【自治体のSDGs支援事例】神奈川・長野・沖縄の企業サポート制度の比較

近年、企業のSDGs関連活動や情報発信などの取り組みが増えてきています。自社でSDGsに取り組むうえで、関連するセミナーや講演会、活動相談会などに参加して、情報を集める機会も多いのではないでしょうか。
例えば、内閣府が取りまとめる地方創生SDGs官民連携プラットフォーム、都道府県や市区町村が行う講演会やマッチングなどのイベント、広域連合でのコンソーシアムなどへ参加した声を聞く機会もあります。
これらの共通点は、これからSDGsを学ぶ企業に加え、すでに取り組みを進めている企業まで幅広い層が対象となっていることです。そのため、多くのステークホルダーと協業して自社の取り組みを進められるというメリットがあります。しかし、一部の都道府県では、SDGs活動を行っている企業や推進を強化したい企業を対象にしたサポート制度が存在しています。
今回の記事では、神奈川県・長野県・沖縄県の自治体が設けている、企業のSDGsへの取り組みを加速させるサポート制度を自治体のSDGs支援事例としてご紹介します。すでにこの3県で事業を通してSDGsに取り組んでいる企業の方は、各制度の内容や登録条件をぜひ確認してみてください。
今回の記事はこんな人にオススメの内容です
- 自治体のSDGsに取り組む企業への支援事例を知りたい
- 企業や団体への支援制度がもたらすメリットを知りたい
- どのようにSDGs活動を推進できるのか知りたい
目次
神奈川県の支援制度|かながわSDGsパートナー・SDGs社会的インパクト評価実証事業
最初にご紹介するのは神奈川県の支援制度です。神奈川県は「いのち輝くマグネット神奈川」を理念に掲げ、人やモノを惹きつける魅力をもった県の実現を目指してきました。
神奈川県に住みたい、働きたいと思ってもらえることを目指し、2012年より県民、企業、市町村で協力関係を築いてきました。医療、環境、農業などを総合的に捉え、持続可能な社会の実現に取り組んでいます。
取り組みを自分ごととして考えられるよう、テーマやアクションを見える化し、政策を県民に示しながら進めてきたことが評価され、2018年6月には、全国で唯一「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」の両方に選定されました。
▶SDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業についてはこちらへ
神奈川県のSDGs活動の一環として、SDGsを推進する企業・団体が登録できる「かながわSDGsパートナー」制度や、支援融資制度の設置、各種セミナーの開催などを行いSDGsの推進に取り組んでいます。
かながわSDGsパートナーの基本情報
神奈川県は2019年4月、SDGsの推進事業を展開する企業・団体が登録できる「かながわSDGsパートナー」を発足しました。
登録した企業が取り組む事業を発信し、登録企業間の連携を図ることで県内のSDGsに関する取り組みの裾野を広げることを目的としています。登録には、SDGsへの取り組みが公表されているうえで、県の審査で以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 要件1. 神奈川県内で活動実績のある企業・団体であること
事業所が神奈川県内にある、もしくは県内での継続的(直近2年以上)な事業を実施していること
要件2. 法令違反などがない
県税などの税金滞納がないこと、暴力団経営支配法人などに該当しないこと、その他法令違反がないこと
要件3. SDGsに取りんでいる
活動を通して経済、社会、環境すべてに関わるSDGs活動を実施したうえで、県とともにSDGs普及活動に取り組むこと
これらの要件を満たせば登録が完了します。かながわSDGsパートナーの登録期間は、登録日から2年です。申請することで更新が可能です。2020年4月時点での「かながわSDGsパートナー」の登録者数は263者で、第4期の募集は2020年の夏から秋頃に予定されています。
かながわSDGsパートナーへの登録特典(メリット)は以下の3点です。
1.中小企業制度融資による支援を受けられる
神奈川県、金融機関、神奈川県信用保証協会による支援として、金銭面のサポートがあります。
かながわSDGsパートナーに登録している中小企業(NPO法人含む) 及び協同組合等は、年1.8%以内の利率で最大2,000万円の融資を受けることができます。さらに、SDGsに関する事業計画を策定し、実行する中小企業及び協同組合等には、年1.6%以内の利率で最大4,000万円の融資を受けることが可能です。
融資制度への申し込みは、神奈川県内の銀行、信用金庫、信用組合等の各支店で受け付けています。
2.県による対外的な広報・アピールを受けられる
取り組み事業が県のWebサイトへ掲載される他、公式のバッジ・ステッカーやロゴマークを使用できます。
3.県が主催するパートナー間のマッチング支援などに参加することができる
「かながわSDGsパートナーシップミーティング」など、県が主催するパートナー間のマッチング支援などに参加できます。
2019年7月に「第1回かながわSDGsパートナーシップミーティング」が開催され、57名が参加しました。企業のSDGs活用についての基調講演や、少人数に分かれて ワークショップを行い、社会課題解決に向けて新たなビジネスを創出する場としてパートナー同士の交流を図りました。
2020年2月には、「かながわSDGsパートナー・アクションミーティング」が開催され、350名が参加しました。イベントでは登録パートナーのSDGsの取り組みを紹介するブースが設けられ、名刺交換や情報共有を積極的にされました。また、出展した19のパートナーによるプレゼンテーションも行われました。
かながわSDGsパートナーの詳細情報や申込みについてはこちらをご覧ください。
SDGs社会的インパクト評価実証事業の基本情報
神奈川県は2018年度より「SDGs社会的インパクト評価実証事業」を実施しています。企業のSDGsの取り組み事業が、社会と環境に与えた価値(社会的インパクト)を見える化し、資金提供者や市場から融資を得やすくすることが目的です。2020年3月には、成果報告会が開催されました。
神奈川県では、実践のためのガイドを導入編・実践編・事例編の3つに分けてWebサイトで公表しています。また、知見の共有を目的とした公開講座の開催によって、SDGs社会的インパクト評価を広める活動も行っています。
SDGs社会的インパクト評価実証事業の詳細情報や申込みについてはこちらをご覧ください。
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長野県の支援制度|長野県SDGs推進企業登録制度・経営価値向上支援事業
次にご紹介するのは長野県の支援制度です。長野県は2018年6月に「SDGs未来都市」に選定されました。多様な地域の個性を活かす「自立・分散型社会の形成」を目指し、SDGs達成に向けて取り組みを推進しています。SDGsの17目標を達成することで地方創生にもつながると捉え、ビジネスの側面からもSDGsの取り組みを進めています。
具体的には、持続可能な企業を県内に増やすため、モデル事業を実施する事業者を対象とした補助金制度の推進や、セミナーなどの開催を行っています。
2019年4月26日には、SDGsを活用している県内の企業・団体を支援する「長野県SDGs推進企業登録制度」を設けました。また、SDGsを中核とする経営価値向上のための「経営価値向上支援事業」も実施しています。それぞれを詳しくご紹介します。
▶SDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業についてはこちらへ
長野県SDGs推進企業登録制度の基本情報
長野県SDGs推進企業登録制度は、企業がSDGsの17目標と自社事業の関連に気づき、具体的なアクションを起こすきっかけをつくる制度です。経済団体、金融機関、大学等の支援機関と連携し、環境・社会・経済の3側面を踏まえてSDGsを活用する取り組みを支援します。対象は企業・法人・団体・個人事業主で、登録には県の審査で以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 長野県内に本社又は支社などの事業所がある
- 環境・社会・経済の3側面すべてでSDGs取り組み内容と目標が設定されている
- SDGs達成に向けて、既に取り組んでいる又はこれから取り組む具体的な活動の準備がある
登録期間は3年で、県知事へ書類を提出することで更新することが可能です。登録のメリットとして、県から以下の2点のサポートが受けられます。
1.県が対外的に登録企業をPRする
県のWebサイトなどでSDGsへの取り組みが紹介されます。
2.公式の登録マークを使用してPRすることができる
長野県SDGs推進企業登録制度の登録企業であることや、活動PRする目的で2種類の公式登録マークが利用できます。
2020年1月31日時点での登録者数は232者で、第5期の申請期間は2020年6月30日が締め切りでした。第6期以降の申請期間は、公式サイトをご確認ください。年に4回の申請期間を設けており、4半期ごとに区切りをつけて登録を行う予定です。
製造業関連の登録が最も多く、全体の3割を占めています。また、登録の申請状況や、登録者の声をまとめたレポートが県のWebサイトで公表されているので、登録を検討している方の参考になりますよ。
▶長野県SDGs推進企業登録制度の登録状況等について|長野県(PDF)
登録者の声(抜粋)
・登録制度を通し、取組に対するプロセスや活動方針が具体的かつ現実的なものとなったことが大きなメリットであったと考えます。制度が無ければ、具体的な取組活動の実践が困難であったと思われます。
・長野県の制度に登録することで社内への協力依頼もしやすくなりました。
長野県SDGs推進企業登録制度の詳細情報や申込みについてはこちらをご覧ください。
SDGsを中核とする経営価値向上支援事業とSDGs活用販路開拓モデル創出事業の基本情報
長野県では、持続可能な経営を行う中小企業が増えるように、ビジネスの側面への支援として「SDGsを中核とする経営価値向上支援事業」を推進しています。
その取り組みの1つとして、「SDGs活用販路開拓モデル創出事業」を実施しています。SDGs達成のため、製品・役務の販路開拓を行う事業に対し、ニーズに合わせた専門の指導者の派遣と、事業費の一部の補助を行っています。
事業の補助対象経費の補助額は上限100万円、補助率は対象経費の2分の1以内とし、他の補助事業との併用はしないとします。
補助対象経費となるのは、謝金・旅費・PRパンフレットなどの消耗品費・通信運搬費・委託料・学会参加費等の役務費・会議室などの使用料・原材料費です。
2019年度は5社を選出し、2020年2月12日に成果報告会を開催し事業の成果を報告しました。
SDGs活用販路開拓モデル創出事業の詳細情報や申込みについてはこちらをご覧ください。
沖縄県の支援制度|おきなわSDGsパートナー
最後にご紹介するのは沖縄県の支援制度です。沖縄県では2030年のあるべき沖縄の姿を集約した、「沖縄21世紀ビジョン」の将来像を実現するためSDGsを推進し、新たな時代に対応した持続可能な沖縄県の発展を目指しています。
2019年11月29日に「沖縄県SDGs推進方針」を定め、SDGs推進のための基本方針を決めました。その一環として、SDGsの普及活動を行う企業・団体を集う「おきなわSDGsパートナー」を設けました。
おきなわSDGsパートナーの基本情報
SDGsの取り組みを行うとともに、県民に向けたSDGsの普及活動を行う企業・団体が登録できる制度です。登録には県の審査で以下の4つの要件を満たす必要があります。
- 沖縄県内に事務所を有する企業・団体
- 経済、社会、環境の3側面の分野を統合的に取り組んでいる
- SDGsの取り組みをWebサイト等で発信している
- 自治体、その他企業・団体等のステークホルダーと共に、SDGsの普及啓発に取り組みむ予定がある
登録期間は2022年3月までとされていますが、取り組み実績の提出をすれば更新も可能です。登録のメリットとして、県から以下の2点のサポートが受けられます。
- 県のWebサイトなどで取り組みを対外的に広報してもらえる
- 登録証、沖縄県のポスターなどが贈呈される
2020年3月時点での登録者数は61者です。第2期の募集については未定ですが、県のWebサイト等で決まり次第公表される予定です。
登録者のSDGsへの取り組み内容については、こちら(PDF)から確認できます。
おきなわSDGsパートナーの詳細情報や申込みについてはこちらをご覧ください。
まとめ
今回は、神奈川県・長野県・沖縄県の企業のSDGsへの取り組みを加速させるサポート制度をご紹介しました。
各都道府県、持続可能な社会の実現に向けて独自の理念・目標を掲げ、その中にSDGsを取り入れて推進しています。どの県もSDGsの達成には、行政・企業・その他団体が協力して連携を図る必要があると考え、融資制度の推進や取り組み団体の登録制度を設けて裾野を広げています。
記事公開時点では、企業・団体への支援制度が成果を上げている県はまだ少ない印象ですが、徐々に制度が整って全国に広がるでしょう。事業所をかまえる都道府県でのサポート制度が始まったときは、その制度をさらなるSDGs活動の推進のために利用してはいかがでしょうか。
企業がSDGs活動を推進するためには、SDGsの基礎知識の獲得と本質の理解が欠かせません。ビジネス文脈におけるSDGsの基本的な情報を学ぶには、セミナー受講や無料の資料を活用することをオススメしています。その情報については、以下の記事が参考になります。
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