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「こんなん売れるん?」農家が驚く仕入れで野菜のフードロスに挑む起業家のルーツとは

「こんなん売れるん?」農家が驚く仕入れで野菜のフードロスに挑む起業家のルーツとはの画像

「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」の情報を発信するSDGs mediaへようこそ! 記事編集を担当している株式会社Dropのしょーじです。今回は、神戸で産地・畑の野菜や果物の食品ロスに関する取り組みを行うタベモノガタリ株式会社の竹下友里絵社長のインタビュー記事をお届けします。

インタビューの内容をより楽しみ理解してもらうために、まずは食品ロスについての基礎知識をご紹介します。「食品ロスなら知っている」という方はぜひ飛ばしてインタビュー本編からご覧ください。

今回の記事はこんな人にオススメです
  • タベモノガタリの竹下社長に興味がある
  • 食品ロスの概要と解消への取り組みを知りたい
  • SDGs内の食品ロスの位置づけが知りたい

SDGsのすゝめ基礎_banner-Drop

食品ロスの基礎知識

まずは、社会問題のひとつである食品ロスの概要を3つのポイントで整理しましょう。

  1. 飲食、小売店、食品メーカー、卸売店、一般家庭で捨てられる食品を含む
  2. 日本の食品ロス量は年間643万トン(2016年)
  3. SDGsの目標12にフードロス削減が掲げられている

以上の3点を踏まえて、もう少し詳しく見ていきましょう。

食品ロスとは?

食品ロスは、本来食べられるのになんらかの理由で捨てられてしまう食品のことを指します。

消費者庁が発表した「食品ロス削減関係参考資料(2019年11月29日版)」によると2016年に日本で発生した年間食品ロス量は643万トンでした。国民1人あたりでは年間で約51kg、月間で約4.25kgの食品ロスが発生している計算です。

食品ロスの発生量の内訳は、飲食・小売店、食品メーカー、卸売店で発生する事業系食品廃棄物等から352万トン、一般家庭で発生する家庭系食品廃棄物等から291万トンとされています。

食品ロスが発生する理由を、事業系と家庭系に分けて見ていきましょう。

事業系食品廃棄物規格外品、返品、売れ残り、食べ残し
家庭系食品廃棄物食べ残し、過剰除去、直接廃棄

参考:食品ロス削減関係参考資料|消費者庁

SDGsにおける食品ロスの位置づけ

2016年から2030年の15年間で世界各国の取り組みによって達成を目指しているSDGs(持続可能な開発目標)のなかにも、食品ロスに関する項目があります。

SDGs目標12

目標12つくる責任とつかう責任
12.32030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる。

SDGsで掲げられる持続可能な開発を考える上で、大量生産大量消費の考え方を変えていかざるを得ないでしょう。SDGsの目標12.3で定められているのは、食の分野で地球の限りある資源を有効活用しようということです。

私たちが、日常的に購入している食料は、生産から消費されるまでのあいだに多くの人手やエネルギー・水が使われています。食品ロスが発生することで、お金や資源をムダにしてしまっています。また廃棄される食品をゴミとして処理することにも、多くのエネルギーが使われているのです。

主な食品ロスへの対策

生産・流通・加工・消費と各段階で発生している食品ロスに対する代表的な取り組みをいくつか紹介します。

フードバンク

フードバンクでは、食べ物の寄付を募り福祉施設等に無料で提供しています。鮮度や味には問題がなくても、メーカーが抱える包装紙や外箱がつぶれた加工品や農家で発生する形や傷によって出荷できない野菜、家庭で買いすぎたレトルト食品・缶詰などが対象です。

フードバンクから食料が提供されることによって、福祉施設では食費が抑えられ、メーカー・農家・個人では処分費用や食品ロスのゴミの削減ができます。

サルベージパーティー

サルベージパーティーは、余った食材を持ち寄って料理して食べるイベントです。使い切れない野菜、活用しにくい調味料、賞味期限間近の加工品など、家庭では避けられやすい存在が主役になります。

プロのシェフが持ち寄られた食材で腕を振るうイベントや、持ち寄った人同士でメニューを考えて楽しく料理するイベントなど、内容はさまざまです。サルベージパーティーによって、家庭で発生する食品ロスを防ぐことにつながります。

TABETE

飲食店では、まだ食べられるのにどうしても売れ残ってしまい捨てざるを得ない料理が、発生してしまいます。TABETEは、飲食店と個人をつなぐことで、飲食店から発生する食品ロスを防ぐフードシェアリングサービスです。

飲食店で発生した食品ロスになりかねない料理をアプリ上に掲載することで、アプリ閲覧者が検索して安価で購入することができます。新聞、TVニュースなどさまざまな媒体で紹介されているサービスです。

 

食品ロスについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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【本編】タベモノガタリへのインタビューで神戸へ

今回、タベモノガタリ株式会社の竹下社長へインタビューするために訪れたのは、事務所を構える神戸市西区の木幡駅。神戸の中心地である三宮から電車やバスで小1時間ほどのところに位置し、まわりを山に囲まれたのどかな場所です。

途中、竹下さんが野菜を仕入れている畑を見学させてもらいながら、事業へのこだわりや起業の経緯、フードロス解決を目指すビジネスの未来などについて、たっぷり2時間かけてお話を聞かせてもらいました。

タベモノガタリインタビュー集合写真

写真中:竹下 友里絵さん(タベモノガタリ株式会社 代表取締役社長)
1996年兵庫県神戸市生まれ。高校2年の留学をきっかけに、「一方ではたくさん食べ物が捨てられ、一方では食べられずに死んでいる人がいる」という、世界の食のアンバランスに対する問題意識を持ちはじめた。
大学は関西学院大学総合政策学部にて国際協力を学んだ後に、神戸大学農学部へ3年次編入。1年の休学を通してビジネスを学び、大学在学中にタベモノガタリ株式会社を設立。農地で発生するフードロス削減に取り組むため、兵庫県神戸市を中心に八百屋のタケシタを運営中。

写真左:しょーじ(株式会社Drop/SDGs media 編集長)
写真右:玉木(株式会社Drop 営業担当)
※八百屋のタケシタのハッピをお借りして2人ともウキウキでした(笑)

タベモノガタリ株式会社が取り組む社会問題とビジネス

タベモノガタリインタビュー1

産地フードロスの現状と取り組む理由

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    まずは、タベモノガタリの事業について教えてください。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いまはタベモノガタリ株式会社として、八百屋のタケシタという屋号で農家さんから産地の野菜を買い取って流通させています。始めたきっかけは産地のフードロスを無くしたい想いがあったからです。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    なぜ産地だったんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いろんなところでフードロスは起きてるじゃないですか。産地だけじゃなく、レストラン・スーパー・家庭でも。
    すでに、サルベージパーティー、食育、TABETE、スーパーとフードバンクの連携とか、フードロスを解決するために、がんばっている人がいる分野は多いんです。
    「まだできてないとこどこやろ?」って考えたときに、それが産地やったんです。農家で発生している規格外野菜のロスに対する対策はまだ不十分やったんです。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    産地で発生しているロスはどれくらいなんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    産地廃棄は正確には測定されていないですね。けっこう難しい議論で「そもそも廃棄なのか?」ってのもあるじゃないですか、野菜は土にかえるし(笑)

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    たしかにせっかく作ったのに、とは思いますが、そこは難しいですね(笑)
    産地廃棄される規格外野菜は、堆肥に回されるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうですね、例えばキャベツとかが残ると畑の土に混ぜ込んでいますね。それが結構手間なので、畑にトラクターをかけるときに一気にやったりしています。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    どういう野菜が規格外野菜になるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    出荷前にちょっと傷がついてしまったり、形が規格に合わないかったり、虫食いがある野菜は、流通で買い取られないから産地で捨てるしかないんですよ。だから、産地に寄り添った流通でフードロスを解決しようと思ったんです。

解説:野菜の一般的な流通と規格外野菜

農家で育てた野菜は、主に3つの流通経路をたどって、わたしたちの食卓に届きます。

  1. JA(農業組合):主な流通経路。生産者からJAへ出荷されたあと、卸売市場で売買されるのが一般的。
  2. 直売:道の駅やマルシェなどで農家から直接売られる。売られている野菜から、購入者が野菜の良し悪しを判断する。
  3. 個人販売:1と2に比べると少数だが、農家とお客さん(個人客やレストランなど)が直接つながり野菜の売買が行われる。

規格外野菜が生まれるのはおもに1の流通。野菜の形・大きさ・傷の有無などや、加工機械に適さない大きさの野菜が、規格外野菜として出荷されず農地にとどまります。規格外野菜は、出荷する野菜と同じ質でおいしく食べれるケースが多いが、売り先が見つからず農地で処分されてしまうのです。

2の流通では、形が悪かったり、傷があったりする野菜を販売することはできますが、お客さんがその野菜を買うかどうかはわかりません。きれいな野菜と傷んだ野菜が並んでいたら、前者を選ぶのが大半の人の心理ではないでしょうか?

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    具体的にはいまどれくらいの規模でどんな流通をしているのか教えてください。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    現在は、20軒くらいの農家から野菜を仕入れて、流通させています。いまの事業は大きく3つです。

駅売りでお客さんに対面販売

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    2019年4月に神戸市営地下鉄の名谷(みょうだに)駅でやっていた販売を、2020年の1月から再開しています。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    何時頃に販売してるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いまは、14時から18時で売り切れたら終了という形でやってます。名谷駅は広いのでぶわーっていっぱい並べられるんですよ。
    だから電車が来るたびに10人くらいがレジに並ぶので、3人体制くらいで販売してます。病院帰りのおばあちゃんとかも多いです。

タベモノガタリ駅売りの様子

みつくろいセットで働く人にセット販売

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    これは、11月から新しく始めている取り組みで、オフィスや保育施設に野菜セットを届けてます。いまテスト的にスタートしたんですけど、5人〜6人の注文だったものが、10人越えて注文してくれてます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    職場に届けてくれるのは、買い物の手間がはぶけていいですね。どんなセットを販売してるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    1000円セット・2000円セットとか価格を設定して、中身は任せてもらっています。その代わり、「そのとき1番おいしい野菜を入れますよ」としてます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    旬の野菜が届くのは嬉しいですね! でも、自分で注文することを考えたら、何が届くかわからないなか料理するのは、ちょっと不安かもしれません(笑)

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    たしかに、料理が苦手な人って「何が届くかわからないから頼みにくい」って始める前は不安の声もあったんです。でも、主婦の方はスーパー行って「今日は何を作ろう・・・」と意外に選ぶストレスがあるから、そこを解消されるからいいって反応もありますよ。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    それを聞くと、子供の頃に母親から「今日なに食べたい?」って聞かれたの思い出しました! 「なんでもいい」って言ったら怒られますもんね(笑)

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうそう、そういうことです(笑)

タベモノガタリ見繕いセット

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    セットはこんな感じの一覧で、価格・セット内容・生産者の名前、食べ方を書いたものを一緒に入れています。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    これはわかりやすい!竹下さんが書いてるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いや、全然書けないです(笑)
    なのでアルバイトの方に書いてもらってます。私はひっどい字してますので(笑)

神戸のレストラン・パティスリーへの卸売

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    飲食店への卸売では、野菜だけじゃなくて、果物も一部扱ってます。
    神戸は桃・ぶどう・柿・梨、小さなものとしては、かりん・ゆずとか果物が盛んなんです。果物って、例えば桃は雨の影響でちょっと糖度が低かったり、形や重量が原因でB品が出やすいんです。
    でも、ケーキ屋さんやパン屋さんが多い神戸だからこそ、「B品でも砂糖を加えてコンポートやジャムにすればいいやん」ということで、理解してもらえる飲食店へお届けしているんです。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    果物も流通させてるんですね。流通先はこれから増やしていくんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いや、野菜の卸先のレストラン数は、今しぼっていってます。卸先のレストランで提供される料理やお店の方の要望などを把握して、さまざまな選択肢を持つことも必要なんですけど、それはもうちょっと先の展開かなと思ってて。
    いまは見繕いセットのような形で、お届けした野菜で料理ができたりサラダバーで出せるレストランにしぼっていってます。もちろんレストランさんによってこだわりはあるので、プラスアルファでちょっと変わり種がほしいとか、葉物がほしいとか、農薬なしが良いとか、相談を受けるようにはしてます。

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農家さんの嬉しい反応と仕入れる野菜へのこだわり

タベモノガタリインタビュー2

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    出荷できない野菜を廃棄していた農家さんに「その野菜を買い取る」って提案をしたときに、どんな反応がありましたか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    「こんなん売れるん!?」みたいな反応でしたよ(笑)
    「今までは売れないと思ってたものが、竹下さんのとこなら売れるってわかって、このラインはどこまで大丈夫なんかって探すのがおもしろい」とも言われます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    これまで捨てていたもの、自分たちで食べていたものが売り物になるのは、おもしろいし、きっと嬉しいでしょうね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    「竹下さんとこで売れる」とわかることで、生産者さんの思想が変化することが、大事だと思っていて。別に捨てなくて良いものを捨てていたという現状なんですよね。
    既存の流通を悪く言うつもりはないですけど、これはあかんと(規格外野菜を)弾いてたから、農家さんが売れないという観念にとらわれていて。
    でもそうじゃないんだよっていうところを知ってもらうことが、産地でのフードロスをなくす第一歩じゃないのかなと思ってます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    竹下さんの登場によって、農家さんの「当たり前」が変わると、行動が変わっていきそうですね。しかも、農家さんがそれをおもしろがってるのって、すごくいい関係!
    いま、20軒くらいの農家さんと取引があるということでしたが、仕入れる野菜はどうやって選んでるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    まずは必ず畑を訪問して、どのように作っているのか、その人の農業へのこだわりは何かを聞くようにしています。
    その後「この人から仕入れたい!」と思ったら、随時、生産者さんから野菜の写真を送ってもらって参考にしています。
    最初に、産地へ訪問しているので生産者さんによってどういう作り方をされているか、どんな野菜が得意でどんな野菜が不得意かはだいたいわかっているので、写真を見ればレストランや個人向けに売れるかどうかイメージはつくので、それで仕入れるかどうか決めています。

    あと、大前提として、自分がおいしいと思った野菜を仕入れています。
    おいしさには感動するおいしさと普通のおいしさがあるわけですよ。野菜の場合は、鮮度と農家さんの腕で決まるなと思ってて。
    産地の直売所で売られる野菜ってすごく鮮度がいいから、スーパーの野菜を普段食べてる人はおいしく感じるんです。

    でも、野菜の味がするかと言うとせえへん野菜もあります。新鮮な水を食べているだけみたいな感じがするから、わたしたちは絶対、腕がいい農家さんの野菜しか基本的に仕入れないスタンスでやっています。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    いろんな野菜を食べてきた竹下さんが言う「感動する野菜」は、ぜひ食べてみたいです! 
    農家さんによって作る野菜の得意不得意があるっていうのは、考えてみれば当たり前のことですが、考えたことなかったです。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    どんな野菜でもおいしく作れる農家さんはほんとにすごくて、ほんとに何食べてもおいしいんですよ。でも、例えば新たに農家を始めたばかりの人だと、「葉物は得意やけどそれ以外はまだ感動するおいしさじゃないな」とかあるんですよ。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    お話聞いていると、普通のおいしいと感動するおいしいを食べ比べたくなってきました(笑)
    竹下さんが感動する野菜のおいしさを知ったのはいつ頃だったんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    わたしもここ2〜3年まで野菜がこんなおいしいのを知らなかったんです。昔は、鍋料理がきらいやったんですよ。鍋って野菜が主役じゃないですか。でも「野菜おいしないし、早くシメのうどんしてや」って思ってたんです(笑)でも、おいしい野菜を一度知ると、普通のおいしさの野菜には戻れないっていうね。

    味覚が鍛えられたのは、大学3年生くらいからですかね。食の仕事をしたいなと思ったときに、自分の舌を磨かないといけないなと思って、食べたものがなんの味なのかを考えるようになったことで、すごい鍛えられたなと思いますね。
    それまでは何も考えずおいしいおいしいってあほみたいに食べてましたけど(笑)
    考えるようになると次第に、自然の味じゃないとか、調味料をなに使ってるとかがわかるようになってきましたね。

お客さまへ届ける流通のこだわり

タベモノガタリインタビュー3

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    農家さんが廃棄していた感動するおいしさの野菜を届けることをされていますが、その届ける・流通について、なにかこだわっていることはありますか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    絶対に自社便で届けるっていうのはこだわっていますね。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    それはなぜですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    まずは、品質を守る点ですね。他に頼んで、クーラーに近いところに置かれたり、配送中のゆれがひどかったりすると、野菜が悪くなってしまうことがなきにしもあらずで。だから自分で運ぶっていうのはもちろんなんです。
    あとは他の人が運ぶことで、ただの野菜となってしまうんじゃないかって思ってて。

    フードロスをなくすための1番の根底に必要なのって、人間関係やと思ってるんです。
    例えば普段、田中さんが作った野菜を買っていて、ウチの食卓は田中さんで出来ているんだっていう認識があるとします。もし田中さんの野菜が自然災害で傷ついちゃったときに「こういう野菜やけど買ってくれへん?」って田中さんから相談されたら、いつもお世話になってるから全然買うよっていうやり取りも生まれるなって。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    たしかにそういう人間関係があれば、田中さんの野菜をいつも以上に買い取って、友達や知り合いに配るわ! っていうことにもなりそうですね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうなんですよ! 逆に農家さんも「いつも◯◯さんが食べてくれてる」ってわかってれば、「あの人のためにもっとがんばって野菜を作ろう」ってなる。
    表面的に傷物の野菜を流通させるのって、すごい表層的な課題解決やと思ってて、根底は、農家さんとお客さんに人間関係がちゃんとあるかっていうところ。
    でもかといって、いち家庭が10人の農家さんと顔見知りで常に仲良くてっていうのは、まぁ不可能じゃないですか。そこで両者の媒介者としてうち(タベモノガタリ)がいる。

    「竹下さんとこはこういう農家さんと取引してるから安心やし、竹下さんのところで関係が出来てたら傷物の野菜でも全然買うよ」ってお客さんが考えるかもしれない。
    だから、野菜がただの物質になってはいけなくて、ちゃんと想いをのせながら運ばないといけないし、できるだけ対面で販売するっていうのは、今後マストにしていかなあかんなって思ってます。そういう意味で、お客さんと直接やり取りできる駅売りは重要やなと。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    野菜を中心にして、住んでいる地域の近い農家さんとお客さんのコミュニティ形成みたいな役割を流通で担っていくわけですね。すごく地産地消だ。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    まさに、そうですね。日常的にある程度の近い距離感でお互いを知り合える関係じゃないと、想い合えないかなと思うので、結果的に地産地消になったっていう感じですね。
    最終的な仕事としては、流通をベースにしながらもコミュニティマネジャーと言うかデザインみたいな役割になるんじゃないかなと思ってます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    切り口は食であっても、届ける際に顔の見える関係であれば、いろんな情報がコミュニケーションの中で得られますもんね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    例えば、去年の4月に駅売りしてるとき、自然と顔見知りの人ができるんですよね。「おー、今日も頑張ってるなぁ」って声をかけてくれたり「寒いやろ」ってカイロ持ってきてくれたりするんですよ。

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竹下さんの生い立ちとタベモノガタリ創業話

ここまで読んで頂ければ、タベモノガタリ株式会社が神戸で取り組む事業によって、少しずつ農家さんの価値観が変わり、食卓で感動するおいしさの野菜を味わう人が増えてきている現状をわかって頂けたでしょう。

次に、竹下さんがどんな人生を歩んでフードロスに関心を持ち、起業にいたったのか。これまでのことについて聞いてみました。

やりたいことに真っ直ぐで世界に目が向き始めた中学時代

タベモノガタリインタビュー4

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    子供のころに、いまの仕事をするきっかけになるような経験はありましたか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いまは社会課題のひとつとしてフードロスに取り組んでますが、そもそもは国際協力に興味を持ったことがきっかけでしたね。
    覚えている限りでは、中学の英語の授業が最初でした。英語の教科書って国際協力系の内容が多くないですか? 環境破壊、紛争、ポバティとか。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    たしかに。ケンとかトムが出てきてね(笑)

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうそう、ケンおったわ(笑)
    それで「こんな世界があるんや」って国際協力に興味を持って、そこから本とか買って読んだりした記憶がありますね。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    興味を持って、自発的に学んでいったんですね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    思ったことはやらないと気がすまない人なので(笑)
    「竹下さんみたいな人ってどうやって育つんですか?」って、最近よく聞かれるんです。それでおかんに、私を育てるときに意識したことを聞いてみたんです。
    そしたら、「やりたいことをやらせとった。基本止めなかった」と。

    だから、小学生のときは毎日違う習い事してましたよ、テニス、絵画、習字、料理教室、英語、水泳、ゴルフとかいろんなことを。
    「家にいると暇やわ〜、どっか行きたい」が口癖で(笑)

食に対して大きなカルチャーショックを受けた高校時代の留学生活

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    国際協力への興味は高校生になっても変わらなかったんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうですね、将来は国連やJICAで働きたいと思うようになってました。英語が好きだったのと、熱中していたソフトテニスをがんばりたくて、その両方ができる高校を選びました。
    ただ、事情があって部活は途中で辞めて、高校2年でカナダに留学へ行きましたね。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    留学はどれくらいの期間だったんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    10ヶ月くらいです。ホームステイをしながら現地校の生徒として、カナダ人と中国人と一緒に通ってました。
    いま思うと初海外だったので「よう行ったな」と思います。帰りたくて仕方がなくて、「帰りたい、帰りたい、あと半年や〜」とか言ってましたよ(笑)

タベモノガタリインタビュー5

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    それはご両親もよく送り出しましたね(笑)
    プロフィールに書かれていましたが、この留学が食へ問題意識を持つきっかけだったんですよね?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    ホームステイの生活を通して、「食べ物への価値観が全然違うねんな」と思ったんですよね。10ヶ月で2つ家庭でホームステイをしました。最初の家は、料理好きなママがいて、ケチなところもあったので、家で作った料理はちゃんと全部食べる家庭だったんです。
    だから、「米粒一つ残したらあかん」って育てられてきた価値観との違いは感じなかったんですが、次の家で出る食べ物がヤバくて。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    どうヤバかったんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    焼いた肉はカチカチ、ゆでたパスタに粉チーズをかけるだけ。それで家族が「もういらん」と食べ残したものを捨ててるのをよく見たんですよ。これが問題意識のきっかけになってますね。
    この家の人も外食すると、残ったものはドギーバックで持って帰って食べるんですよね。だからおいしい料理は食べるんやと思って。だから、家で作ったものはまずくて、一日置いたらもう食べられへんから捨ててたのかなと。

国際協力・農業・ビジネスと起業につながる経験を積んだ大学時代

高校卒業後に進学したのは、関西学院大学の総合政策学部。国連での勤務経験がある先生が在籍し、国際協力について広く学べる学部ではあったが、竹下さんが希望する食に関する分野が学べる環境ではなかったそうです。

そこで見つけたのが神戸大学の農学部。3年生から編入し、自身のやりたいことができる環境に身を置くことで、農家さんへの理解を深める経験を積んだエピソードを伺いました。

タベモノガタリインタビュー6

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    在学中に授業の一環で農場実習に参加したんです。そこでの学びが結構大きくて。小学校の時にする農業体験って、さつまいも掘りや稲刈りとか楽しいところだけじゃないですか。でも農場実習はめっちゃしんどくて。
    畜産、果樹、米作りと、それぞれ細々した大変な仕事を経験したんです。大学の意図としては、機械化って素晴らしいということを伝えるために、例えば稲の手刈り、不良な米の選別をひとつひとつ手作業でさせられたんですよ(笑)
    いまは機械にかけると短時間でざーっと不良米を自動的にはじいてくれるんですけどね(笑)

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    それはすごい大変な経験ですね(笑)

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    こういう実習の経験を通して「農家ってめっちゃ偉大なんや」っていうのを感じました。小学校で経験する楽しい部分だけじゃなく、しんどいことを経験することが1番の食育になる、食に興味を持つことにつながると思ったんです。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    たしかにそれを知ると農家や食へのリスペクトにつながりますね。
    編入後は1年間の休学をして、ビジネスを学んだんですよね? この時すでに起業は考えていたんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    起業に興味を持ったのは、その前の大学3年の夏でした。所属していた学生団体のメンバーとして起業家が登壇するイベントでスタッフをしたんです。そこで、初めて起業家と出会って「起業って結構おもろいな。自分があそこ(登壇している起業家の席)に座りたい。なんか悔しい」って思ったんです。
    でもすぐ起業するためのアイデアがあるわけじゃないし、ビジネスも知りませんでした。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    それでインターンをすることにしたわけですね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうですね。3年生の12月くらいに休学を決めて、フードロスに関わるインターンができる企業を探しました。
    それで見つけたのが、デイブレイクという東京のベンチャー企業です。

解説:デイブレイク株式会社とは?

2013年設立の企業。特殊冷凍テクノロジー導入支援、フローズンフルーツの販売、インターネットテクノロジーを用いて食品ロスを無くすことによって、世界の飢餓問題解決を目指している。
公式Webサイト

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    見つけたときに、「あ、ここめっちゃいきたい」って直感的に思って、おかんに「上京したい」って話をしたら、神戸で生まれ育ったおかんから「休学はいいけど、東京はあかん。あぶないから!」って。「おかんは、東京をなんやと思ってるんや」と(笑)
    2ヶ月位ずっと話したけど、納得はしてもらえませんでした。

    「これはあかんわ」と思って、これまで学生団体の活動で時々東京に行くことがあったので、その用事でいってきますって伝えて東京へ行き、デイブレイクの面接受けて、合格して、家も仮契約して、神戸に帰ってきました。

    インターンの合格通知と家の仮契約書を両親に見せて報告したら、母がブチギレて1ヶ月位は口を聞いてくれずで…。父は理解してくれたので、なんとかなりましたが、半年くらいは全然母に連絡せずでしたね。
    でも徐々に和解して、いまとなっては仲良く応援してくれてます。あのときは大変でしたね…。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    なかなかタフなインターンの幕開けだったんですね。
    デイブレイクではどんな経験ができたんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    デイブレイクでは、たくさん経験をさせてもらいました。
    新規事業に携わらせてもらったり、大手企業との協働や登壇資料作成、社長と会社のコアバリュー・行動指針の策定など会社としての在り方を一緒に考えさせてもらったりもしました。
    そのなかで、世の中にないものを作り出そうとしている瞬間が一番楽しいことに気づいたんですよね。
    でも、やりたいことをビジネスとして形にするのが難しいこともわかりました。これまでの経験から「それなりにできるんじゃないか」って思ってた自分の甘さにも気づいたデイブレイクでの経験でした。

タベモノガタリインタビュー7

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    東京で、がっつりとビジネス経験ができて、大切な気づきもあったわけですね。
    その後、復学まではどう過ごしたんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    復学までもう少し時間があったので、京都にある産直の会社、株式会社坂ノ途中でもインターンとして働きました。

解説:株式会社坂ノ途中とは?

「100年先もつづく、農業を。」を掲げる2009年設立にした京都の企業。無農薬・無化学肥料・有機栽培など、環境負荷の小さな農業の普及を目指し、野菜の通販宅配・農業を未来につなげるためのさまざまな活動を行っている。
公式Webサイト

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    坂ノ途中では、海外事業部の仕事を担当させてもらいました。
    印象的だったのが、当時20代半ばの先輩社員のラオス出張に同行したことです。ラオスはコーヒーの輸入元なんです。

    コーヒーを輸入して日本で売ることは、当時の私にとってはすごい難しそうで壮大な感じだったんですが、先輩社員と一緒に現地をまわっていると、コーヒー農園を訪問して、農家さんとワークショップして、コーヒーを買い付けて、輸出入する人と相談して日本に持ってきて、ブランディングして売るっていう全体像がわかったんです。

    そこで「新規事業ってこうやって作るんやな」って実感しました。で、なぜか「自分もできそう」って思ったんですよ(笑)
    もちろん難しさはありますけど、事業の流れがわかったからできそうって思ったんです。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    漠然としたことしか知らなかったところから、順を追って全体像や一連の流れがわかるとイメージしやすくなりますよね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    自分なりに事業化が見えてから、「自分はなにをやりたいんやろ?」っていうのを考え始めました。だから、初めて「私、起業すると思います」って話した相手は、その先輩社員だったんです。

タベモノガタリの結成とビジネスコンテスト受賞で起業へ

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    ラオスでの経験から起業を現実的に意識するようになって、その後はタベモノガタリとして起業するまでどう進んでいったんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    ラオスから帰国前に4日間立ち寄ったタイでさまざまな食の現場を見ながら、ビジネスプランを考え始めました。
    帰国後に、「考えたプランを実行するぞ!」と、仲間を集めて、タベモノガタリっていう団体を作って、3人で活動し始めましたね。
    3人で仕入れた果物をイベント的に販売してました。でも当時は、学生団体の活動範囲って感じで、事業ぽくなくみんなボランティアで活動していました。
    そのなかで、資金集めのためにビジコンに出たいなと思って、ユヌス&ユー ソーシャルビジネスデザインコンテストに参加しました。

解説:ユヌス&ユー ソーシャルビジネスコンテストとは?

グラミン銀行創設者であり、ノーベル平和賞受賞者であるバングラデシュのムハマド・ユヌス博士が提唱するソーシャル・ビジネスを具現化するために、日本で唯一のユヌスセンター である九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)が開催するコンテスト。
公式Webサイト

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    選考の中で、半年くらいかけて東京でのワークショップに神戸から通って、メンターの方と一緒にビジネスプランをブラッシュアップしていきました。
    その結果、全国から学生・一般合わせて約140チーム参加したこのコンテストで、企業賞を3つ頂いて、そのなかのひとつがボーダレスジャパン賞でした。

解説:株式会社ボーダレス・ジャパンとは?

2007年創業のソーシャルビジネス企業。多くの社会問題を解決するために社会起業家のプラットフォームを提供し、独自の恩送り経営により、次々と新たな社会起業家を成功に導いている。
公式Webサイト

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    ボーダレス・ジャパン賞の内容が、ボーダレスグループとして起業できる権利だったんです。自力で起業するのか、ボーダレスグループとして事業を行うのか、相当悩みましたが、ボーダレス・ジャパンと協議して、ボーダレス・ジャパンにジョインして2019年に起業しました。

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事業を通して考える程よい食材選びのゆるさとは?

タベモノガタリインタビュー8

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    竹下さんは、野菜の生産者である農家さんと、その野菜を食べる購入者であるお客さんのあいだで、流通屋さんとして日々両者と関わる中で、どんなことを考えてるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いろいろ考えていますが、ひとつは時代に沿うことは大事やなってことです。
    一度立ち止まって日々食べるものを考えようっていうスローフードや地産地消系の考えって、明らかにいまの日本と逆行していると思っていて。
    忙しくて時間がない事実の前で、それは無理じゃないですか。

    だから、規格外野菜の流通をするなかで目指しているのは、毎日の食卓に並ぶ食材の半分が地元産ならいいなというゆるさなんです。
    全部地元産っていうとなんかしんどいじゃないですか。でも半分くらいならみんながんばれるし、もはやおいしいから取り入れられるんじゃないかって。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    たしかに、なるべく鮮度や質の良いものを食べたいけど、それを買いに行く時間がなかなか取れなかったり、値段が高くて手が出しにくかったり、そもそもどこに売ってるんやろ? っていうのはありますね。だから、半分でいいって考えるとちょっと肩の力が抜けるような。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    日常生活の中で、無理なく自然の流れで実践するのがすごい大事なやと。
    忙しくてコンビニでしか買えなければそれでいいやんと思うし、でもそのなかで、晩ごはんの半分くらいはちょっとええもん買おう、おいしい野菜買おうみたいなのがいいなと。

    これくらいのゆるさで実践する人が増えれば社会は変わると思います。
    スローフードを100%実践する人が10人より、食材の半分はこだわっている人が100人のほうがインパクトが大きいっていうね。
    こういう選択をできる人が、これからかっこいいと思います。「晩ごはんの半分だけでもこだわればおいしいし豊かやのに、なんでみんなそうしないんや」って思ってたんですけど、それは買う場所の選択肢がないからだってわかりました。だからその選択肢の1つになれればいいなと思います。

現在のタベモノガタリの課題について

タベモノガタリインタビュー9

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    現在の事業の課題について教えてください。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    事務所の周りで仕入れさせてもらっている農家さんは増えてきていますが、仕入れる野菜の量に対して流通量はまだ足りていないと思ってて。
    買ってくれる人がどのあたりにいるかわかってきたけど、いまはまだ流通や販売の仕組がうまくできていない状況です。
    自社便だけだと運べる量の限界もあってうちのスタッフに無茶な流通はさせたくないし、売り方も、駅売りがいいのか、見繕いセットがいいのか、そこは模索してきましたが、いま(2020年2月時点)は駅売りに力を入れている状況ですね。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    うまく流通や販売が機能していくまでもう少し、という感じなんですね。
    ちなみに、冒頭の事業紹介でお話いただいた、レストランやパティスリーへの卸売を減らしていくのはなぜなんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    2019年の7月くらいから受発注のスタイルでスタートした卸売だったんですが、これは産地に寄り添った形じゃなかったんです。
    受発注っていうのは、例えばレストランから「明後日大根5本ほしいです」って注文を受けて、生産者さんに「5本いけますか?」と相談するんです。
    でも、都合よく必要なだけ野菜を確保できるわけではもちろんなくて。

    ただ、時には「注文きてるからなんとか・・」って感じのやり取りもあって。
    とはいえ、うちとしては生産者に寄り添いたいので、レストランに断りをいれるんですけど、それはそれでレストランも大変じゃないですか。
    こういう微妙な感じが続いていて、大変であかんなという。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    卸売は、生産者・流通・注文者のみんなが微妙にストレスを感じながらだったんですね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    なので、2020年1月末で野菜の受発注スタイルはやめる予定(果物は別)です。そこからは見繕いセットみたいな形で、曜日と金額を指定して野菜のセットを注文してくれるレストランとは一緒にやろうかなと思ってます。

    例えば、神戸にあるマザームーンっていうカフェは、サラダバーとかデリで野菜を使っているので、使い方がわかっていればサラダで出せる仕入れ可能な野菜を選んで、セットとして出荷できるんです。
    あと、規格外品の提案が受発注スタイルだとしにくいのもあったんです。でもセット売りなら、例えば「B品出たら入れていいですか?」と事前にレストランへ確認しておけば、「切ったら使えると思います」って伝えた上でセットに含めることができるんですよね。

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フードロス対策の推進・食育・摂食障害・島づくりと広がる未来

タベモノガタリインタビュー10

現在・過去と伺ってきたインタビューの最後に、竹下さんの描く未来について聞いてみました。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    タベモノガタリ、八百屋のタケシタとして考えている今後について教えてください。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    直近では、産地のフードロスに対して、早ければ2020年内に食品加工はやりたいなと思ってます。具体的には一次加工です。
    例えば、トマトは雨を浴び過ぎると、一気に水分を吸ってしまってひびわれちゃうんです。
    こうなると、その日のうちに加工しないとカビが生えてしまって使えなくなっちゃうんです。

    こういう状況に対応するために、自社の加工場を持って、トマトソースとかピューレにして冷凍加工すれば、ロスを出さずに済むようになります。
    野菜をそのまま仕入れて流通させるだけじゃなく、こういう動きも産地のフードロスに対して必要だなと。なので、八百屋と加工場のセットでいろいろ展開していきたいですね。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    新鮮な野菜だけじゃなくて、献立に役立つ加工品も合わせて買えると、購入者としては嬉しいですね!
    いまの事業のゴールは設定しているんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    3年から5年以内でやりきりたいなと思ってます。いまの事業モデル的に、産地を中心とした事業ができなくて、どちらかというと売り先・消費地がベースの展開しかできないので、全国展開したくても限界はあるんです。
    なので、他のところにも展開したい想いはあるんですが、いま想定している範囲でやり切れたら満足できそうかなと思ってます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    竹下さんのなかでは明確な期限と範囲があるんですね。そのあとのことはなにか考えてるんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いろいろあって、人生足りないんですよね(笑)
    ひとつは食育です。食育に関しては、生産現場に答えがあると思ってて、別に畑じゃなくて漁港とかでもいいですけど。
    なので、講義っぽい食育じゃなくて、畑だったらうねたてたり、大変な作業をさせたいっていう。うねたてるのってめっちゃ大変なですよ、腰痛いし(笑)

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    そうなんですね! 映像で見ると農家さんがくわを使って軽くやってるように見えるけど違うんですね(笑)

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    そうそう、上手い人がやるからこそ簡単に見えるんですよ(笑)
    わたしの食育はこういう現場で体験がメインになると思います。

タベモノガタリインタビュー11

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    あと食関係では摂食障害にすごく興味があって。

解説:摂食障害とは?

摂食障害は食行動を中心にいろいろな問題があらわれる病気。摂食障害は主に神経性やせ症・神経性過食症・過食性障害のことを指す。
参考:摂食障害について|摂食障害情報ポータルサイト

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いま摂食障害の人は8万人くらいいるみたいで。食べることに対して苦しんでるのってほんとしんどいじゃないですか。
    いまやっていることとは、ぜんぜん違うことですけど、興味があるのでやりたいなと思ってます

タベモノガタリインタビュー12

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    あとは、タイでも事業したいなと。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    竹下さんが事業プランを考え始めた場所でもありますね。なんでまたタイなんですか?

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    いまは、フードロスに対する事業をやってますが、そもそも(中学時代に)国際協力に興味を持ったところから始まっているので、途上国に行かないと自分の中では筋が通ってないなと思ってて。
    で、それがなんかタイやったんですよね。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    フードロスに限らず、摂食障害とタイ、いろいろ描いている未来があるんですね。

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    あと、いまなんとなく思っている未来であるのは、お金のない島を作ることです。
    豊かさってなんやろ?って思ってて、難しいじゃないですか、豊かさって。
    豊かさについて考えていると、お金の観念がやっぱり大きいなと思うんですけど、お金があるから、ないからで豊かさが決まるわけじゃないし。
    そういう考えから、お金を一度取っ払ってすべて物々交換で完結する島を作りたくて。都会で働く人がぷらっと遊びに行ける島を持ちたいなと思ってます。

  • しょーじだいき

    SDGs media 編集長

    こんなにやりたいことが多いと、そりゃ人生足りないと感じてしまいますね(笑)
    今日は長い時間ありがとうございました。また今度、八百屋のタケシタの野菜を食べたいです!

  • 竹下友里絵

    タベモノガタリ株式会社

    こちらこそありがとうございました。
    ぜひ、またお店に遊びに来てください!

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取材後記

正直に言います。
今回の取材先として、タベモノガタリ株式会社を紹介してもらい、「規格外野菜」と聞いて浮かんだイメージは「普通じゃない変な感じ。加熱調理しないといけない野菜」などでした。
しかし、今回のインタビューを最後まで読んでいただいた方には、このイメージは大きな間違いだったことがわかると思います。(竹下さんすみませんでした…。)

「タピる」「ONE TEAM」「闇営業」「保育園落ちた日本死ね」
これらは、近年世間で認知された言葉です。ある現象や状態に名称をつけることで、使いやすくなったことが、世間で広まった理由の1つでしょう。
背景に複雑な事情があっても、キャッチーな言葉として表現されることで、そもそもの根っこの部分には目が向きにくくなることは否めません。

「出荷前にちょっと傷がついてしまったり、形が規格に合わなかったり、虫食いがある野菜は、流通で買い取られないから産地で捨てるしかないんですよ」

竹下さんの言葉からわかるように、普通に流通される野菜と規格外野菜の間には、一般購入者の目ではわからない、ちょっとした違いしかないケースも多いのです。農家さんが丹精込めて育てた野菜であっても、この些細な違いが統計に残らない産地でのフードロスを生んでしまっています。

このフードロス問題の本質に目を向けて、流通する野菜と遜色がない「感動するおいしさの規格外野菜」の魅力を「形はワルイが、味はイイ。」と表現し、農家さんと購入者のあいだに立って両者の価値観を変えたり、関係を築いたりしている竹下さん。

安心、安全、そしておいしい食を求めるわたしたちにとって、信頼できる流通屋さんが仕入れてくれる野菜は、それだけで最高のごちそうになるでしょう。

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