傘のシェアリング「アイカサ」で雨の日の常識が変わる?
「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」の情報を発信するSDGs mediaへようこそ! 記事編集を担当している株式会社Dropのしょーじです。
「あ、カサ忘れた」「うわー、雨降ってるよ。コンビニでカサ買うか…」
こんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか? 日に日に増える家の傘や、道路に捨てられた壊れたビニール傘を見ると、罪悪感を筆者は感じてしまいます。
総務省によると日本全国の平均降水日数は117日(2018年)で、だいたい3日1度の頻度で雨が降っています。「カサを持ち歩きたくないけど、雨に濡れるのも嫌だな」という、ストレスを解消してくれるサービスが、2018年12月から始まった傘のシェアリングサービス『アイカサ』です。
今回は、アイカサを開発した株式会社Nature Innovation Groupの古堅さんに、アイカサのことや会社について聞かせてもらったインタビューをお届けします。
プロフィール
古堅 哲さん/株式会社Nature Innovation Group 営業顧問
沖縄県の本島で生まれ育ち、19歳で上海に留学。発展途上であった中国を肌で感じ、経営者との人脈を広げる。帰国後営業職に携わり、通信商社にて勤める。2017年株式会社SuperBuzzを立ち上げ、現在アイカサの営業顧問として携わる。
今回の記事はこんな人にオススメの内容です
- 傘のシェアリングに興味がある
- 傘のシェアリングが生む効果を知りたい
- アイカサを愛用している
目次
傘のシェアリングサービス「アイカサ」とは?
インタビュー内容の前に、まずはアイカサの概要について見ていきましょう。もう知っているという方は、読み飛ばしてインタビュー本文へどうぞ。
アイカサは、1日70円または月額280円で傘がレンタルできるサービスです。
アイカサのレンタル方法
- アイカサの公式LINEアカウントをフォローする
- 傘のシェアスポットの場所と設置本数をチェックする
- 傘のシェアスポットでQRコードを読み取って傘を借りる
- 使い終わったら傘シェアスポットでQRコードを読み取って返却する
スポットは、2020年5月時点で関東(東京・神奈川・埼玉・茨城)、福岡、岡山に約900か所あります。登録ユーザー数は約10万人です。アイカサを利用すれば、急な雨でも傘をわざわざ購入する必要がありません。
登録者は、25歳〜29歳の男女が最も多いものの、50代以上の登録者も全体の10%を占めており、世代を問わず利用ニーズがあることが読み取れます。
コンビニなどで買えるビニール傘は、年間8,000万本が消費され、そのほとんどがゴミになっています。ビニールのゴミ問題は、レジ袋やストローなどでも語られている身近な社会問題です。
アイカサは、『傘を買う文化から借りる文化』とすることで、この社会問題解決を目指しています。
利用者からはポジティブなクチコミ、駅への設置の声も
アイカサはローンチしてから約1年半で、設置場所や利用者がどんどん増えているんですね。利用しているユーザーさんの反応はどんなものが多いですか?
手前味噌ですけど、めっちゃ喜んでもらっていますね。Twitterに良い感想をガンガンあげて頂けてます。
例えば、都心部の主要な駅だけでなく、西武新宿線なら田無駅や西武柳沢駅など、すべての駅に設置することで、ユーザーさんが「なんでうちの駅にもアイカサあるの!?すごい!!」と写真を撮ってSNSに喜びや驚きと一緒にアップしてもらえていますね。
#アイカサ
— コウズマ ユウタ (@kozumayuta) October 18, 2019
初めて使ったけど、簡単だし便利だし、天神界隈とかはいいなー。慌てて傘買うより、経済的だし、傘を無駄にもしないし。 pic.twitter.com/lz8MQNwpUa
■傘のシェアリングサービス
— かず⛅終活カウンセラー????✨ (@kazuhiro_m) October 10, 2019
このところ仕事が忙しく、これから帰宅です。
外に出ると雨が…
しまった!傘を持ってきていない!(*T^T)
すると、駅で大量の傘を発見っ!!
なんと、1回70円で傘が借りられるようです!✨#アイカサ
初めて利用してみます!????
最近はビニール傘も高いので助かる♪???? pic.twitter.com/8TcZs3Swn4
《アイカサ使ってみた》
— Yo! Hey! 下駄旅 (@yo_hey_360) August 15, 2019
画期的すぎる。
▫️驚愕の1日《70円》
▫️LINEで簡単登録(まじで秒)
▫️使用・返却はQR読み取るだけ
▫️LINEpayで支払いOK
普段傘持ち歩かない自分にとって
キャッシュレスな自分にとって
神すぎるサービス☺️
もっと各地に広まれー!#アイカサ pic.twitter.com/SACsTmnRzW
新宿雨が降ってきたので、西武新宿駅の傘シェアサービス #アイカサ がほとんどなくなっていた。 pic.twitter.com/YVuxlhSUOw
— さえき (@saekidog) October 6, 2019
なんと、近所の駅で #アイカサ 発見❗️傘の #シェアリングサービス ですよ。こういうおニューなサービスとは縁遠い北多摩地域なのでちょっとびっくりしました。調べたら西武新宿線はすべての駅に設置されたみたいです。 pic.twitter.com/ctZ8IBBUoM
— わのわ@ゼロウェイスト修行中 (@KWanowanowa) September 25, 2019
主な設置場所になっている駅の担当者さんからは、どんな声を聞きますか?
駅に直接、嬉しい声が届いていると担当者の方から伺ってます。
「シェアリングサービスは環境にもいいし、今まで雨が降ったら駅の近くにコンビニがないから、濡れて帰っていたけど、アイカサでもうその心配がなくなりました。ありがとうございます」
あとは、某沿線の一部の駅に傘のシェアスポットを設定して、拡大に向けて動いている状況のときは、「なんで◯◯駅まで設置されてるのに、(隣の)△△駅にはないだ!」なんて問い合わせも、駅に寄せられていました。
駅の担当者からは「古堅さんが仕込んで問い合わせ送ってませんか?(笑)」なんて言われましたよ(笑)
そんなユーザーさんの声も受けて、鉄道会社さんの沿線での設置がどんどん広がっていきましたね。
ユーザーさんの声でどんどん広がっているのは、めちゃくちゃ嬉しいことですね。
ちなみに、SDGs media ではSDGsに関する情報を発信しているんですが、駅の担当者さんなど仕事で出会う方から、SDGsの話題が出ることはありますか?
よく出ますね。SDGsは、世界的に動いていることなので皆さん関心は強いですが、じゃあ具体的にどう始めるかというところで、特に三次産業の方は取り組みにくいという声も聞きます。
なので、アイカサの設置によってビニール傘のゴミ処分が減る効果があることをお伝えしています。そのなかで小田急様は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に沿って、沿線の利便性だけでなく環境に対する取り組みを行っているとプレスリリースを出した例があります。
地道なメンテナンスで利用環境を整備
アイカサの仕組みを見ていて1つ疑問に思ったのが、返却のルールなんです。どのシェアスポットでも返却が可能なのであれば、場所によって傘の本数がかたよったりしないんですか?
かたよりは今の時点でほとんどありませんね。
傘は、1スポットだいたい15~20本くらい置いているんですが、利用データから、借りる人が多いスポット、返す人が多いスポットがわかるので、特徴に合わせて設置本数がかたよらないよう事前に本数を調整しています。
あと、スポットの看板や傘立ての掃除やメンテナンスを兼ねて定期的に点検をしているので、その時にも本数を調整していますよ。
そこは、人的リソースをかけてケアされているんですね。それなら、いつでもスムーズに気持ちよく利用できそう!
新プロダクトで使い心地がリニューアル
5月11日に会見をされていましたが、アイカサのプロダクトが新しくなるんですよね?
そうなんです。これまでのアイカサの傘には、ダイヤルロックがついました。そのロックを解除するために、スマホでレンタル手続き後に表示させる暗証番号を使ってもらっていたんです。
それを今回、刷新しました。傘につけていたロック機能を、傘立てに移したんです。
傘立てのロック解除には、スマホアプリで借りる手続きをしてもらってから、傘立てにスマホをかざしてもらいます。イメージとしては、駅の改札でICカードをかざして通るような感じです。
なるほど、もともと楽だったものがさらに簡単になったんですね!すごい!!
これまではLINEアプリで貸し出しをしていましたが、アイカサ専用アプリで貸し借りができるようになります。より簡単により使いやすく「傘の利用」を目的に設計したので、皆様によりスムーズにお使いいただけるのかなと思ってます。
34歳で肩書が『営業顧問』な理由
アイカサさんはスタートアップ企業ということですが、古堅さんはアイカサの立ち上げ初期から働かれているんですか?
いえ、アイカサでは5番目の入社でした。代表の丸川と知り合いで、アイカサのサービスがローンチして1か月後の2019年1月ごろに一緒にやらないかということでお話を頂きました。ただそのときは、自分で会社を経営していたので業務委託という形だったんです。
最初から専業というわけではなかったんですね。その後、社員として働くようになったのはどんな経緯からだったんですか?
アイカサのプロダクトにほれ込んだことが理由の1つですね。利便性があって環境にも良いプロダクトは、あまりないなと。会社で掲げているように、本当に世界を変える力があるなと思ったんですよ。
もう1つは、メンバーがもう本当にいいんですよ!!
最高のメンバーがそろっていて、みんなで一心不乱に世の中を変えるためにハードワークしているのが、もうたまらなかったので正式にジョインしました。そういう経緯での入社だったんですね。
名刺を見て気になっていたんですが、肩書が『営業顧問』なのもその当たりが関係しているんですか?
おっしゃるとおりですね。最初に業務委託でアイカサに加わったときの肩書だった『営業顧問』がそのまま残っている形です。個人的にもネタになるのでいいなと思っているので、まだまだ変える気はないですね(笑)
コロナ禍にも柔軟な対応を実施
次は、会社についてお聞きしたいのですが、いまは何人くらいで規模なんですか?
いまメンバーは20名程度で、25歳以下の人が多いです。私は長老と呼ばれています(笑)
その呼ばれ方で関係性の良さがわかりますね(笑)メンバーの共通点や特徴はありますか?
自分たちが思い描く未来にはまだ遠いので、「実現するためにどうすればいいのか?」っていうアイデアがどんどん出てくるのが特徴ですね。
そのなかで最近出てきたのが、アイカサスポットをアルコール消毒スポットにするというアイデアです。これは、外に出ないと利用できないアイカサをコロナによる外出自粛のなかで、どうすればいいのか話し合うなかで生まれました。
医療従事者、役所や銀行などで働く出社しないといけない方に役立ててもらうために、4月18日から首都圏の駅を中心に消毒用のアルコールを設置はじめました。
これは、社会課題を解決したい想いで活動しているアイカサだからこそ、新たな社会問題に対して自分事で考えて動くことで、社会に対してだけでなくビジネスとしても成り立つように収益を上げることを目指していけるんだと思います。
アイカサのこれからと目指す未来
最後に、これからのことについて伺いたいのですが、これまで設置されていなかった関西エリアにもアイカサのスポットができるんですよね?
そうですね、コロナの影響で不透明な部分もありますが、6月中に神戸、7月上旬に奈良、8月中に大阪、その後、8月〜9月に京都と設置していく予定です。9月の秋雨前線が来る頃には、関西でもほぼすべての鉄道会社さんの主要な駅に設置できるよう調整しますので、楽しみにしててください。
あとは、まだ表には出せませんが、数社の鉄道会社さんとも設置に向けて話をしている状況です。
来年か再来年には、傘のシェアリングが当たり前になって、皆さんが気持ちよくアイカサを使うような社会にさせないといけないなと思っています。
関西に住んでいるぼくらも、秋ごろにはアイカサが使えるようになるんですね。楽しみです!
アイカサでは、ビニール傘に関する社会問題解決を目指されていると思いますが、そのゴールやその次の取り組みなどは考えていらっしゃいますか?
「100年続く雨の日のインフラを」と掲げて、雨の日には傘のシェアが行われる社会を作り出そうと、日々アイカサを広める活動をしてます。
将来的に、ユーザーさんの数がいまの10万人から100万人、1,000万人となれば、傘を借りる文化が当たり前になるなと考えています。ただ、具体的にと言うのはまだまだこれからですね。
なるほど、規模が大きくなると、さまざまな取り組みを広められそうですね。
いまスタートアップやベンチャーでは、サービス名がそのまま社名になっている企業も多いですが、会社名の「Nature Innovation Group」にはどんな想いが込められているんですか?
会社名をアイカサではなく、Nature Innovation Group としているのは、まずアイカサで傘の社会問題をソリューションしたいですけど、その後にまだ残っているさまざまな社会問題を解決していきたいという気持ちからですね。
素敵ですね! 弊社Dropでも社会課題に対するビジネスを行っているので、なにかご一緒できる機会があれば、ぜひよろしくお願いします。本日はインタビューありがとうございました。
こちらこそ、よろしくお願いします。ありがとうございました。
アイカサとSDGsが気になった方はこちら
インタビューを読んで、アイカサが気になった方はこちらをご覧ください。
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