【アフリカでゴミ拾い】脱サラした30歳のリアル体験談
「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」の情報を発信するSDGs mediaを運営している株式会社Dropの玉木巧です。
僕は2019年9月の1ヶ月間、アフリカの西に位置するセネガルに行ってきました。インターン生として現地レストランで働くことが本来の目的でしたが、インターン業務を差し置いて取り組んだことがあります。それは街のゴミ拾いです。日本でもゴミ拾いをしたことない人間が、なぜセネガルでゴミ拾いを始めたのか。
この記事では、ゴミ拾いを通して気づいた発展途上国のゴミ事情と問題の深刻さ、そして解決に導く最新テクノロジーをご紹介します。世界の現状をもっと知りたいと思っている方は、ぜひ読んでください。
今回の記事はこんな人にオススメです
- 発展途上国・アフリカ・セネガルのゴミ問題の現状について知りたい
- ゴミ問題解決のアプローチ方法に興味がある
- ゴミ問題に対して個人でできることを知りたい
目次
自己紹介
まずは簡単に僕のプロフィールを紹介をします。
新卒より8年間働いた会社でインド、インドネシア、タイなど7ヶ国を販路開拓し、海外展開に奔走。2019年8月に退職。
翌月よりインターンシップでアフリカのセネガルへ。
帰国後は株式会社Dropにジョインし、SDGs研修の講師や企業のSDGs推進を支えるコンサルタントを担当。
大企業から中小企業へのコンサルティング経験をもとにこれまで40万人以上のビジネスパーソンにSDGs研修を実施。
コンサル業と並行して、Voicyパーソナリティー、allbirdsアンバサダー、Schoo講師など、SDGsを軸に多角的に活動を広げる。
2019年8月にいつか行きたいと思っていたアフリカに行こうと、インターネットで情報を集め、セネガルレストランのインターン生としてセネガルに行くことを決めました。今思うと、僕は英語もセネガルの公用語であるフランス語もできないのに、勢いだけでよく決断したと思います。
セネガルでゴミ拾いを始めた理由
セネガルは西アフリカに位置する国です。昨年のサッカーW杯のグループリーグで日本と試合したことを覚えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。初めて訪れたセネガルでしたが、人懐っこい国民性と日本人の口に合うおいしい料理で、僕はすぐにセネガルが好きになりました。
でもそんなセネガルでも1つだけ嫌なところがありました。それは街が汚すぎることです。
汚いといっても、中国やインドのような大気汚染の汚さとは違い、ゴミが街のいたるところに落ちている汚さです。ゴミの種類はペットボトル・レジ袋・カップ容器などのプラスチックゴミが占めます。
セネガルでは牛・ヤギ・馬が共存して暮らしており、動物たちは大量のゴミが混在した雑草を食べています。また魚の売買が行われている海岸にも、大量のプラスチックゴミがあふれています。
セネガルのポイ捨て文化
なぜセネガルでたくさんのゴミが落ちているのか?それはポイ捨て文化が理由です。
セネガルには、昔からゴミをポイ捨てする文化がありました。しかし昔のゴミは落花生の皮やトウモロコシの芯など、自然分解されるゴミばかりでした。でも現在のゴミといえば、自然分解されないペットボトルや食品パックなどプラスチックゴミばかりですので半永久的に残り、日に日にゴミが蓄積されていきます。
ゴミ拾い開始!思いもしない事の連続
きれい好きな性格もあり、トングとゴミ袋を手にセネガルでのゴミ拾いを始めました。すると思いもしない出来事が続けて起こりました。
人種差別を受ける
トングとゴミ袋を持ったアジア人が突如現れ、ゴミを拾い始める。セネガル人からすれば、その光景は違和感があったと思います。たくさんのセネガル人が僕のゴミ拾いに注目しました。でも誰一人、手伝ってくれません。それよりも掃除している僕をあざ笑う人がいたり、「シノワ(フランス語で中国人)、ここも掃除しておけ」と命令してくる人もいました。セネガル人に腹が立つこともありましたが、それよりも呆れた思いの方が強かったです。
拾っても拾っても増えるゴミ
ゴミが多過ぎるので、1時間あればゴミ袋3袋分は簡単に集まります。汚い場所も時間をかければ、きれいになります。しかし、夜が明ければ、街は元どおりの汚さに……。拾う以上に捨てる量が多いのが原因です。
ゴミ箱を設置してみた
拾っても拾ってもゴミ拾いが終わらないので、ポイ捨てされずに集められればいいのだと考え、ゴミ箱を設置しました。「ゴミを捨てる場所がなかっただけで、日本のようにゴミ箱があればゴミはそこに集まってくるはずだ!」と、これはいいアイデアだとワクワクしながら、ゴミ箱を購入、設置しました。
しかし、アイデアに喜んだのもつかの間、ここでもまさかの出来事が発生しました。設置したゴミ箱が2時間後に盗まれたのです……!! ゴミ箱を盗まれるなんて考えもしませんでしたが、日本の常識は海を越えれば非常識だと実感しました。
深刻すぎるセネガルのゴミ問題の実情
思いもしない出来事が続きましたが、それでも毎日のゴミ拾いは続けました。ある日、ゴミ拾い中の僕に「拾ったゴミでビジネスをするのか?」と質問してきたセネガル人がいました。僕は「街をきれいにしたいだけ。拾ったゴミはゴミ収集車に出す」と答えました。しかし、その時にある疑問が生じました。
「集めたゴミはどう処理されるのだろうか?」この疑問の答えがこちらの動画に集約されています。
動画に映っている場所は、滞在していたセネガルの首都ダカール中のゴミが集められるゴミ収集場です。収集場というよりゴミ山という表現のほうが正しいかもしれません。見て分かる通り、ゴミをリサイクルする処理場はありません。そもそもゴミを捨てる時に分別するルールもありません。
さらにゴミ山のオーナーは1日500円~1,500円の賃金でたくさんのセネガル人を雇っています。彼らは集まったゴミからお金になるゴミを見つける仕事をしています。そしてその中には子供の姿もあります。集まったゴミはそのまま放置されるか、有害物質を発しながら燃やされるので環境汚染の原因になっています。
ゴミ拾い=自己満足なのか…?
セネガルのゴミ問題を解決したいと思って活動し始めたゴミ拾い。でも拾ったゴミは燃やされ環境汚染につながる。しかも児童労働までも巻き込んでしまっている。僕のゴミ拾いは僕の自己満足に過ぎないのかもしれません。
しかし僕がゴミを拾わないと、ポイ捨てされたゴミは川に流れ、海に辿り着き、海の生態系を破壊する。どちらにしても地球に悪い影響を与えるので、僕はどうすればいいのか分からなくなりました。
発展途上国のゴミ事情
セネガルでこれだけひどい状態だったので、他の発展途上国の状況が気になりました。そしてアフリカの東に位置するケニアに滞在していた友人にお願いし、送ってもらった動画にもショックを受けました。
世界では1年間に800万トンのプラスチックごみが海に流出しており、すでに1億5,000万トンのプラスチックゴミが海に存在します。その8割は発展途上国から出るゴミが原因だといわれています。
あなたならどうやって解決しますか?
こういった状況を解決するために、セネガルでゴミ処理場を作れないか考えました。
しかしその資金は誰が出すのでしょうか。さらに生活インフラが整備されていないセネガルでは停電や断水が日常的に発生します。その中でゴミ処理場を建設しても稼働するのでしょうか。またゴミ処理場を作ってもポイ捨て文化が続く限り、ゴミは減らないのではないでしょうか。
もし皆さんがセネガルの大統領なら、この状況をどうしますか? ぜひ考えてみてください。
「Transform Our World」、これはSDGs採択文書のタイトルです。Transformは”変革”という意味です。SDGsを進めるには”Change”ではなく、”Transform”が必要です。つまり固定概念にとらわれず、突き抜ける必要があります。そして、いろいろ調べるなかで、セネガルのゴミ問題を解決するかもしれない突き抜けたサービスを見つけました。
プラスチックバンク|プラごみ問題に終止符を打つ
みなさんはプラスチックバンクを知っていますか? プラスチックバンクとは、IBMのブロックチェーン技術を使い、廃棄プラスチックを仮想通貨に変えるビジネスを展開している会社です。発展途上国のプラスチックゴミを回収し、プラスチックバンクの収集場に持っていくと、仮想通貨に交換してくれます。集めた仮想通貨を使って、食料・日用品を購入することができます。
プラスチックバンクは集めたプラスチックを再利用し、ソーシャル・プラスチックとして付加価値をつけて販売します。そのため原料となるプラスチックを集める仕組みを構築しています。なんと海に流出しているプラスチックの資産価値は4兆ドルもあります。そこに目をつけたわけです。
プラスチックバンクのサービスは「海洋汚染」と「貧困層の救済」の2つの問題解決に貢献します。現在はハイチ・フィリピン・インドネシアの3ヶ国で展開しており、セネガルでもプラスチックバンクの活動を展開させてほしいと思い、すぐに問い合わせをしました。しかし世界中から問い合わせが殺到しており、次はブラジルでの活動を予定していると回答がありました。
プラスチックバンクのことをもっと知りたい方は、2018年にCEOのデイヴィッド・カッツが活動について語ったTEDの動画をご覧ください。(日本語字幕もあります)
導き出した結論とアクション
ゴミ拾いを続けるか続けないか迷っていた僕は、プラスチックバンクの存在を知り、ゴミ拾いを続けることを決めました。
今はゴミを拾ってもゴミ山にたどり着き、環境汚染や児童労働につながるかもしれません。でもプラスチックバンクがセネガルで利用できるようになれば、集まっているゴミがお金に変わるチャンスがあります。もしゴミ拾いをせず、ゴミが海に放出されれば、その機会を失うかもしれません。だから、僕はゴミ拾いを続けていく決心をしました。
ゴミ拾いイベントを開催
しかし、セネガルでの一時的な滞在者である僕1人が、ゴミ拾いをしても仕方ありません。それよりも、セネガル人がゴミを拾う(ゴミを捨てない)習慣を持つことが、問題の解決に必要です。大人の考えを変えるのは難しいので、頭が柔らかい子供を対象に「プラスチックゴミの問題」を授業形式で教えました。
セネガルの公用語はフランス語。僕はフランス語が話せないので一緒にインターンをしていた日本人学生に講師をお願いしました。そして講義を通して、「なぜゴミを捨ててはいけないのか」を学び、そのあとに子供たち40人と一緒にゴミ拾いをしました。
ゴミ拾いイベント終了後に、手伝ってくれた子供たちに棒付きキャンディーをプレゼントしました。みんな飛び跳ねて喜ぶのですが、キャンディーの包装紙をポイ捨てするので、思わずズッコケてしまいました笑
もちろん1回の授業で子供たちが、ゴミ問題について理解するのは難しいです。もっと時間をかけて関わりたかったのですが、僕の帰国日が迫っていましたので、同期のインターン生に後を託しました。
さいごに
この記事の最後に、3年連続でSDGs達成率1位だったスウェーデンのエピソードをご紹介します。
スウェーデンは約30年前までは、深刻な大気汚染に悩んでいました。その時に政府が取った行動は、子供たちへの環境教育です。スウェーデンでは4歳から環境教育を実施しています。その子供たちが社会の中核者となった今、環境にやさしいまちづくりを進めています。
教育には未来を変えるチカラがあります。僕が一緒に掃除をした子供たちがなにかを感じ、未来のセネガルを良い方向に導いてくれれば嬉しく思います。
【10×30×□=X】
この計算式の□の中に0が入れば、答えは0になります。つまり、問題に対して詳しくても、良いアイデアを持っていても、行動にうつさなければ現状を変化・変革(ChangeではなくTransform)できません。もしかすると、僕がセネガルでゴミ拾いをする必要はなかったかもしれません。でも分からなくてもとにかく踏み出し、1をつくる。この小さな一歩の掛け合わせが未来の豊かな世界をつくると僕は思います。僕はこれからも「まず行動すること」を大切にしていきます。
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参考サイト: