されているのがミニグリッドとよばれる技術です。

ミニグリッドとは

バングラデシュでは、2003年からソーラーホームシステムプログラムを導入したインフラ開発公社(IDCOL)などが、現在ミニグリッドという仕組みを使った農村部での電力供給網敷設の試みを行っています*1。

電気の通っていない地域で、各世帯に電力を届けられるようになったのがミニグリッドの技術です。発電には太陽光が使われます(図2)。

太陽光小型発電装置(SHS)を屋根に取り付けることで家で使う電力をまかなうというものですが、発電装置は決して安いものではないので、誰もが手に入れられるものではなく、購入できない世帯も多く存在します。

そこで、SHSを設置している世帯からそうでない世帯へ、個人的に電力を販売するという仕組み、これがミニグリッドです。

近所同士の電力の融通であれば、大掛かりな送電網を必要としません。また、太陽光というクリーンエネルギーである点にも注目です。SHSは、2015年までに累計400万世帯以上に設置されています*2。

孤島では「ミニ発電所」も

また、バングラデシュのノルシンディ地区には大河に囲まれた「川の孤島」があります。電線が通らないため電気は通じておらず、住民は、夜は自家用の太陽光発電装置を持つ家以外は、灯油ランプで照らされるだけの生活を送っていました。

そこに2014年に建設されたのが、小規模な太陽光発電基地です(図3)。

そして、住民はプリペイドカードを利用して電力を購入するしくみになっています。各契約者の家屋にメーターが取り付けられており、プリペイドカードを差し込むと電気が通るという仕組みになっています(図4)。

プリペイドカードの残高がなくなれば、事務所で補充することが可能です。また、携帯電話の基地局も、このミニ発電所からの電力で稼働しています。

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世界で5億人を電化との試算も

世界銀行は2019年のレポートで、こうしたミニグリッドによって、2030年までに5億人に電気を供給することが可能になると発表しました*3。

かつ、世界銀行のレポートは、現在ミニグリッドはアジアでの導入が進んでいますが、今後計画中のものはアフリカ向けが大半とも報告しています。

そして注目したいのは、クリーンなエネルギーであるという点です。5億人に電力を届けるには 、この21万件により世界全体の温室効果ガス排出量を15億トン抑制する効果を見込めるとしています。

今後、太陽光パネルの小型化や価格低下が進めば、ミニグリッドの普及も加速していくことでしょう。実際、世界銀行はSHSのような分散型の太陽光発電は、アフリカの未電化地域に多くの世界企業が参入し、市場規模は拡大していくと予測しています(図5)。

なお、先に紹介したバングラデシュでのミニグリッド構築には、ドイツの起業家の支援も大きく関与しています。セバスチャン・グルー氏がバングラデシュで立ち上げた「ME SOLshare Limited(MSL社)」は、世帯間での電力のやりとりを効率化するためのシステム「SOLshare」を開発し導入しました。

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たとえばあるSHS設置者が他の家庭に電力を融通しているうちに、自分が使える電力の残量が減ってしまう事態も想定されます。その時には、別のSHS保有者からさらに電力を融通できるというシステムを作ったのです(図6)。

このシステムを実現するためには、発電量や消費電力、電池の容量などをリアルタイムで計算する技術が必要になります。また、それに適したメーターをなるべく低価格で開発・製造する必要もあります。

また、SOLshareは、ソフトウェア開発はバングラデシュ人チームを主体に進め、開発資金については、バングラデシュ政府や国際機関が支援しているという、現地との共同作業であることも特徴です*2。

日本では防災面でも注目

また、ミニグリッドのような分散型の電源は、自然災害の多い日本でも防災対策として注目されています。

ミニグリッドと同じメカニズムで、より広範な地域を対象にするマイクログリッドの例ですが、沖縄県の宮古島などでは、台風などで地域の変電所が被害に遭ったとき、復旧までに時間がかかり孤立化する可能性があります。離島ゆえのリスクとも言えます。

そこで、通常時は地元の変電所からの電力を使いつつも、別に太陽光発電施設を備えておき、変電所が被害を受けた場合には太陽光発電所から施設や住宅に電力を供給するように回線を切り替えるといった方針が取られています(図7)。

このような形を取ることで、変電所の復旧を待つことができるのです。

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「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。SDGsの7番目のゴールです。具体的な達成目標や実現方法として、国連は次のようなものを示しています*4。

達成目標
  • 2030年までに、だれもが、安い値段で、安定的で現代的なエネルギーを使えるようにする。
  • 2030年までに、エネルギーをつくる方法のうち、再生可能エネルギーを使う方法の割合を大きく増やす。
  • 2030年までに、今までの倍の速さで、エネルギー効率をよくしていく。
実現方法
  • 2030年までに、国際的な協力を進めて、再生可能エネルギー、エネルギー効率、石炭や石油を使う場合のより環境にやさしい技術などについての研究を進め、その技術をみんなが使えるようにし、そのために必要な投資をすすめる。
  • 2030年までに、さまざまな支援プログラムを通じて、開発途上国、特に、最も開発が遅れている国、小さな島国や内陸の国で、すべての人が現代的で持続可能なエネルギーを使えるように、設備を増やし、技術を高める。

ミニグリッドの技術は、上記のような目標や実現方法に見合ったものといえます。

今後も国際機関や海外からの投資によって、電気を使えない地域にクリーンな電力をもたらすコンパクトな方法でもあるのです。


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