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SDGs目標16 平和と公正をすべての人に を解説|世界と日本の課題とは

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SDGsがネットやテレビで紹介されると、SDGsに関心を持つ方が増えていきます。SDGsの17種類の目標それぞれの内容を知って、自身で貢献したり会社や学校で取り組みを検討したりと具体的な行動を取る機会もあるでしょう。

SDGsの目標16は「平和と公正をすべての人に」。世界で起こっている紛争・戦争によって、生活が脅かされる・十分な教育を受けられない・医療環境の不整備により命を落とすなどの問題が生じています。また、国内外で偏見や差別に苦しむ人も多く存在します。政治の腐敗や情報格差による不平等も課題です。

今回の記事では、SDGs目標16の内容と関連する課題やキーワードについて解説します。

今回の記事は以下のような人にオススメです。
  • SDGs目標16の内容を詳しく知りたい
  • 自社事業の取り組みと目標16の関係性を考えたい
  • 子どもにわかりやすく説明したい

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目標16「平和と公正をすべての人に」の概要

目標16のテーマは「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」です。

持続可能な開発のために人権の尊重や公正な法律を制定することで、あらゆる人が参加できる平等で平和な社会を目指しています。

掲げられたターゲットは12個。虐待や搾取などを含む暴力や組織犯罪・テロリズムの撲滅・司法や情報へのアクセスの提供・汚職や贈賄の減少・公共機関の透明性の確保など、平和と公正を実現するための具体的な目標が定められています。

また、非差別的な法規・政策の推進や、すべての人への身分証明の提供など法律・公共サービスによって改善すべき課題も盛り込まれています。

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目標16のターゲット一覧

以下の表でSDGs目標16のターゲット一覧を紹介しています。各ターゲットを読むとどんなゴール・課題が目標16に含まれるのかイメージがわくでしょう。

企業・個人でSDGsの達成に貢献する取り組みを始めるには、このターゲットから考えていくことがオススメです。そのうえで、SDGs media では、アクションを考える参考になる無料の資料『【17目標別】企業のSDGsアクションリスト|345種類の施策から自社の取り組みを探そうを提供しています。取り組みを考える際はぜひご活用ください。

16.1あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.42030 年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.92030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b

持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。

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戦争や紛争によって難民の数が増えている

迫害や紛争などにより故郷を追われ、難民・国内避難民となった人の数は2022年5月に1億人に達しました。以前から紛争状態が続いているアフガニスタンやエチオピア・ミャンマーに加え、ロシアによるウクライナ侵攻によって急増しています。

難民とは、紛争や宗教・人種・国籍・迫害などさまざまな理由により生命の安全を脅かされ、他国に避難しなければならなかった人々を指します。難民のおもな出身国はシリア・ベネズエラ・アフガニスタン・南スーダン・ミャンマーの5カ国に集中しており、これらが出身国の難民は全体の67%を占めています。

国内避難民とは、難民と同じく命の危機のために避難を余儀なくされた人々ですが、難民と違い国境を超えていないという特徴あります。そのため、国際的には難民として保護されません。国内避難民に対する支援内容は、置かれる状況が難民とほぼ同じなため共通することが多いです。

難民・国内避難民の数は、紛争や武力衝突が長引くことで増加しています。シリアでは2011年に本格化した政府軍と反政府軍の武力衝突(シリア危機)が10年以上、アフガニスタンでは1979年のソ連軍侵攻以来の国内混乱状態が40年以上、南スーダンでは北部と南部の内戦が1956年から2011年までの半世紀続くなど、各国で紛争状態が続いています。

また、戦争や紛争によって、多くの子どもたちが影響を受けています。子どもの権利保護団体セーブ・ザ・チルドレンは、2020年時点で紛争地域に住んでいる子どもの数は4億1,500万人と公表しました。同団体は紛争地域に住んでいる子どもの数がもっとも多いのはアフリカで1億7,000万人、割合としてもっとも多いのは中東地域だと明らかにしており、2018年から2021年の間に150万人の子どもが難民として生まれていると試算しています。

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難民が抱える3つの問題

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長引く戦争や紛争により、世界には多くの人が難民・国内避難民としての生活を強いられています。その多くは生活環境に応じてさまざまな問題を抱えていますが、ここでは3つの事例を紹介します。

問題1:医療の欠如

戦争や紛争状態にある状況では、多くの病人が生じます。おもに発症する病気は、コレラや肺炎・はしか・マラリアなどの感染症です。難民キャンプには保健センターの設置や、患者を保健センターへ紹介するシステムなどが必要です。しかし、資金不足によりセンターの設置が不足しているだけでなく、基本的な医薬品や医療器具なども不足しがちな現状があります。

2020年8月6日から10日の間に、シリアの避難民キャンプで5歳未満の子ども8人が死亡しました。子どもの権利保護団体セーブ・ザ・チルドレンは、いずれの子どももキャンプ内の医療体制が整っていれば命を落とすことはなかったと発表しています。

また、キャンプ内でのコロナウイルスの感染拡大も続いています。2020年時点アフリカではコロナウイルスの感染者は17万人を超え、死者は4,000人以上に及びます。

これらのことからもわかるように、難民キャンプでは、病気を発症しても適切な医療が受けられなかったり、感染症が流行しやすい環境が存在したりしています。

問題2:不十分な教育機会

難民に危機的な状況が続けば、教育の再開は遅れます。その他の教育機会が得られない原因は、教科書・制服が購入できない・IT環境が整っていない・家の手伝いをしなければならない・先生がいないなど多岐にわたります。

難民の子どものうち初等教育の就学率は77%ですが、中等教育31%・高等教育わずか3%と年齢が上がるにつれ就学率が低下しています。また、難民の女子が男子よりも教育へのアクセスが限られていることもわかっています。

また先述の通り、難民キャンプではコロナウイルスの影響を大きく受けており、学校に通えない子どもの数がさらに増加する可能性があります。

教育が受けられない期間が長引くと復学が厳しくなり、将来の選択肢が狭まることが考えられます。すべての子どもたちへ十分な教育機会を提供するために、難民キャンプに学校を作るといった環境づくりや教育格差を無くすための支援など、政府・民間・社会の協力が求められます。

問題3:子どもや女性への暴力・搾取

難民の子どものなかには保護者を失ったり離れ離れになったため、年下の兄弟姉妹を育てたり、家事に従事したりすることも少なくありません。そのため十分な教育を受けられていません。

また、女性というだけでさまざまな暴力を受ける危険があります。たとえば、女子は、児童婚・早婚・強制結婚を含む性暴力・レイプ・その他のジェンダーに基づく暴力の被害者となる可能性が非常に高いです。

セーブ・ザ・チルドレンは2005年から2018年の間に、子どもへの性暴力が約2万件あったと公表しています。こうした暴力は報告されない場合が多いため、実際にはさらに多くの性暴力が起こっていると考えられています。

また、男子が受ける暴力・搾取も存在します。男子は、殺害や重傷・誘拐・軍隊への勧誘・強制的に兵士にさせられるなどのリスクが、女子に比べて非常に高いです。特に青少年の男子は同時期の女子よりも攻撃対象になることが多いため、戦闘で殺される可能性が圧倒的に高くなっています。

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日常にある差別

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差別は遠い世界の話ではなく、日本でも以下のような要因で差別が存在しています。

  • 人種
  • 性別
  • 子ども
  • 高齢者
  • 移民
  • 難民
  • LGBTQ
  • 障がい者
  • 同和問題(部落差別)
  • ホームレス
  • 出所者など

また、見た目(痩せている/太っている・アザや傷があるなど)や、宗教(服装の違い・食べられるものの違いなど)が理由の差別も発生しています。差別には明確な理由を伴うものばかりでなく、根拠のない偏見や社会で作られたステレオタイプでも生じています。

これらのような差別を解消するために「ヘイトスピーチ解消法」が2016年に定められました。ヘイトスピーチとは、特定の国の出身者またはその子孫であることを理由に日本社会から追い出す、危害を加えるなどの一連の言動を指します。

選挙や政治活動でのヘイトスピーチも大きな問題となっており、本法律は悪質なヘイトスピーチがデモやインターネット上でも頻発していることを受け成立しています。

その他にも、「障害者差別解消法(2016年4月施行)」や「部落差別解消推進法(2016年12月施行)」など差別解消に向けた法律があります。不当な差別的発言に対して、相談体制や防止体制の整備が必要です。

差別は差別を受ける人々が、教育・婚姻・就労・医療・公共サービスなどでマジョリティと同じサービスを受けたり、生活したりすることを困難にします。誰かが不当な扱いを受けたり、受けられるはずのサービスを受けられなかったりする事態を防がなければなりません。

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他にもある目標16に関連する課題のキーワード

政治の腐敗による汚職・贈賄

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国際的な非政府独立組織トランスペアレンシー・インターナショナルが発表している「腐敗認識指数」とは、世界各国の汚職の状況をまとめた指数のことで、指数が100に近いほどクリーンであることを示します。

2021年の調査では全180カ国・地域が対象となり、88点の同スコアでデンマーク・フィンランド・ニュージーランドの3カ国が1位となりました。なお、日本は18位(73点)、アメリカは27位(67点)、中国は66位(45点)です。全体的に世界の腐敗レベルは停滞していますが、国民や政治に自由が保護されている国は、汚職への統制が優れていることを示しています。

法的に存在しない子ども

法的に存在しないということは出生登録(出生届)が無いことであり、身分証明が無いことを意味します。2019年時点で出生届が出されていない子どもは世界で1億6,600万人に及び、その半数はインド・ナイジェリア・エチオピア・パキスタン・コンゴ民主共和国の5カ国に暮らしています。

出生登録はその人の存在を法的に証明するもので、身分証明の役割を果たします。出生届が無ければ予防接種が受けられない・学校に入学できない・裁判ができないなど、さまざまな不利益に繋がります。

出生届が出されない理由として、登録法がわからない・申請料金が高い・最寄りの登録施設が遠いなどの理由に加え、子どもを生んだばかりの母親は家にいるべきといった伝統的な慣習が関係している場合があります。

また、出生登録が出されていても、それを証明する出生証明書を所持していない場合も多く、世界の5歳未満児の約3人に1人が公式書類を持っていません。

この問題に対して、ユニセフは親に子供の性別問わず出生登録をするよう後押ししたり、安全で革新的な技術への投資をしたりするなど、支援を行っています。

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特殊詐欺

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特殊詐欺とは、電話やハガキなどを通じて被害者の親族や公共機関の職員などと名乗り、現金やキャッシュカードを騙し取ったり、ATMを操作させて犯人の口座に送金させたりする犯罪行為です。特殊詐欺は10種類に分類され、オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺・還付金詐欺・交際あっせん詐欺など多岐にわたります。そのなかでもオレオレ詐欺による被害が全体の約6割を占めます。被害者は65歳以上の高齢者が約9割を占め、その内の約3分の1が単身居住者です。

特殊詐欺には暴力団が関係している場合が多く、令和3年版の犯罪白書では詐欺の主犯や指示役・犯行準備役などの主導的な役の半数以上が暴力団の構成員・元構成員であるとわかっています。

情報アクセスの格差

デジタルディバイドとは情報通信技術の恩恵を受けられる人と、そうでない人との間に生じる経済格差のことで、情報格差と訳されます。

デジタルディバイドには、国際間ディバイドと国内ディバイドがあり、国内ディバイドはさらにビジネスディバイドとソーシャルディバイド(経済・地域・人種・教育・年齢などによる格差)に分けられます。

総務省の調査によると、高齢者世帯や低所得世帯・地方/都市区分などがインターネットの利用・未利用の違いに影響を与えていることがわかっています。

得られる情報の差があることで、必要なサービスを受けられない・手続きがスムーズに行えない・そもそもサービスがあることを知らないなどの問題が生じます。これは、自然災害や事故などの緊急時に対応が遅れることで、被害を受ける可能性も考えられます。

自宅でもさまざまな情報が得られる環境が整えば、オンラインでのコミュニティ形成や在宅勤務ができるようになり、単身世帯やひとり親世帯の孤独の解消に繋がります。

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目標16の実現に向けて私たちができること

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ここまで目標16に関するさまざまな問題について解説してきました。目標16の実現に向けて私たちができることは以下のようなことが挙げられます。

  • 世界にある課題を知る
  • 自ら情報発信をする
  • 課題解決に向けた活動している支援団体に寄付をする
  • 政治に参加して民意を反映させる
  • 児童労働に関わっていない商品を選ぶ(フェアトレード)

上記以外にも一人ひとりができることはあります。すぐに効果が出るものばかりでは無いかもしれませんが、まずは現状を知りできるものから始めてみましょう。

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まとめ

ここまで、目標16の内容や国内外の課題を紹介してきました。

世界には依然として長引く紛争や戦争・差別などが存在します。生活が脅かされる状態は早急に解決すべき問題です。

また、差別の撲滅に向けて、差別をする側だけでなく社会全体の認知と意識の改善が求められます。特殊詐欺による被害や情報アクセスの格差によって生じる不平等なサービスは、行政の取り組みが必要です。

課題解決のために、1人で直接的な好影響を与えることは難しいかもしれません。しかし、まずは課題や現状を知ることが大切です。

この記事を読んで学んだ取り組みを、周りに伝えたり自分でさらに調べたり取り組んだりしてみてください。

SDGs media では他の目標についても解説しています。気になる目標があれば、画像をクリックして解説記事を読んでみてください。各目標の詳細やSDGs自体について、企業とSDGsについてなど興味を持った方は、ぜひSDGs media で関連情報をご覧くださいね。

▶SDGsとは?17の目標内容と日本の政府・企業の取り組みを徹底解説 を読む

▶企業がSDGsにいま取り組むべき理由を解説 を読む

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