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紙おむつのごみ問題で環境が悪化?紙おむつが与える影響とSDGsの関係

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使い捨ての紙おむつは、乳幼児や小さなお子さんだけではなく、ADLActivities of Daily Living:移動・排泄・食事など、日常生活動作のことを指す)の低下したご高齢の方にとっても生活必需品です。

しかしその紙おむつが今後、私たちの生活する地球環境に大きな負荷をかけてしまう可能性があることをご存知でしょうか?

この記事では、紙おむつが環境に及ぼす悪影響について、以下のトピックスでご紹介します。

  • 紙おむつの生産量や今後の市場動向
  • 紙おむつが環境問題を悪化させる原因
  • 国や自治体、企業による紙おむつ問題への取り組み事例と、SDGsとの関係

なぜ今、さまざまな機関が紙おむつ問題への施策を実践しているのでしょうか。そこには、紙おむつゴミの特徴や、日本のSDGs達成度合いが大きく関係しています。

日本の抱えるSDGsの課題や紙おむつゴミが引き起こす環境問題に対して理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

今回の記事はこんな人にオススメの内容です
  • 紙おむつがもたらす環境問題について興味がある
  • 紙おむつ問題に向けた取り組みについて知りたい
  • 日本での紙おむつ問題の現状について知りたい

数字でみる紙おむつ市場の動向

まずはいくつかの機関が発表しているデータを用いて、日本における紙おむつの生産量と、今後の紙おむつ市場の動向について解説します。

日本の紙おむつ生産量

一般社団法人日本衛生材料工業連合会が集計した『大人用紙おむつのタイプ別生産数量 推移』と『乳幼児用紙おむつの生産数量 推移』によると、2018年の紙おむつ生産量は、大人用が約84億枚、乳幼児用が約151億枚、合わせて約235億枚でした。

同法人が2010年に集計した同様の生産数量データでは、大人用が約54億枚、乳幼児用が約86億枚の計約140億枚であり、この数年間で紙おむつの生産量は約1.7倍になっています。

また、環境省の『使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン』には、一般廃棄物排出量に占める紙おむつゴミの割合が示されています。この資料によると、2015年度の一般廃棄物排出量に占める紙おむつの割合は約5%と推計され、SDGsの期限になっている2030年度には、その割合は7%程度になると推計されています。

このように、紙おむつの生産量・消費量がどちらも年々増加していることがわかります。

今後の紙おむつ市場について

株式会社富士経済が20197月に発刊した、衛生材・サニタリー用品市場の調査・分析結果をまとめた『トイレタリーグッヅマーケティング要覧 2019 No.1』によると、大人用紙おむつの市場規模は2015年から2019年(見込値)のあいだで年々増加しています。

大人用紙おむつの市場規模が増加傾向にある理由には、以下の3点が挙げられています。

  • 高齢化社会で介護支援や、高齢者の健康状態によりニーズがある
  • 従来の製品に比べ履きやすさを追求する消費者のニーズがある
  • 機能性の改善余地がある

年々、紙おむつの生産・消費量が増加している理由には、大人(特に高齢者)の紙おむつ使用機会が増加している背景があります。

紙おむつが及ぼす環境問題について

ここからは、環境問題を引き起こす原因の1つに紙おむつが挙げられている理由について、2つの課題を踏まえて解説します。

紙おむつゴミの燃焼処理におけるコスト

一般ゴミとして回収された紙おむつの多くは、可燃ごみとして処理されます。ただの紙ゴミであれば、ゴミ処理にかかるコストはそれほど大きくはありませんが、使用済みの紙おむつにはし尿(水分)を多く含んでいるため、焼却炉の温度を下げてしまうことが問題となっています。

下がった温度を上げるためには助燃剤が必要になりますが、助燃剤を使用することで余計にコストがかかったり、焼却炉を痛める原因になってしまいます。

また、紙おむつの素材になっているパルプ(植物繊維)をリサイクルするとしても、排泄物が付着していることや、再生利用などの技術が十分でないことなどによってリサイクルが安易ではないことが、紙おむつゴミの処理コストを上げてしまっているのです。

二酸化炭素排出量

紙おむつに限ったことではありませんが、ゴミの焼却処理を行えば、同時に二酸化炭素も排出されます。

環境省が発表した『廃棄物分野における排出量の算定方法について(案)』内の廃棄物分野からの温室効果ガス排出量(2015年度排出量を例とした試算値)よると、2015年に一般廃棄物として紙おむつを処理する際に排出された二酸化炭素は、約21万トンとされています。

排出された二酸化炭素の程度をわかりやすく伝えるために、身近な例を紹介します。関東森林管理局は、50年生の杉の木1本が年間に吸収できる二酸化炭素量を平均14kgとしています。この数値を元にすると、紙おむつ処理で排出された21万トンの二酸化炭素を処理するには、およそ1,500万本の杉の木が必要になります。

このように、以前から問題視されていた地球温暖化問題に対しても、紙おむつのゴミは少なからず影響を与えてしまっているのです。

国による紙おむつ問題への施策

紙おむつゴミ問題を含めた環境問題に対して、国はさまざまな施策に取り組んでいます。特に国土交通省と環境省は、紙おむつゴミ問題を解決するための具体的な施策を検討しています。

国土交通省による施策

国土交通省は20181月に「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会」を設置し、同年3月に施策検討のロードマップを取りまとめました。

この施策は、大人用紙おむつが介護現場で頻繁に使用されること、それに伴って、今後の高齢化社会への貢献度合いが高いことが考慮され、「下水道に紙おむつを受け入れて処理する」システム案が候補にあがったことで発足されました。

下水道に紙おむつを受け入れて処理をするシステムは現在までに以下の3タイプ案が考案され、実用化に向けて実証検討されています。

Aタイプ案:紙おむつと汚物を分離して汚物のみ下水に排出して紙おむつはごみ処理かリサイクル
Bタイプ案:紙おむつを破砕・分離し、汚物のみ下水に排出して紙おむつはごみ処理かリサイクル
Cタイプ案:紙おむつも汚物も同時に破砕し、下水で処理する

これらの下水道に紙おむつを受け入れて処理するシステムは、2022年度末までにガイドラインの作成・公表を予定されています。

環境省は「紙おむつリサイクルガイドライン」を策定

環境省では20203月に、使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドラインが策定されました。

ガイドラインでは、市区町村等が殺菌等の衛生的処理をした上でのパルプ等の資源再生利用や、熱回収を行うことを検討するために活用することを目的としています。

他にも、使用済み紙おむつをリサイクルする際の流れや、各自治体による紙おむつリサイクルへの取り組み事例などが記載されています。これから新しく紙おむつのリサイクル事業を検討している企業や自治体の方々は、ぜひ一度目を通してみることをオススメします。

環境省の「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」の情報はこちら

自治体での紙おむつリサイクルの取り組み

ゴミリサイクルイメージ画像

紙おむつ問題を解決する施策は国だけではなく、地方自治体でも積極的に取り組まれています。次は、紙おむつのリサイクルに取り組んでいる2つの自治体の事例をご紹介します。

福岡県大木町

福岡県大木町は、2008年に「もったいない宣言(ゼロ・ウェイスト宣言)」を全国で2番目に公表した自治体です。ゼロ・ウェイストとは、「無駄・ごみ・浪費をなくす」という意味で、そもそもゴミを出さないようにすることを目的としています。

大木町では、もったいない宣言を表明したことで、家庭から出される使用済み紙おむつのリサイクル事業に取り組みました。環境省の資料(PDF)によると、家庭から出る紙おむつのごみは全体の70%から80%を占めています。さまざまな機関との共同研究を重ね、使用済み紙おむつの回収・リサイクル事業は2011年より始動。

現在でも続くリサイクルの取り組みとして、家庭での使用済み紙おむつは15Lサイズの専用袋(15/枚)に入れ、町内59ヶ所に設置された専用回収ボックスに分別する活動に取り組んでいます。

実は、使用済み紙おむつのリサイクルは全国で初めての取り組みであり、大木町のイメージアップやCO2排出量の削減など、環境問題に大きく貢献した取り組みとなりました。

鳥取県伯耆町

鳥取県伯耆町(ほうきちょう)では、焼却施設の抱える問題(2ヵ所の焼却施設を1ヶ所に集約する)によって、可燃ゴミの中でも水分量の多い使用済み紙おむつを減量するための取り組みを実践しました。

その内容は、可燃ゴミとして焼却していた使用済み紙おむつをペレット燃料化し、町内の温泉施設にて使用するというもの。使用済み紙おむつは、 紙おむつ燃料化装置で燃料化され、町営の温泉施設に置かれた「使用済紙おむつペレット専用ボイラー」で使用されることになりました。

この取り組みの結果、伯耆町では紙おむつゴミの減量化に成功し、2ヶ所あった焼却施設を1ヶ所にすることでCO2排出の削減に貢献しました。また、エネルギーの地産地消の実現にもなり、環境問題に取り組んでいる地域としてのイメージアップや、認知度の向上にもつながりました。

紙おむつ問題解決に向けた企業のSDGs取り組み事例

SDGs目標12

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」は、環境問題に大きく関係している目標です。先ほどご紹介した環境省の「使用済み紙オムツの再生利用等に関するガイドライン」にも”使用済紙おむつの再生利用等は、SDGs の目標 12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に寄与する”と記載されています。

日本のSDGs目標12の各項目の達成度は低く、SDGs目標12は「日本最大の課題」ともいわれ、早急に改善策が求められている状況です。

そのような中で、企業は環境問題に対してどのような取り組みを実践しているのでしょうか。ここでは、SDGs貢献の一環として、紙おむつ問題に取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

ユニ・チャーム株式会社

ベビーケアやヘルスケア製品の製造販売を手がける株式会社ユニ・チャームでは、自社のサステナビリティ活動として、2015年から「使用済み紙おむつのリサイクル事業化への取り組み」を開始しました。

紙おむつのリサイクルは容易ではないと前述しましたがユニ・チャームでは、独自のオゾン処理技術の開発により、紙おむつを安全なパルプとして再資源化することに成功しました。

紙おむつのリサイクル事業の実現のため、20165月から鹿児島県志布志(しぶし)市の協力により、使用済み紙おむつリサイクルシステムの実証実験を行っています。この実験では、2020年中に市内で本格的な分別回収と再資源化のシステム構築を目指しています。

201910月には、使用済み紙おむつを「衛生物品に利用可能なレベルにまで再生する技術の構築」と、「再資源化した原材料を用いた紙おむつ等の試作品」が完成したと発表し、2015年より一貫してサステナブルな取り組みを継続しています。

201910月1日付で、CSR本部内に「リサイクル事業準備室」を設置し、先ほどお伝えした「使用済み紙おむつのリサイクル技術」の事業化を目指して、リサイクル品の製品化に取り組んでいます。

ピジョン株式会社

育児やマタニティ用品の製造販売会社である株式会社ピジョンでは、環境配慮型製品として「おしっこ吸収ライナー」を販売しています。

パンツ型の紙おむつにセットすることでライナーが尿を吸収し、排尿後はライナーのみを取り替えることで紙おむつの使用量を減らせます 。ライナーを使用するだけで紙おむつの節約につながるので、ゴミの削減や消費生産のコストを下げることができ、環境に配慮した製品となっています。

まとめ

今回は、直面している紙おむつ問題について、数字やデータを用いてご紹介しました。総人口に対する高齢者の割合が年々増えていくことで、紙おむつのゴミ処理問題は深刻化していくことでしょう。

紙おむつ問題は、日本で進捗の遅れているSDGs目標12の達成に影響します。早急な対応が求められているSDGs目標12に対して、国や自治体、企業でも紙おむつのゴミ処理問題に対して施策を行なっています。

2030年のSDGs達成と環境問題の対策を実施するために、消費者は環境に配慮した紙おむつの使用を心がけ、企業は紙おむつの回収やリサイクルなどの事業活動を行うことで、SDGs達成に向けて活動してみませんか。

参考サイト

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