起業家の国ウガンダの持続可能なビジネスを支えるユヌス・ソーシャル・ビジネス(YSB)とは?
80%以上の国民が、生涯どこかの時点で起業する国。これを聞いて、東アフリカの内陸国であるウガンダを思い浮かべる人は少ないでしょう。
ウガンダは、グローバル・アントレプレナーシップ(GEM)によって、起業家精神に溢れた国として、2015年に世界一に選ばれています。
一方で、政治的・経済的な不安定が続き、発展途上国でもあります。
経済成長はもちろん、持続可能な社会づくりを同時に追求することが、ウガンダの未来にとって重要となる現在、ウガンダ国内ではさまざまな起業家がアイディアを現実にしようとしています。
それを可能にするため働くのが、ユヌス・ソーシャル・ビジネス(以下、YSB)という団体です。
今回は、ウガンダの社会とビジネスを変えるYSBという団体と、6つの起業事例を紹介します。
今回の記事はこんな人にオススメです
- ユヌス・ソーシャル・ビジネスについて知りたい
- ウガンダのSDGs関連ビジネス事例に興味がある
- 発展途上国におけるSDGsの取り組みついて興味がある
目次
YSBとは?
ユヌス・ソーシャル・ビジネスは、バングラデシュ人でノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス氏が創設した非営利組織です。ビジネスの力で貧困を無くすことを理念にしています。
バングラデシュでユヌス氏が創設した、貧困者をサポートするグラミン銀行が起源であるYSBは、現在、ブラジル、バルカン半島、コロンビア、チュニジア、インド、ハイチ、そしてウガンダで活動しています。
ソーシャル・ビジネスとは?
ソーシャル・ビジネスとは、ユヌス氏が作ったビジネスモデルです。環境問題や貧困問題を解決することなど、「ソーシャル」な目標を中核においたビジネスを指します。
活動資金を寄付金などに頼らず独立して活動するため、売上を返済ではなくさらなる問題解決のため投資することが可能です。
日本では、株式会社ボーダレス・ジャパンの活動が有名です。
続いて、ウガンダでのソーシャルビジネス事例を紹介します。ソーシャルビジネスで解決を目指す課題を「環境」と「貧困」に分けて、合わせて5つ取り上げます。
ウガンダでの支援先ビジネス例:環境改善
経済成長は残念ながら多くの場合、環境を犠牲にして行われます。しかし、YSBが支援するビジネスの中には、経済成長と同時に環境改善に大きく貢献するものがあります。
インパクト・ウォーター
ウガンダで大きな問題の1つは生活に欠かせない水の確保です。
毎週440人もの子どもが、汚染水による病気で命を落としています。家でも学校でもきれいな飲料水を手に入れられないため、子どもたちは病気のせいで学校にいけなくなり、経済状況の悪化にもつながります。
インパクト・ウォーターは、紫外線殺菌で水を浄化するシステムによって、ウガンダの学校での水質問題を解決していっています。
それぞれの学校の財政事情に合った、負担の少ない支払いシステムを取り入れるため、経済的なハードルをクリアできます。また、安価に2年分の予備設備を設置できるため、安心して継続的にきれいな水を子どもたちに提供することができます。
この浄化システムがあれば、木炭で水を沸騰消毒させる必要がないため二酸化炭素排出がなくなるのも利点の1つです。
現時点で2,400校へのシステム設置が完了し、140万人以上の子どもに安心して飲めるきれいな水を提供することに成功しています。
グリーン・バイオ・エネルギー
ウガンダでは、多くの人が薪と木炭を使い料理の火など、日常生活のエネルギーを得ています。しかし、これらの材料調達によって森林伐採の常態化や、加熱による有害物質の発生、さらには高価な薪や木炭が世帯収入を圧迫するなど、問題は山積みです。
この問題に対して、グリーン・バイオ・エネルギーでは、環境に優しい豆炭(ブリケット)を作り、提供しています。
ブリケットはリサイクルされた木炭やバナナの皮、コーヒーの果肉から作られています。木炭の生産量を減らすことで、二酸化炭素排出量も削減し、森林伐採も減らすことができています。
さらに、薪や木炭より火が長持ちするため、家計に優しいのに加え、風通しの悪い家のコンロ前で長時間過ごす女性の健康にもいいのです。
ウガンダでの支援先ビジネス例:貧困改善
YSBウガンダは貧困問題にも着目し、生活と労働水準をあげるために活動するビジネスをサポートしています。
サイクル・コネクト
ウガンダ人の多くは田舎に住み、経済的に孤立しています。経済的に苦しくなると、借金をしますが、そのうち約80%の人は、時期や地域による収入の変動を考慮してくれない非正規なネットワークを通じて、お金を借りざるを得ません。
サイクル・コネクトは、郊外に住む農家たちに自転車を貸すシステムを作り、経済孤立からの脱却を手助けしています。ローンを通してゆくゆくは、自転車を農家たちの私物にしていくため、持続可能性が望めます。
ゴールデン・ビーズ
ウガンダにいる養蜂農家の多くは国内外の市場へのアクセスが限られており、技術向上トレーニングを受ける機会もありません。
そこで、ゴールデン・ビーズは養蜂農家の技術と国際的なコネクションを高めるため、器具や技術講習を提供し、蜂蜜、蜜蝋、プロポリスの処理と輸出を助けています。
この活動はフェアトレードに大きく貢献し、養蜂農家の収入を2014年から今までで400%も向上させることに成功しています。
トゥゲンデ
ウガンダでは、若者の失業率も問題になっています。失業率50%前後のなか、若い世代の貧困率がとても高くなってきていました。
仕事を探す若者の多くがバイクタクシーの運転手になります。ですが、専用のバイクを持つことができず、高値で借りるしかありません。
そのため、生活に必要な費用が減り、生活水準が低くなってしまうという現状がありました。
トゥゲンデは、バイクタクシー運転手に適正価格でバイクを貸し、彼らの生活を手助けするシステムを作りました。12〜18ヶ月かけて徐々にバイク費用を返して、返済後はそのまま自身のバイクタクシーとして所有してもらいます。
その結果、しっかりと働いていれば借金がなくなり収入が安定し、子どもの教育費や家族の医療費にお金を使うことができるようになるのです。
まとめ
意外にも世界で最も起業家精神に溢れた国ウガンダのソーシャルビジネス事例と、社会起業家を支えるYSBについてご紹介していきました。現在も、経済成長とともに環境や貧困問題を解決するため、YSBと現地ウガンダ人がタッグを組んでいます。
ソーシャルビジネスは、今後「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」達成を目指す世界で、中心的な活躍を見せてくれるビジネスモデルであることは間違いないでしょう。大企業・中小企業・スタートアップと規模を問わず、ソーシャルビジネスに取り組む企業や起業家が増えることを期待しています。
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