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SDGs目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに を解説|平等で安定したエネルギー供給のためにできること

SDGs目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに を解説|平等で安定したエネルギー供給のためにできることの画像

SDGsの認知度は年々高まっており、2022年電通の調査では認知率が8割を超えています。SDGsを学習するなかで、17目標それぞれの内容を知って取り組んだり、社会や学校で取り組みを検討したりと、具体的な行動を取る機会もあるでしょう。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、気候変動対策に関係する目標です。具体的に世界や日本国内でどのような問題があり、SDGs目標7が作られたのでしょうか。

今回の記事では、SDGs目標7の内容解説、課題や現状について事例を踏まえながら紹介します。さらにビジネスの現場で、目標7をどう捉えて取り組んでいくのかについても解説します。

今回の記事はこんな人におすすめです
  • 目標7の内容を詳しく知りたい
  • 自社事業や取り組みと目標7の関係を考えたい
  • 授業やプロジェクトで目標7について解説・発表する予定がある
  • 子どもに目標7の内容を教えたい

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目標7の概要

地球温暖化は誰もが耳にしたことのある環境問題の1つです。その原因となっている温室効果ガスにはさまざまなものがありますが、最も影響を与えているのが二酸化炭素です。地球温暖化が進むとさまざまなリスクが引き起こされます。例えば、気候変動や干ばつによる食糧不足・水資源不足・病気や伝染病の増加・生物多様性の損失などが危惧されます。

そのため、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーが注目を集めており、目標7には再生可能エネルギーに関する内容が盛り込まれています。

SDGsの17目標にはターゲットが設定されており、合計169個あります。抽象的に表現されている各目標を理解するには、ターゲットで示される具体的な課題・方法を読み解く必要があります。

目標7のターゲットは5個で他のターゲット数と比べると少なめです。5つのターゲットには、インフラの整備や再生可能エネルギーの拡大・誰もがエネルギーを利用できるように供給することなどが含まれます。

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目標7のターゲット一覧

以下の表でSDGs目標7のターゲット一覧を紹介しています。各ターゲットを読むとどんなゴール・課題が目標7に含まれるのかイメージがわくでしょう。

企業・個人でSDGsの達成に貢献する取り組みを始めるには、このターゲットから考えていくことがオススメです。そのうえで、SDGs media では、アクションを考える参考になる無料の資料『【17目標別】企業のSDGsアクションリスト|345種類の施策から自社の取り組みを探そう』を提供しています。取り組みを考える際はぜひご活用ください。

7.12030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.22030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.32030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い 化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

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地球温暖化の現状

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世界が受けた地球温暖化による影響と現状

世界の平均気温は地球温暖化に伴い上昇傾向にあります。IPCCの第6次評価報告書(2022)によると2011年から2020年の世界平均気温は、1850年から1900年よりも1.09(0.95から1.20)℃高くなっています。このことからも、地球温暖化の要因であるCO2の排出量が年々増加していることがわかります。

また同報告書では、1850年から1900年、2010年から2019年までの人為的な世界平均気温上昇は0.8℃から1.3℃の可能性が高く「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」と明記しています。

私たちの生活から排出される温室効果ガスの増加によって地球温暖化が引き起こされていることが、この事実からも見受けられます。

今後起こりうるものとして、同報告書では世界の平均気温が今世紀半ばまで上昇し続けるとしています。これを踏まえて、以下のように明言しています。

向こう数十年の間にCO2及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、1.5℃及び2℃の地球温暖化を超える。
引用元:IPCC 第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠 政策決定者向け要約(SPM) 暫定訳(2022 年 5 月 12 日版)|気象庁(PDF)

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日本が受けた地球温暖化による影響と現状

世界の地球温暖化の現状について触れましたが、日本も同様に平均気温が上昇しています。気象庁によると、日本の年平均気温は100年で1.28℃の割合で上昇しています。このような上昇が続けば猛暑日の日数も増えることが予測できます。

一方で、2020年度日本のCO2総排出量は11憶5,000万トンであり、前年に比べると5.1%減少しています。さらに、温室効果ガスの総排出量は2014年度以降7年連続で減少しており、3年連続で最少を更新しています。これらは再生可能エネルギーの導入拡大や、原子力発電所の再稼働などが影響していると考えられています。

このようにCO2や温室効果ガスの排出量が減少傾向にあるものの、日本は温室効果ガスの総排出量を2030年度で46%減、2050年には排出実質ゼロを目標として掲げています。今世紀後半にできるだけ早く脱炭素社会を実現させるために、日本政府は以下のような政策・施策を実行・検討しています。

  • 設置可能な政府保有の建築物の50%以上に太陽光発電を設置する
  • 政府の公用車を2030年度までにすべて電動車にする
  • 各府省庁で使う電力の60%以上を再生可能エネルギーにする など

さらに、環境省「地球温暖化対策の最近の動向について」によれば、2020年度(速報値)でのCO2の直接排出はエネルギー転換部門・産業部門・運送部門の順に多く、間接排出では産業部門・運送部門・業務その他部門の順に多くなっています。この点からも、人間行動の活発化が地球温暖化の要因であることが明らかです。

クリーンなエネルギーとは再生可能エネルギーのこと

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私たちの暮らしにはエネルギーが必要ですが、日本はエネルギーの自給率が低いため、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を輸入しています。これらの使用によってCO2が排出され、気候変動を引き起こす要因となっています。

人間活動によって環境問題を悪化させないためには、クリーンなエネルギーの活用が必要です。クリーンエネルギーと呼ばれる、CO2などの汚染物質を排出しない再生可能エネルギーの種類やメリット・関連する課題を次から解説します。

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再生可能エネルギーの種類

再生可能エネルギーには、さまざまな種類があります。ここでは、それぞれを簡潔に解説します。

太陽光発電

太陽光発電は、シリコン半導体に光が当たることで発電する原理を活用しています。特徴として、太陽光がエネルギー源なので設置場所に制限がない・屋根や壁などに設置できるため新たな用地を必要としない・送電設備のない遠隔地(山岳部・農地など)の電源として使用できる・非常用電源として使用できるなどが挙げられます。

風力発電

風力発電は風力をエネルギー源としています。大規模の発電であれば経済性を確保できる可能性があることや、陸上と海上で発電できること・変換効率が良いことが特徴です。また、太陽光発電と異なり、夜間でも風があれば発電できる点が、風力発電の強みです。

バイオマス発電

バイオマス発電とは、動植物などの再生可能な生物資源(バイオマス)を焼却・ガス化させて発電する仕組みです。それらの焼却時に出たCO2は植物が吸収して成長し、バイオマスを再生産するため、大気中のCO2量は増加しないカーボン・ニュートラルだと見なされています。

バイオマス発電は廃棄物の再利用や減少に繋がり、循環型社会・地域環境の改善に貢献します。

水力発電

日本は水資源に恵まれているため、水力発電は国内でまかなうことができる貴重なエネルギー源です。ダムや河川の流水だけでなく農業用水や上下水道も利用しており、安定的な供給や長期稼働が可能です。発電時にCO2排出量排出しないクリーンな発電手法で、水流や水量の変化によって発電量がコントロールしやすい特徴があります。

地熱発電

地熱発電は、地下の地熱エネルギーを利用する発電手法です。昼夜を問わず安定した発電ができ、化石燃料のように枯渇しないため、長期的な供給が期待できます。

火山地帯に位置する日本は地熱資源に恵まれていますが、導入はあまり進んでいません。その理由は、発電所を設置するには時間とコストを要することや、発電所に適した場所が公園や温泉地などと重なることが挙げられます。

太陽熱利用

太陽熱利用は、太陽の熱エネルギーを使って温水や温風を作り、給湯や冷暖房などに活用する方法です。簡単なシステムで特別な操作が必要ないため、給湯利用回数の多いホテル・病院・福祉施設などで手軽に導入できます。

雪氷熱利用

雪氷熱利用は、冬季に雪や氷を保管して、冷熱が必要となる時期に利用するシステムです。従来、除雪や融雪に膨大な費用がかかっていた雪を利用できることがメリットです。

温度差熱利用

水源(地下水・河川水・下水など)を熱源としたエネルギーです。気温と水温の温度差をヒートポンプを用いて利用しています。都市型エネルギーとして注目されており、さまざまな方法で活用されています。

地中熱利用

地中熱利用は、地中の温度が一定であり、夏場の地中の温度は気温より低く、冬は気温より高いという特徴を利用しています。

場所を問わず活用できるエネルギーで、外気温の影響を受けず利用できます。また、稼働時騒音が小さいことや、冷暖房では熱を屋外に出さないことから、ヒートアイランド現象が起こりにくいなどが特徴です。

再生可能エネルギーを使用する2つのメリット

メリット1:温室効果ガスを排出しない

再生可能エネルギーの種類について解説してきましたが、再生可能エネルギーは地球温暖化の要因となっている温室効果ガスを排出せず、エネルギーを生み出せるという最大のメリットがあります。

日本では2021年に地球温暖化対策計画が改正され、温室効果ガスの総排出量を2030年には2013年度と比べ46%減らすことを表明しています。この目標達成に向けて、再生可能エネルギーのさらなる推進が重要です。

メリット2:日本のエネルギー自給率改善に貢献する

再生可能エネルギーは国産の資源を利用するので、エネルギー自給率の改善が期待できます。

日本はエネルギー資源に乏しい国です。エネルギー供給の8割以上は石油や石炭・天然ガス(LNG)・化石燃料が占めており、ほとんどを海外からの輸入に頼っています。資源エネルギー庁によると、2019年度日本のエネルギー自給率は12.1%で、他のOECD諸国と比べても低い水準です。このまま海外に依存すると、国内のエネルギー安定供給が懸念されるため、改善が必要とされています。

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再生可能エネルギーの使用率と課題

再生可能エネルギーの使用率

経済産業省によると2019年度の電源構成は、多い順に石油37.1%・石炭25.3%・LNG22.4%・再エネなど8.8%・水力3.5%・原子力2.8%です。

先述で紹介したように再生可能エネルギーはCO2を排出しないというメリットがあります。しかし、季節や天候などによって発電量が変動するものもあり、再生可能エネルギーだけでは安定した供給が望めません。

一方、火力発電は、燃料の投入量を調整することで発電量をコントロールできる電源です。そのため再生可能エネルギーの推進に伴って、安定して電力を供給するため、季節・天候などに左右されない火力発電との調整が重要になってきます。

原子力発電は、エネルギー自給率の低い日本がエネルギー政策の基本要素「3E+S」を実現するため、原発のメリットを踏まえて欠かせない電源となっています。
※「3E+S」とは、安定的な供給(Energy Security)・低コストのように経済効率性が高いこと(Economic Efficiency)・環境に適合すること(Environment)の3つの「E」に、大前提の安全性(Safety)の「S」を加えたもの

2011年3月11日の東日本大震災で起こった原発事故を機に、原子力発電には厳しい規制基準が策定され、火山・地震・津波などの自然現象や、テロ対策なども盛り込まれました。これにより、全ての原発が安全性を第一に優先し、原子力規制委員会が策定した新規制基準を満たすことが求められます。

こうした事実からも予測されるように、経済産業省は2030年度の電源構成の見通しを、LNG約20%、石炭約19%、再エネ約36%から38%、 原子力約20%から22%、石油など約2%と発表しています。なお、再生可能エネルギーの内訳は太陽光約15%・風力約6%・地熱約1%・水力約10%・バイオマス約5%です。

再生可能エネルギーの普及に向けた課題

再生可能エネルギーを使うことで、気候変動の要因である温室効果ガスの排出量を抑えられますが、課題も残っています。各再エネの紹介で触れた点も含めて、再生可能エネルギーの課題2点を紹介します。

1点目が、再生可能エネルギーの安定性です。例えば、太陽光発電は天候や時間帯で、風力発電は風の強さによって発電量が変動するため、安定した供給が難しいと言えます。

2点目は、再生可能エネルギーは比較的に発電コストが高価であることです。世界での再エネ発電コストは急速に低下しているため、日本も同様に中長期価格目標の設定や技術開発などによってコスト低減を進めていかなければなりません。

再生可能エネルギーを主力電源にしていくために上記のような課題に目を向け、幅広いエネルギーを調達して、需要と供給のバランスを調整する必要があります。

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世界のエネルギーの現状

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電気が使えない地域がまだある

世界では、約7.9億人(2018年)が電気を使うことができていません。エリア別ではサハラ以南のアフリカで電力不足が集中しており、約5億4,800万人に影響を及ぼしています。

日本ではインフラが整備されており、当たり前のように電気を使っていますが、世界には電気が使えずに生活している人たちがいます。電気の供給が安定しないと、日々の暮らしにどのようなことが生じるでしょうか。

例えば、生活必需品となっている携帯電話が利用できなくなると、キャッシュレス決済に依存している場合、一切買い物ができなくなります。また、私たちが普段から仕事や勉強で使うパソコンやタブレットも利用が困難になり、教育や産業発展の遅れを招きます。

他にも、急を要する医療の遅れが発生したり、部屋の照明や家電なども利用できなくなったりします。

上記は、電気の供給が安定しないことで生じる一例ですが、これらからもエネルギー不足は人々の日常生活を制限することがわかります。つまり、安定したエネルギー供給ができれば、人々の豊かな暮らしの実現に繋がります。

再生可能エネルギーは必ずしも大規模な設備が必要でなく、燃料の輸入も不要なため、電気がない地域・途上国への導入・普及が可能です。生活水準が上がって新たな産業が生まれれば雇用に繋がり、貧困の解消にも影響します。

今後電力使用の増加が考えられる業種

電力の使用が今後増加すると考えられる業種として、IT業界が挙げられます。コロナ渦で在宅勤務・テレワークのような新しい働き方が定着し、AIや5Gなどの技術を活用したさまざまなITサービスが登場しています。スマートシティの実現や再生可能エネルギー事業の発展などからも、ITサービスの需要は今後もさらに高まると言えます。

今後も続く需要の高まりに伴って、データセンターの消費電力量の増加が課題として挙げられます。なお、経済産業省によると世界の消費電力量は2030年には約16倍、2050年には約168倍(いずれも2018年度比)と公表されています。

同省は、2050年のカーボン・ニュートラルの実現に向けて、IT機器自体のエネルギー効率の向上・ソフトウェアがIT危機を効率良く使うことが、データセンターの省エネ・脱炭素社会の実現に繋がることを示しています。

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日本のエネルギーの現状

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一人当たりの電気使用量が多い

ここでは日本のエネルギーの現状を紹介していきます。

日本は、一人あたりの電気使用量が年間7,935キロワット(2019年)と多く、世界平均の2.4倍の消費量です。国別の電力消費量割合では中国・アメリカ・インドに次いで、世界4位の電力消費量です(2019年)。

前述の通り、最近はコロナウイルスの影響によりデジタル化が進んだことで、消費電力量はさらに増加傾向にあります。

それでは、日本のエネルギーはどのように消費されているでしょうか。経産省によると、2020年度のエネルギー消費の構成比は企業・事業所61.9%、運輸部門が22.3%、家庭部門が15.8%でした。

先程紹介したように、今後IT業界では電力使用が大幅に増えることが予測されているので、企業・事業所の構成比が大きくなることが予測できます。

なお、家庭部門のエネルギー消費は、動力/照明他34.0%・給湯27.8%・暖房25.1%・厨房10.7%・冷房2.4%の順で構成されています。

一人ひとりが節電の取り組みが、CO2の排出を抑え、気候変動対策にも繋がります。

電力自給率が低い

前述の通り2019年度日本のエネルギー自給率は12.1%であり、他のOECD諸国と比べても低水準となっています。つまり、約88%の化石燃料エネルギーを海外からの輸入に頼っているため、国家間の関係性の安定なども条件となり、安定的な供給が大きな課題です。

なお、日本は原油の約90%を中東に依存しています。中東は政情が不安定な地域のため、情勢によっては世界のエネルギー価格の高騰も懸念されます。

ちなみに、2010年には日本の自給率が20.3%もあり、さまざまな要因が重なって現在の水準になっています。その大きな原因が、日本のエネルギー資源が乏しいことです。日本は1970年代のオイルショックを経て、化石燃料への依存度を下げようとさまざまなエネルギー源を使うようになりました。しかし、東日本大震災による原子力発電所の停止をきっかけに、再び火力発電が増加し、2018年度の日本の化石燃料依存度は85.5%です。

化石燃料に依存していると、気候変動の要因であるCO2が排出され続けます。それを防ぐためにも、国内資源を利用して発電できる再生可能エネルギーの導入が求められています。

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化石燃料を使った発電がまだ続く理由

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日本が石炭・石油主体の発電をする理由

石炭火力発電はCO2を排出するため環境に悪影響を与えています。しかし、日本はガス主体ではなく、石炭・石油主体の発電を続けようとしています。その理由を考えてみましょう。

供給の安定性があり、長く使える

石炭は他の化石燃料に比べて採掘できる年数が長く、存在している地域が欧州・ユーラシア・北米・アジア大洋州など分散していることから、安定した供給が期待できます。先ほど日本は原油の約90%を中東に依存していると紹介しましたが、石炭は地域に偏りがなく、政情リスクの高い中東に依存することもありません。そのため、エネルギーの安全確保が望めます。

低コストで発電できる

石炭は原油やLNGに比べて、発電コストの低いエネルギー源です。価格の変動もないので、安定して活用できます。

他にも、石炭火力発電に対する技術開発が進められ、環境負荷が抑えられていること・少量の燃料でたくさんの電気を作ることのできる効率性があることなども、日本が石炭火力発電を継続して使う理由として挙げられます。

ブンアン2石炭火力発電事業について

ブンアン2石炭火力発電事業とは、日本の三菱商事・中国電力・四国電力などが出資するベトナムの石炭火力発電事業です。

ベトナムでは最大電力が年々増加しており、10年前の2.5倍となっています。火力電源開発に遅れがあり、国内の発電電力量の約3割を水力発電に頼っていますが、天候次第では安定した電源供給ができない状態です。そのため、ベトナムでは石炭火力が必要な電源だとされています。

石炭火力発電は気候変動の要因であるCO2を排出する点で、投資を撤退する国が出てきています。当然ながら、この石炭火力発電事業には国内外から多くの批判が集まっています。2021年には「環境・持続社会」研究センター・国際環境NGO FoE Japanなどが、融資契約や出資に係る金融機関および企業に対して「ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業から撤退すべき」との声明を出しました。

そもそも日本はパリ協定に合意しており、2025年にCO2排出実質ゼロ、2050年の脱炭素社会を達成するために国をあげた取り組みの実施が求められています。同声明では、世界では石炭火力からの早急な脱却が求められており、本事業は気候変動対策とまったく逆行するものだと指摘されています。

石炭火力発電が気候変動に与える悪影響の他に、国際環境NGO FoE Japanはブンアン2石炭火力発電事業に対して、以下などの問題点を述べています。

  • 適切な住民参加の欠如
    事業者は現在起きている問題・これから生じる問題について、十分な説明を現地住民に起こっていないと指摘しています。
  • 複合汚染問題
    石炭の輸送時に、周辺に汚染が撒き散らされていると指摘されており、実際に近郊の海で魚の大量死を招いています。
  • 再生エネルギーの拡大と経済的合理性
    同事業の計画が進められた2007年に予測できなかったほど、ベトナムで再エネが拡大しています。風力や太陽光などの再エネの方が、低コスト(大気汚染対策コストも含む)だと算出されています。
    また第三者の分析によって、この石炭火力発電事業の機関に発生する収支が損失になると算出されている点も指摘しています。

    前述の通り、ベトナムのように電力が安定しないなか生活している人が世界にはたくさんいます。しかし、世界で気候変動対策を進めていこうという状況では、日本の火力発電事業への出資は真逆の取り組みであり、パリ協定に反しています。気候変動対策に向けて、火力発電以外の代替案や、緩和策の検討などを行うことが必要だと言えます。

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    脱炭素社会とは

    脱炭素社会とは気候変動に繋がる温室効果ガスの排出をゼロにする社会のことを意味し、背景に地球温暖化があります。地球温暖化は地球規模の気温の上昇が問題であり、人間活動による温室効果ガスの排気量が増えたことが原因の1つです。

    温室効果ガスには、二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・フロンガスなどが含まれます。なかでも二酸化炭素が大部分を占め、地球温暖化に一番大きい影響力を持っています。

    菅前総理大臣は、カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現を目指すと宣言し、日本はその実現に向けて取り組みを進めています。

    カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現を目指す

    2020年10月 菅前総理は、以下のように表明演説しました。

    「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」
    引用元:「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?|資源エネルギー庁

    この「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。

    排出を完全にゼロにすることは現実的でないため、吸収や除去ができるように温室効果ガスの排出量を大幅削減することが必要になります。

    次にカーボンニュートラルに向けて、どのような取り組みが行われているか紹介します。

    カーボンニュートラルに向けた取り組み例

    Apple社は、普段私たちが使うSiri・iMessage・iCloudなど、Apple製のアプリやサービスを動かすサーバをデータセンターに置いています。Appleで最も多くエネルギーを消費するデータセンターでは100%再生可能エネルギーを使用しており、上記のようなアプリやサービスを頻繁に利用しても環境にやさしいクリーンエネルギーが使用されています。

    また、電源アダプタ(充電器)をiPhoneやApple Watchの同梱物からなくし、パッケージをより小さく、軽くしました。電源アダプタには、プラスチック・銅・スズ・亜鉛など特定の素材が最も多く使われています。これにより輸送用パレット1台に積めるiPhoneの箱が最大で70%増え、輸送などにより発生するCO2排出量の削減に成功しました。

    その他にAppleは、2030年にサプライチェーンでカーボンニュートラルを実現するために、世界中の製造パートナー110社以上が100%再生可能エネルギーへの切り替えていくことを、2021年に発表しました。これはCO2換算で、年間1,500万トンの温室効果ガス削減に貢献します。

    これらはApple社の取り組みの一部で、他にもさまざまな環境に関する取り組みを実施しています。

    次に、ガソリン車の新車販売禁止について紹介します。現在、国際的にガソリン車の新車販売を次第に取りやめるような動きが始まっています。ガソリン車の新車販売禁止の目安時期を日本とイギリスは2035年まで、アメリカは一部の州で2030年まで、フランスは2040年までと目指しています。

    一方で、電気自動車はCO2を排出しないと言われていますが、ガソリン車よりも電気自動車の方が、生産時のCO2排出量が約2倍多いとわかっています。

    また、カーボンニュートラルを目指して電気自動車の普及を目指していますが、自動車の充電には石炭や、天然ガスの火力発電からの排出が大部分を占めています。これらのように、電気自動車には矛盾と課題が残っており、国として向き合っていかなければなりません。

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    他にもある目標7番に関連する課題のキーワード

    今回の記事では解説しきれなかった、目標7に関連する課題のキーワードを簡単に紹介します。興味がある方は、ご自身で調べてみてください。

    スマートホーム

    スマートホームとは、IoTによって実現された無駄な電力使用を防ぐことができる新しい暮らしです。家電とスマートフォンなどの機器を繋ぎ、外出先からも電力の使用量の把握できたり、家電のオンオフをコントロールしたりできます。1つのデバイスで管理できるようになり、スマホやスマートスピーカーを使えば、音声で操作も可能です。

    電力の使用量を把握して節電することは、エネルギー消費量の抑制にも繋がり、気候変動対策に貢献できます。

    クリーンな調理用の燃料

    普段、調理をする際にはガスコンロやIHコンロを使用しますが、どちらの方が環境にやさしいでしょうか。一見、IHコンロはガスを使わないので環境にやさしいイメージがあるかもしれません。しかし、実際は発電時と送電時にCO2を排出するため、トータル換算するとガスコンロの方がCO2排出量が少ないとされています。

    また、世界には石油や石炭・木材・農作物などを燃やして、調理を行なっている地域もあります。これらは気候変動を引き起こし、人々の健康にも悪影響を及ぼします。このように、調理に際してもクリーンなエネルギー利用が重要です。

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    企業で取り組める目標7の対策

    企業がSDGsに向けて取り組むことは、企業の持続可能性を高めてくれます。ここでは目標7に関連して、私たちが今すぐ会社で取り組めることを紹介します。

    節電

    節電意識は目標7の達成に繋がります。今回の記事でも紹介したように、他国と比較して日本の電気使用量は多いです。普段使用する電気使用量を把握して、照明やエアコンなどが必要な時にのみ使用するような節電の心がけが重要です。

    節電によって発電時のCO2排出を防ぐことができ、気候変動対策への貢献や、企業の光熱費を削減できます。

    リモートワークや公共交通機関・自転車の活用

    出勤時に自家用車ではなく、公共交通機関や自転車を利用することでCO2排出量を抑えられます。

    環境省によると、2018年度のCO2排出量の内訳は、自家用車で46.1%・鉄道は3.9%・バスは1.9%で、自家用車と公共交通機関のCO2排出量には、かなりの差が生じています。

    出勤する際はリモートワークを選択したり、公共交通機関や自転車を使ったりすることが、CO2排出量の削減に繋がります。

    再生可能エネルギーの導入

    今回解説してきように、目標7の達成には温室効果ガスを排出せず、国内で生産できる再生可能エネルギーが重要です。

    企業・個人問わず再生可能エネルギーを使用するのは簡単で、電力会社が提供する再生可能エネルギー利用プランを活用するだけで実現できます。自社に適切なプランを検討して選びましょう。

    その他に会社でできることをまとめています。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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      まとめ

      これまで、SDGs目標7の内容を概要や関連する事例、目標達成に向けて企業で取り組めることなどを紹介してきました。今回の記事を読み、SDGs目標7のエネルギーに関する課題や現状の理解が深まったのではないでしょうか。

      目標7の達成に向けてはエネルギー消費量の削減が重要です。世界や日本のエネルギー・再生可能エネルギーの現状を知り、普段の生活で節電を意識することはエネルギー消費量の削減に繋がります。

      この記事で読んで学んだエネルギーに関する取り組みを、周りに伝えたり自分でさらに調べたり取り組んだりしてみてください。

      SDGs media では他の目標についても解説しています。気になる目標があれば、画像をクリックして解説記事を読んでみてください。各目標の詳細やSDGs自体について、企業とSDGsについてなど興味を持った方は、ぜひSDGs media で関連情報をご覧くださいね。

      ▶SDGsとは?17の目標内容と日本の政府・企業の取り組みを徹底解説 を読む

      ▶企業がSDGsにいま取り組むべき理由を解説 を読む

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      SDGsのターゲットから考える具体的な取り組み345選

      SDGsの17目標・169のターゲットから企業が取り組めるアクションを345種類まとめました。本記事の冒頭で紹介した『SDGs達成に向けたビジネスアクションリスト』を入手する場合はこちら。

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      ビジネスと人権(第2回)

      ビジネスと人権の基本知識・企業による人権の取り組みのプロセスとポイント・人権に関する教育/研修の重要性

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      ビジネスと人権(第3回)

      企業における人権尊重のあり方・企業の人権尊重に関する国内外の動向・企業による人権の取り組みのプロセスとポイント・参考になる企業事例の紹介

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