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【自治体SDGs事例】富山県富山市のSDGs未来都市(2018年度選定)

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SDGs未来都市に選定された都市が掲げる2030年のあるべき姿・地域特性(抱えている課題)・具体的な取り組みについて分かりやすくまとめます。

SDGs未来都市は、内閣府によって以下のように定義されています。

SDGsの理念に沿った基本的・総合的取組を推進しようとする都市・地域の中から、特に、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域として選定

引用元:内閣府地方創生推進室「地方創生に向けたSDGsの推進について

事例を見る前に、SDGs未来都市や自治体SDGsモデル事業の概要について詳しく知りたい人は、こちらの記事へ。

この記事では、2018年度にSDGs未来都市に選定された富山県富山市(以下、「富山市」)の取り組みをご紹介します。地方自治体の「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」への取り組み事例を知りたい方や理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

今回の記事はこんな人にオススメです
  • SDGs未来都市について興味がある
  • 富山市のSDGsへの取り組みについて知りたい
  • 自治体職員としてSDGsに関心がある

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富山市の優先的なSDGsゴールと目指している2030年のあるべき姿

実は、SDGs17のゴールは、経済・社会・環境の3領域に対して定められています。そのため、富山市が策定した「富山市SDGs未来都市計画書」では各領域に対して、優先的に取り組むゴールを設定しています。

経済の優先的なゴール

SDGs 目標 経済 富山
富山市の主要産業である製造業の発展による、地域経済の活性化と雇用の創出・拡大がKPIとして設定されています。 

社会の優先的なゴール

SDGs 目標 富山 社会
市民が自ら生活習慣改善や健康を目指すことで健康であると感じられる人を増やすことがKPIとして設定されています。

環境の優先的なゴール

SDGs 目標 富山 環境
省エネルギーな街づくりと再生可能エネルギー使用率アップなどを元にエネルギー効率の改善がKPIとして設定されています。

これらの優先的なゴールから分かる以下のこと
  1. 住み続けるまちづくりを実現するために、富山市の実情からSDGsNo379の取り組みが優先的に推進されている
  2. どのゴールも、産学民・富山市のステークホルダーとのパートナーシップで達成を目指している 
これらの優先的なゴールを統合する形で富山市が目指す2030年の姿のまとめ

〈目指す将来像〉
コンパクトシティ戦略による持続可能な付加価値創造都市の実現

〈3つの価値〉

  1. 経済価値:市内企業の活性化や新技術の活用等により、持続可能な付加価値を想像し続けるまちが実現している。
  2. 社会価値:健康・医療、子育て・教育環境の充実等により、一人ひとりが個性を発揮し、活力あるまちが実現している。
  3. 環境価値:低炭素・エネルギーの有効利用等により、雄大な自然と調和し、誰もが暮らしたいまちが実現している。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書

 富山市ってどんな街?

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今回、富山市を自治体SDGsモデル事業の例として取り上げていますが、どんな街なのか知っていますか?

富山市の取り組むSDGsの計画を理解するためには、街の産業、住民、自然条件などについて知ることが助けになります。ここでは、富山市の現状を簡単にまとめましたので、今の富山市について知っていきましょう。

富山市を知るには、まずこれだけおさえておこう!

富山市の現状や特徴は、以下の3点から見えてきます。

その1 薬が有名

富山市は、県の中央部に位置する人口約42万人の県庁所在都市です。全国的に「くすりのまち」として有名で、その歴史は300年以上。医薬品や機械、電子部品を中心としたものづくり産業が盛んです。

その2 自然が豊か

富山市の周りには、3000m級の北アルプス立山連峰がり、神通川や常願寺(じょうがんじ)川など大小の大小さまざまな河川が流れています。また、温泉が湧き出ている(山田温泉)ため地熱資源にも恵まれています。富山市はこのような、自然豊かで多様な土地の特徴があり、森林・水力・地熱の資源に恵まれています。

その3 少子・超高齢社会が進んでいる

 これらの現状・特徴から「富山市SDGs未来都市計画書」では、地域特性が以下のように述べられています。

人口減少、少子・超高齢社会が進行する中、このような地勢を背景として、本市は自然との共生を通して日本全国そして世界の都市が抱える地域課題をトータルで内包し、解決・普及するための地方都市モデルとして、本市は大きな役割を担っています。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書

それでは、富山市の現状を踏まえた上で続きを読み進めてみてください。

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3領域ごとの取り組み指針と施策事例

富山市では、冒頭でご紹介した経済・社会・環境3領域の優先的なゴールを達成するために、これまで取り組んできた施策をベースに「産業」「都市・地域」「都市のかたち」「市民生活」「エネルギー」5つの分野に対して、SDGs推進の取り組みを実施しています。3領域と5つの分野の関係は、以下のように整理できます。

経済領域「産業」「都市・地域」の2分野
社会価値「都市のかたち」「市民生活」の2分野
環境価値「エネルギー」の1分野

また「富山市SDGs未来都市計画書」では、各分野に対して、ゴールと取組指針が設定されており、具体的な取り組みが紹介されています。次に、各分野の取り組みのなかからいくつかご紹介していきます。

産業分野の取り組み

SDGs 富山 産業分野の取り組み

経済領域に属する産業分野が貢献するSDGsのゴールは上記の5種類です。産業分野の取り組みによって、経済領域のゴール達成を目指しています。産業分野の取組指針は以下のように設定されています。

取組指針

市内企業の活性化や新技術の活用等を通じて、「技術・社会イノベーション創造都市」の形成を図ります。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書」 

続いて、産業分野の主な取り組みをご紹介します。

えごまの6次産業化の推進

えごまとは、シソ科の一年草で、見た目は青じそによく似ています。韓国料理によく利用されており、焼肉屋さんの付け合せ野菜で食べたことのある方も多いのではないでしょうか。えごまの種から取れる油は昔、灯油として利用されていました。

2016329日に高齢化や過疎化が進む富山市山田地域に、牛岳(うしだけ)温泉植物工場が建設され、えごまの6次産業化が推進され始めました。牛岳温泉植物工場では、温泉熱を活用し薬用植物のえごまを栽培しています。

また、2016719日には、「富山市エゴマ6次産業化推進グループ」の会員である(株)ローソンにより、富山市産えごまを使用したオリジナル商品(おにぎり・サンドイッチ・パスタ)が期間限定で北陸三県にて発売されました。

20191025日から、富山市出身のタレント柴田理恵さんが出演する「富山えごま」のCMが富山県内で放映されています。インパクトの強いCMに仕上がっています。

都市・地域分野の取り組み

SDGs 富山 都市地域分野の取り組み

経済領域に属する都市・地域分野が貢献するSDGsのゴールは上記の6種類です。都市・地域分野の取り組みによって、経済領域のゴール達成を目指しています。都市・地域分野の取組指針は以下のように設定されています。

取組指針

官民連携・ダイバーシティ・国際展開の推進により、都市ブランド力を高めた「選ばれる都市」を目指します。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書 

続いて、都市・地域分野の主な取り組みをご紹介します。

・コンパクトシティ戦略のパッケージ化と国際展開

富山市の豊富な水資源を活かした「農業用水を活用した小水力発電」の技術を国際展開しています。201711月には、20143月から協定を結んでいるインドネシアタバナン県に、富山市と市企業が協力し農業用水路を活用した小水力発電システムが4基設置されました。また、このプロジェクトはインドネシアタバナン県だけではなくマレーシアでも実施されています。この取り組みによって、現地で生活する人が使用できる電力が増えたため、夜間の活動や日が暮れると帰ってしまっていた観光客の滞在時間が伸びるなどの成果が出ています。

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都市のかたち分野の取り組み

SDGs 富山 都市のかたち

社会領域に属する都市のかたち分野が貢献するSDGsのゴールは上記の6種類です。都市のかたち分野の取り組みによって、社会領域のゴール達成を目指しています。都市のかたち分野の取組指針は以下のように設定されています。

取組指針

まちづくり・公共交通、居住誘導・市街地活性化、質の高いインフラ整備等を通じて、地域生活拠点とのネットワーク機能を高める「コンパクトシティ」を形成します。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書 

続いて、都市のかたち分野の主な取り組みをご紹介します。

LRTネットワークの形成

LRTとは、Light Rail Transit (ライトレールトランジット)の省略です。

路面電車の発展版のようなもので、従来の路面電車よりも振動が少なく静音であることが特徴です。また、車両の床が低く、ホームとの間に段差や隙間がほとんどありません。そのため、高齢者から子供、車椅子で移動される方など、どんな人でも安全に乗降車できる次世代型の交通システムです。

LRTの説明動画は、こちらの宇都宮市の例をご覧ください。

LRTは富山駅北口から岩瀬浜駅という海岸の駅まで運行しています。7.6kmの距離を24分かけて走っています。料金は、一律210円(大人)となっています。

LRTは、公設民営の考え方を導入し、富山市が施設の建設費や維持管理費を負担し、新設した第3セクター(株式会社富山ライトレール)が運賃収入によりLRT事業を運営しています。

富山LRTの整備効果は開業前と比較して、利用者数は平日で約2.1倍、休日で約3.9倍に増加しました。(平成22331日現在)また、利用者のうち、12%が交通手段を自動車からLRTに変更したと回答しており、自動車利用による二酸化炭素排出を抑える効果が見込まれます。

富山市のLRTに関する反応

おでかけ定期券事業

おでかけ定期券は、富山市内在住の65歳以上の方が市内各地から中心市街地へでかける際に、公共交通機関を1乗車100円で利用できる定期券です。おでかけ定期券を提示すると、中心市街地にある協賛店(約70店舗)で粗品のプレゼントや商品の割引があり、市の体育施設や文化施設(約30施設)を半額または無料で利用できます。

日本経済新聞の記事(2019531日)によると、おでかけ定期券を使っている人の1日の歩数が2016年の実績で5287歩と、非所有者の人より7%多いことがわかりました。また、医療費を比べると、1617年の平均で定期券利用者の方が年間1人あたり72,860円少なかったことから、おでかけ定期券の存在が、外出のきっかけになり、健康効果にもつながっているのかもしれません。

市民生活分野の取り組み

SDGs 富山 市民生活分野の取り組み

社会領域に属する市民生活分野が貢献するSDGsのゴールは上記の5種類です。都市・地域分野の取り組みによって、経済領域のゴール達成を目指しています。市民生活分野の取組指針は以下のように設定されています。

取組指針

健康・福祉の推進、子育て環境の充実等を通じて、地域が一体となり、環境・子育て・教育に取り組める「ヘルシー&交流シティ」の形成を図り、市民にとって質の高いライフスタイルとワークスタイルが享受できる都市の実現を目指します。

さらに、「誰一人取り残さない社会」の実現に向け、育児・介護・障害・貧困やそれらが複合化・複雑化した課題を包括的に受け止める総合的な相談支援体制づくりを推進し、一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていくことのできる地域共生社会の実現に向けた取組みを推進します。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書 

続いて、市民生活分野の主な取り組みをご紹介します。

モビリティ・マネジメント、市民の「歩くライフスタイル」の推進

富山市で暮らす人は戸建てで暮らす人の割合が多い(持ち家率が全国2位)です。戸建てが地価の安い郊外で増えていったことで、市街地が広がり道路整備も盛んに行われました(道路整備率全国1位)。その結果、1世帯当たりの乗用車保有台数が1.72台(全国2位)と増加し、郊外に暮らす市民は、通勤や買物などで過度に車に依存したライフスタイルを送っています。

このライススタイルを変化させ、公共交通機関もバランスよく利用してもらうためにモビリティ・マネジメント施策「とやまレールライフプロジェクト」を展開しています。これに伴い、公共交通期間を利用し、市民の歩いて健康に暮らすライフスタイルも推進しています。

「とやまレールプロジェクト」の詳しい内容に関しては、こちらのFacebookページにて発信されていますので、ご確認下さい。

また、市民が生活の中に歩くことを取り入れられるように、「とほ活」を掲げて歩くことを促しています。とほ活のスマートフォンアプリを起動して、富山市内を歩ことで1000歩ごとに8ポイントを獲得できます。さらに、公共交通機関の利用、富山市内のイベント参加でもポイントが貯まります。貯まったポイントは、ポイント数に応じて抽選により素敵な商品を獲得できます。詳しいことが知りたい方は、「とほ活」専用ホームページにアクセスしてみてください。

「とほ活」専用ホームページ 

とほ活を楽しむ市民の声

エネルギー分野の取り組み

SDGs 富山 エネルギー分野の取り組み

環境領域に属するエネルギー分野が貢献するSDGsのゴールは上記の8種類です。エネルギー分野の取り組みによって、環境領域のゴール達成を目指しています。エネルギー分野の取組指針は以下のように設定されています。

取組指針

低炭素化と都市レジリエンス等の取組みの融合による、安全・安心かつ環境負荷を低減した「セーフ&環境スマートシティ」を構築するとともに、再生可能エネルギー等で生み出した地域エネルギーのマネジメントを行い、エネルギー効率改善都市を目指します。

引用元:富山県富山市「富山市SDGs未来都市計画書 

続いて、エネルギー分野の主な取り組みをご紹介します。

セーフ&環境スマートモデル街区

豊田小学校跡地に、交番、保育園、公民館、図書館等の公共施設を集約し、質の高い生活環境を提供する住宅地区を整備しました。この事業は公民連携で行われ、富山市と大和ハウス工業の共同事業として進められました。

20171025日には、富山市「セーフ&環境スマートモデル街区」の完成式典が開催されました。宅地に建設される戸建住宅は、すべてに太陽光発電システムなどを搭載した「3電池搭載住宅」となる予定です。また、防災備蓄倉庫やトイレベンチなどの災害対策機能を持った公園も地区内に用意されています。 

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まとめ

ここまで読んでもらえれば、富山市のSDGsへの取り組みを少し知ってもらえたのではないでしょうか?

富山市は、2019年にオリジナルのSDGs推進ロゴマークを作成してしまうほど、SDGsに積極的です。SDGs未来都市TOYAMAの特設ホームページ内にロゴマークが掲載されていますので、確認してみてください。

SDGs未来都市TOYAMA ホームページ

今回ご紹介した内容は、富山市のSDGs推進への取り組みのほんの一部です。更に詳しく知りたい方は、「富山市SDGs未来都市計画書」(PDF)にアクセスしてみてください。

富山市の事例が、あなたのSDGsの勉強や活動のきっかけになれば嬉しいです。

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参考サイト:

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