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【大学のSDGs事例】オーストラリア主要大学のSDGsの取り組み

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こんにちは!オーストラリアのクイーンズランド大学に通うりおなです。

最近、普段なにげなく使う大学の建物や施設が、実はSDGsと関係があることを知りました。それに加え、SDGs関連のイベントがキャンパス内で開かれたり、教授がSDGs達成に向けた助言文を政府に提出したり、大学ではさまざまな取り組みが行われていると感じます。

しかし、20196月にSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)とベルテルスマン財団が発表した「サスティナブル・ディベロップメント・レポート2019」によると、オーストラリアのSDGs達成度ランキングは162カ国中38位でした。他の先進国や15位だった日本、OECD加盟国のランキングと比べても、遅れをとっています。

そこで今回は、Group of Eight(グループオブエイト)と呼ばれるオーストラリアのトップ8校のうち、Webサイト上にSDGsへの取り組み情報が掲載されている6大学でのSDGs事例を紹介します。

今回の記事はこんな人にオススメの内容です
  • オーストラリアの大学が取り組むSDGs事例を知りたい
  • 大学がSDGsにどのように貢献できるのか知りたい
  • 海外のSDGs事例に興味がある

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メルボルン大学のSDGs取り組み事例

オーストラリアの南東部に位置するメルボルン大学は、オーストラリアでSDGs関連の取り組みがもっとも盛んだといえる大学です。

サステイナビリティ役員と呼ばれる大学のSDGs関連活動を運営する担当者の配置、サステナビリティ憲章の発表、生徒が発言できるサステナビリティ支持者フォーラムの実施など、SDGs活動を取り組むための仕組みが整っています。

SDGs報告書の発表

2015年から毎年、世界基準を元にSDGs報告書を作成、公開しています。内容は、大学で行われたSDGs関連活動のハイライト、大学運営や投資の方針、大学街との研究や活動面での協力状況などです。 

メルボルン大学が発表したサステイナビリティ計画2017-2020では、二酸化炭素排出量削減や、サステイナビリティ研究の促進などを含めた目標の経過報告も含まれています。 

2018年の報告書は98ページに渡り、広範囲で包括的な報告がされています。

 Green Impact Program(グリーン・インパクト・プログラム)の実施

Green Impactとは、イギリス発祥の、大学を中心とした環境、社会、経済的な躍進を草の根から進めるプログラムです。大学同士が競い、年度末にもっとも革新的で問題解決に貢献した大学の活動を表彰しています。

メルボルン大学は2017年にオーストラリアの大学で初めてGreen Impactを開始し、翌2018年には7大学が実施しました。2018年には全44チーム、443人が参加し、1,377個のSDGs関連活動を実施しました。

Our Planet, Our Health(私達の地球、私達の健康)の授業

Our Planet, Our Healthは、2018年に開講された分野横断型の授業です。One Health(「ひとつの健康」)の考え方を中心とし、人間・動物・環境の健康のつながりを理解することを目的にしています。

カリキュラムは、薬剤、歯科、保健、獣医、農学部を横断して作成されました。内容では、環境保護、感染病、持続可能な食料安全保障、倫理的な人間と環境の関わり方など、SDGsにも関連が深い分野が題材として扱われています。

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オーストラリア国立大学のSDGs取り組み事例

オーストラリア唯一の国立大学であるオーストラリア国立大学は、首都キャンベラに位置し、1946年に設立された歴史ある大学です。オーストラリアの歴史や政治と関わりの深い大学なので、SDGs達成に向けてステークホルダーを巻き込んだ活動がさらに期待されます。

「環境と持続可能性」学部

環境と持続可能性学部は、技術や経済の発展を進めると同時に環境を守る方法を探っていく学部です。都市化、環境問題、生物の多様性の危機などのトピックを扱っている、とても現代的でSDGsとも重なる部分が多い分野が学べます。 

人文社会学、環境科学、政治学など分野横断的な内容を取り入れており、保護区や山岳地帯、サンゴ礁などでの課外活動も実施している実践的な学部です。

ジェンダー協会の活動

ジェンダー協会は、男女平等に関連する革新的な研究やプログラムを促進させるために立ち上げられた機関です。

オーストラリア外務省と連携し、知識の共有を促すプログラムを始め、セミナー、講義、オンライン講座、ワークショップ、パネル・ディスカッションなど、さまざまな方法で活動しています。

加えて、大学内でジェンダー関連の優秀な論文を表彰することも、主要な活動の1つです。

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シドニー大学のSDGs取り組み事例

オーストラリアの観光スポットとして有名なオペラハウスから、車で15分程の場所にあるシドニー大学は、SDGsの全17ゴールに対して幅広く取り組みを行っている大学です。

「持続可能性をキャンパスで」プログラム

このプログラムは、環境保護を目的にして行なうさまざまな活動の総称です。例えば、「より良いリサイクル、より少ないゴミ」キャンペーンでは、ペットボトル・紙類・機械ゴミ・バッテリーなど、それぞれを分けて捨てられるような総合的な仕組みを大学が定めました。

別のプログラムでは、ソーラーパネルを大学内の建物20棟に設置、雨水をトイレ用水に使用、太陽光と自然の風を最大限に活用できる建築デザインを考案、植物や動物との共存が実感できる庭園作りなども実施しています。

SDGs情報更新報告書の発表

2019年から始まったこの報告書では、大学が実施しているSDGsの各目標に対する取り組みがまとめられています。

例えば、目標2「飢餓をゼロに」に対する取り組みでは、食事の分配プログラムを実施し、食べ物が手に入らない生徒のために無償で提供しています。

目標6「安全な水とトイレを世界中に」に対する取り組みでは、キャンパス内に8つの冷水機を設置し、水へのアクセスを提供すると同時に繰り返し利用できるボトルの活用を促しています。

目標10「人や国の不平等をなくそう」に対する取り組みでは、生徒、スタッフ、来客者すべての人の平等を考え、障害者でも差がなく利用できるバリアフリーな施設を作っています。

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クイーンズランド大学のSDGsの取り組み事例

オーストラリア中東部のブリスベンに位置するクイーンズランド大学では、生徒向けのイベントから、オーストラリア政府に対するSDGs達成のための助言文作成など、広範囲の取り組みが行われています。

持続可能な建物の建築

クイーンズランド大学の機関であるGlobal Change Institute(グローバル・チェンジ機関)がキャンパス内に建てた建物は、使用量よりも多くのエネルギーを作ることが特徴です。

建物の外観や内観はこちらの動画で確認できます。

雨水の活用として、建物内で貯めた雨水を浄水し、まずはトイレやエアコンのために使用します。その後は、キャンパス全体の植物用に散水されます。

建物自体リサイクルされた素材で作られ、ジオポリマー・コンクリートという製造過程で二酸化炭素を排出しない素材が使用されています。

建物内で使用する電気は、太陽光発電の電力を利用しています。

また、電力消費を抑える目的で、透明な天井、よろい窓、そして多くの植物を用いて自然の太陽光や風を使った温度調節を可能にしています。

そして、クイーンズランド大学は、2020年中に世界の大学で初めて、すべての電気を大学の施設で作った再生可能エネルギーで発電予定です。

R2P Student Coalition (R2PSC)(「保護する責任」連合)の活動

R2PSCは、国連が2001年取り入れた、一国が自国民の保護義務を果たせていなければ国際社会全体が「保護する責任」を負うという取り組みを推進する学生団体です。

虐殺・民族浄化・人道犯罪・戦争犯罪の予防と対応、そして復興の手助けを国際社会が一体となり行えるような環境を作ることを目標としています。

R2PSCは、研究と政策決定の先導を切るAsia-Pacific Centre for the Responsibility to Protect (APR2P)の学生支部でもあります。また、APR2Pの取締役でもあるクイーンズランド大学のアレックス・ベラミー教授と連携して活動しています。

パネル・ディスカッション、ドキュメンタリー上映、セミナー、シミュレーションなどを通してクイーンズランド大学で知見と認知度を高めることを目標としています。

Sustainability Week(持続可能週間)の実施

クイーンズランド大学では2013年から毎年1週間の間、SDGsや持続可能な社会を達成するためのイベントやアクティビティが開催されています。

2019年は60種類以上のイベントを開催し、参加者は大学生や大学スタッフだけでなく、一般市民などさまざまです。

「肉なし月曜」ではヴィーガン市場、「ゴミなし火曜」ではキャンパス全体に子どもたちが植木するイベントを開催、「持続可能交通の木曜」では電気自動車博覧会が実施されるなど、テーマのもと趣向を凝らしたイベントが開催されました。

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モナシュ大学のSDGs取り組み事例

モナシュ大学はオーストラリアの南東部メルボルンに位置する大学です。2016年にSDGs達成に専念することを宣言したモナシュ大学は、さまざまな角度からSDGs関連の活動に取り組んでいます。

先住民族との協力

環境問題の解決法を一般的な視点とは違う角度から探るため、モナシュ大学の持続可能性開発機関はビクトリア州の先住民族と協力しています。

先住民には、昔ながらの環境への関わり方や価値観が残っている点や、土地に関する深い知識など、自然と人間の共存を促すために必要な知恵があるからです。

若者が気づくSDGs計画

モナシュ大学の持続可能性開発機関が開催した2019年のプログラムで、若者がどのようにSDGs達成に向けて活動できるか考案する場が設けられました。

モナシュ大学の生徒を含め、大学外のユース団体の代表者も集まり、話し合いを実施しました。なぜSDGsはオーストラリアの若者にとって重要なのか、若者しかできないことはなにか、若者はどのように政府や他の機関に呼びかけられるか、といった議題で話し合いが進められました。

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ニューサウスウェールズ大学のSDGs取り組み事例

シドニーの東部に位置するニューサウスウェールズ大学は、約7万人の生徒と大学職員・関係者が在籍する大規模な大学で、周囲には大学街が形成されています。

そのため、「まず自分たちの大学からSDGsの取り組みを始める」という想いで活動しています。メルボルン大学と同じように、SDGs報告書やアクションプランを公開して取り組みを進めています。

Ride2Uni:自転車で通学しようキャンペーン

1週間でニューサウスウェールズ大学に、約4万回の人の往来があるため、持続可能な移動手段を取り入れる活動を実施しています。

2018年に自転車の駐輪スペースを104箇所増設し、駐輪場は合計900箇所になりました。また、2018年10月にはRide2Work(自転車で出勤しよう)にちなんでRide2Uni(自転車で通学しよう)キャンペーンを行い、大学への自転車通学を促しました。

環境サステイナビリティ計画2019-2021

世界で使われるソーラーパネルのおよそ半分は、ニューサウスウェールズ大学が開発したテクノロジーを使用している実績をはじめ、同大学では環境に関するプログラムが充実しています。

その一環になる環境サステイナビリティ計画2019-2021で定められているゴールの例は以下です。

  • キャンパスの土地の28%を緑で埋める
  • 生徒一人当たりのゴミを10%減らす
  • 二酸化炭素排出量0の建築物を増やす
  • 2020年までに100%再生可能エネルギーに転換する
  • 電気と水道代で年間約2,400万円分を削減する

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まとめ

今回調査をした6大学のSDGs達成に向けた取り組みの多くは、環境問題を意識した活動でした。この背景には、世界的に気候変動への注目が高まっていることや、オーストラリアでもっとも達成率の低い目標が「目標13 気候変動に具体的な対策を」だということがあるのかもしれません。

環境に対する動きでは、筆者が通うクイーンズランド大学でも、2019年9月にクラスメイトが授業を欠席してブリスベン・シティーでの気候変動ストに参加するなど大学生の環境への関心も強いと感じています。

オーストラリア国内の大学43校の内40校は国立、または州立大学です。そのため、比較的政府と対話を始めやすい立場にあります。各大学のSDGsへの取り組みを国からさらに支援してもらえるようになれば、より大きな規模で取り組みを広めていけると思います。

この記事ではオーストラリアの大学6校のSDGsへの取り組みを紹介しましたが、他の国の大学や企業、コミュニティーが独自にSDGsに対して取り組んでいる活動があると思います。関心のある方は、周りのSDGsへの取り組みに目を向けてみてはいかがでしょうか。

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