blog

ブログ

SDGs目標3 すべての人に健康と福祉を|世界と日本の課題とは

SDGs目標3 すべての人に健康と福祉を|世界と日本の課題とはの画像

SDGsという言葉が世の中に浸透するようになり、年々認知度が上がってきています。SDGsが目指す持続可能な社会に向けて、私たちはどのように行動できるでしょうか。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、現在コロナウイルスの影響を受けている社会において最も重要な課題の1つと言えます。健康の維持には治療だけでなく、ワクチン接種などの予防や福祉サービスの利用が必要です。さらに、医療従事者の確保も課題で、特にコロナ渦による医療従事者の不足によって患者の受け入れが困難な状況が続いています。

今回の記事では、SDGs目標3の内容解説と、関連する国内外の課題・キーワードを紹介します。

今回の記事は以下のような方にオススメです
  • 目標3の内容を詳しく知りたい
  • 自社事業の取り組みと目標3の関係性を考えたい
  • 目標3の内容を子どもにわかりやすく教えたい
  • 目標3に関連する用語が知りたい

SDGsのすゝめ基礎_banner-Drop

目標3「すべての人に健康と福祉を」の概要

目標3は「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」がテーマに掲げられています。

ターゲットは13個あり、母児の死亡率削減・感染症の予防や治療の強化・福祉サービスへのアクセス改善・依存症・交通事故への対策など、あらゆる健康や福祉の問題を解消していくための課題を挙げています。

新生児から成人までのあらゆる世代の健康問題を対象とし、正しい知識による感染症予防を目的とした教育支援や、支払い可能な額で医療を受けられることを目指した経済面への配慮についても触れていることが特徴です。

セミナー_banner-Drop

目標3のターゲット一覧

以下の表でSDGs目標3のターゲット一覧を紹介しています。各ターゲットを読むとどんなゴール・課題が目標3に含まれるのかイメージがわくでしょう。

企業・個人でSDGsの達成に貢献する取り組みを始めるには、このターゲットから考えていくことがオススメです。そのうえで、SDGs media では、アクションを考える参考になる無料の資料『S【17目標別】企業のSDGsアクションリスト|345種類の施策から自社の取り組みを探そう』を提供しています。取り組みを考える際はぜひご活用ください。

3.12030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3.2すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以 下死亡率を少なくとも出生 1,000 件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.32030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3.42030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.62020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.72030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。

3.8

すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.92030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3.aすべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定) 及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3.dすべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。

sdg_banner_3

世界に存在する健康・福祉の問題とは

目標3 画像1

妊産婦・新生児・5歳以下の死亡率

目標3のターゲットでは、妊産婦・新生児・5歳未満それぞれの死亡率を下げることを目指しています。

ターゲット3.1では、2030年までに世界の妊産婦死亡率(出産10万件あたりの死亡率)を10万人あたり70人未満に削減するという目標が設けられています。

2000年から2017年の間に妊産婦死亡率は約38%減少していますが、それでも2017年には約29万5,000人もの女性が妊娠中・出産後に命を落としています。このうち94%が低中所得国で発生しており、WHOは医療機器や人員が充分であれば予防できた可能性が高いと示しています。

なお、2017年時点の妊産婦死亡率は、高所得国で出生10万人あたり11人に対して低所得国では462人と目標の70人未満よりも約6倍も多い数値です。

ターゲット3.2では、新生児死亡率を出生1,000人あたり12人以下まで、5歳以下の死亡率を出生1,000人あたり25人以下まで減らすことを目指しています。しかし、2020年には約240万人の新生児が死亡しており、5歳未満の子どもの死亡数全体の47%に達しています。

これらの死亡率には地域格差が生じており、2020年にはサハラ以南のアフリカが最も新生児死亡率が高く、出生1,000人あたり27人を記録しました。

新生児死亡の主な原因は、早産や出産に伴う合併症・肺炎・感染症などが挙げられますが、十分な医療・福祉サービスがあればこれらは無料で予防と治療が可能です。特に新生児が生後28日以内に死亡する原因には、出生時や出生直後、もしくは生後数日の間に十分なケアを受けられないことが影響しています。このことからも出産時や出産前後に母子に対する十分なケアが、死亡を防ぐことが不可欠だとわかります。

資料請求_banner-Drop

基本的な保険サービスや予防接種

世界銀行とWHOの報告書(2017)によると、乳幼児の予防接種や妊産婦検診などの基本的な保健サービスを受けられずにいる人は、全人口の半数を占めます。また、ユニセフによると、年間約150万人の子どもがワクチン接種によって防げる病気で命を落としていることがわかっています。

基本的な保険サービスを受けられない理由には、経済的な問題が大きく関係しています。医療費が家計の10%を占める人口は8億人おり、医療費の自己負担が原因で貧困に陥る人が多くいます。

この解決策としてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)があります。これは「すべての人が支払い可能な費用で基本的な保険サービスを受けられること」を意味し、不平等な健康問題を解消すべく、UHCへの注目は今後さらに高まると考えられています。

エイズ・結核・マラリアなど熱帯病や伝染病

ターゲット3.3は、2030年までにエイズ・結核・マラリアなどの伝染病を終息させることを目指しています。ここでは、それら伝染病の現状についてみていきます。

エイズの現状

エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が最も進行した状態です。HIVへの感染後に適切な治療が受けられないと、重篤な全身性免疫不全になり、さらなる感染症や悪性腫瘍を引き起こします。2021年のHIV感染者は3,840万人と推定され、そのうち3分の2以上がアフリカ地域で発生しています。

現在HIVの完全な治療法はありませんが、抗レトロウイルス療法(ART)によってHIVと共生しながらも健康的に生活できる人が増えており、ARTを普及させることがHIVの感染者の減少に大きく貢献すると考えられています。

結核の現状

結核は結核菌によって生じ、多くが肺で発症します。2021年の結核罹患者は約1,060万人で、そのうち約120万人は子どもでした。同年の結核による死者は160万人で、世界の死因第13位でした。子どもと青年期は結核が見過ごされることが多く、診断・治療が難しい状態だとされています。

結核は治療可能な病気の1つであるため、結核発症の98%を占める低中所得国での医療を充実させることが、目標を達成する方法の1つです。

マラリアの現状

マラリアは、寄生虫によって引き起こされる生命に関わる病気です。2020年には2億4,100万人がマラリアに感染しており、そのうち62万7,000人が死亡したと推定されています。

マラリアは結核同様に治療・予防が可能なため、WHOはマラリア感染・死亡例の96%を占めるアフリカで、ワクチンの普及活動に取り組んでいます。

ここで紹介したいずれの伝染病も罹患初期での適切な治療が必要であり、目標達成に向けてどのような地域であっても医療体制の整備が必要です。

SDGsのすゝめ実践_banner-Drop

薬物・アルコール依存

薬物やアルコール依存は、人々の健康な生活に大きな被害を与えます。ここでは、アルコールや薬物による健康被害や依存症について解説します。

飲酒は、肝硬変・がん・心血管疾患・交通事故による負傷や死亡など身体的症状に加えて、精神的症状(うつ病など)など多くの健康問題に繋がります。

薬物依存は注射器の共用によるC型肝炎ウイルスへの感染や、HIVなどの身体的な健康障害に繋がります。それだけなく、薬物の乱用によって重大犯罪を引き起こしたり、人間関係を壊したりすることで、友人・家族・仕事を失い社会から孤立してしまいます。

WHOによると世界では毎年300万人(10秒に1人)がアルコールの乱用によって死亡しており、特に20歳から39歳の若年層の死因になっています。

依存症は強い意志があれば治るイメージがあるかもしれませんが、依存症は脳の病気だと言われており、完治には適切な治療プログラムや支援が必要です。そのため、目標3のターゲットには麻薬乱用やアルコールの有害な摂取の防止・治療を強化することが含まれており、依存症への適切な介入が求められています。

性や出産に関する教育機会

ターゲット3.7には、家族計画や情報・教育、及びリプロダクティブヘルスの国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする目標が設けられています。

リプロダクティブヘルスとは、「性と生殖に関するすべての人々の生涯にわたる健康と権利」と訳されます。WHOが定義した健康とは、「身体的・精神的・社会的に良好な状態」であり、生殖の過程でもすべての側面で良好な状態(well-being)であることが理想です。

生殖の過程で良好な状態(well-being)が保たれれば、安全な性生活を営むことができ、生殖能力を持って子どもを持つか持たないか、持つならいつ何人の子どもなのかなどを自由に決められます。そこには安全で効果的、かつ安価な避妊方法・サービスを入手できることも含まれます。

しかし現実には、4人に1人の女性が自身の身体について自己決定権を持っておらず、望まない妊娠は毎年1億2,100万件にも及びます。そのうち60%が明らかに望まない妊娠のため中絶に至り、安全でない中絶方法を選んだため死亡する妊産婦死亡の大きな要因となっています。

世界人口白書2022によると、望まない妊娠は女性や少女個人の所得や教育水準だけが関係しているのではなく、国全体の国民総所得と教育水準が、望まない妊娠率の数値に影響を与えている可能性が高いと示しています。

また、低中所得国かどうかは関わらず、ジェンダー不平等の状況にある国では望まない妊娠率が高いこともわかりました。ジェンダー平等が進んでいる国、すなわち高所得国では、女性が望まない妊娠を回避できる状態にあることがこのグラフからもわかります。

非感染症疾患が原因の若年層の死亡

ターゲット3.4では、予防や治療を通じて、非感染症疾患による早期死亡を2030年までに3分の1に減少させることを目指しています。

非感染性疾患とはがんや慢性呼吸器疾患・糖尿病などの慢性疾患を指し、それらが原因で4,100万人が亡くなっています。(世界の全死因の71%に相当)。

70歳を待たずして毎年1,500万人以上が非感染性疾患によって死亡しており、そのうち86%が低中所得国で発生しています。非感染性疾患をわずらう患者の治療だけでなく、この疾患を将来的にわずらう可能性がある低中所得国の若年層への保健衛生の整備も目標達成には重要です。

非感染症疾患の死亡リスクには、喫煙・運動不足・不規則な食生活・飲酒が関係します。予防するには個人が行動を変えるよう意識するだけでなく、あらゆる機関・組織が協力してリスク軽減に努め、疾患を早期発見し治療を強化していくために介入を進めていくことが必要です。

交通事故

WHOによると毎年約130万人が交通事故によって死亡しており、若年層(5歳から29歳)の最大の死亡原因です。死亡者が出た交通事故の93%が、車両保有台数が比較的少ない低中所得国で発生しています。さらに毎年、命は助かったものの約2,000万人から5,000万人が交通事故によって、致命的でない怪我をして障害を負っています。

交通事故による負傷は、治療費や裁判の費用など個人や家族・周囲・さらに国全体にも経済的損失をもたらします。

交通事故は、安全な運転の習慣づけや道路及び車両などのインフラ整備・交通緩和対策などによって予防・回避できるため、これらの取り組みが求められます。

人権 eラーニング_banner-Drop

医療が必要な人に届かない主な理由

目標3 画像3

「基本的な保険サービスや予防接種」で触れたように、SDGsでは質の高い基礎的な保険サービスへのアクセスや、すべての人が支払い可能な費用で効果的・安価な保健サービスを受けられる状態のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を目指しています。

しかし、実際には低中所得国には充分な医療が届いていません。ここでは、医療が必要な人に届いていない理由について解説します。

医療への物理的なアクセスが難しい

救急医療が必要なときに必要な人に届けられれば、死亡率を大幅に減少させられます。しかし、サハラ以南では約2憶8,700万人(2020年時点)が近くの病院から2時間以上かかるところで生活しています。そのため、1秒を争う生死を分けるような事故や病気が発生した際に、迅速に医療機関を受診することが難しい状況があります。

経済的な理由で受診できない

JICAによると、世界には8億人が世帯総支出の10%を超える医療費を負担しており、それが原因で貧困化が起きています。SDGsが目指す、すべての人が安価で効果的な医療サービスにアクセスできる状態に反して、身近に医療機関が整備されたとしても、医療費が払えず適切な医療が受けられない状況が生まれています。

SDGsのすゝめ基礎_banner-Drop

医療を必要な人に届けるには医療以外の整備も不可欠

UHCの達成には、先述の医療機関へのアクセスや経済的な理由の解消だけでなく、教育の普及・ジェンダー平等の推進・経済格差の是正など、保健分野に留まらない健康を守る社会を作ることが必要です。以下の図からもわかるように、UHCの実現には、物理的アクセス・経済的アクセス・社会慣習的アクセスの3つの改善が求められます。

対策が必要な健康・福祉の課題

目標3 画像5

低栄養による栄養不良

現在、世界の約9人に1人が飢餓状態とされており、5歳未満児死亡の45%が低栄養に関係しています。その予備軍とも言える発育阻害の犠牲となっている子どもが、約1億5,900万人います。特にアフリカ地域で低栄養状態にある子どもが増加傾向にあり、新型コロナウイルスの影響で今後は栄養不良人口のさらなる増加が懸念されています。

子どもが十分に栄養のある食事が取れないと、脳や身体の発達が阻害されてしまい、学習の遅れ・免疫力の低下・収入獲得能力などが、制限されるおそれがあります。

ユニセフはこの課題に対して、以下のよう栄養支援を世界各地で推進することで、健康問題の解決を目指しています。

  • 栄養不良の子ども達がすぐに口にできる1袋500キロカロリーの治療食の提供
  • 重度栄養不良の子どもに向けた治療用ミルクの提供
  • 免疫を高めるビタミンAの投与
  • 地域保健員の配置 など

一方、各国の政府や国際機関・市民団体なども栄養改善に向けて取り組みを行ってきましたが、依然としてどの国にも栄養課題が存在しています。多くの国が低栄養と過栄養が併存する「栄養不良の二重負荷」に直面しており、その解決に向けて社会環境を含め包括的な対策が必要です。

資料請求_banner-Drop

貧困

WHOと世界銀行がまとめた調査結果(2021)によると、医療費の自己負担によって極度の貧困に陥った人は5億人以上います。この危機的状況から、新型コロナウイルスの世界的流行により保険サービスの混乱や、10年ぶりの予防注射の接種率低下によって結核やマラリアによる死者が増えることなどが予測されています。

JICAでは先述のUHCの実現に向けて3つのアクセスの改善と、医療サービスの質向上に取り組んでいます。例えばセネガルでは、最貧困層・脆弱層が保健医療サービスを受けられるようなプロジェクトが進んでいます。

貧困が健康状態に大きく関係することから、JICAのプロジェクトは健康・福祉における課題解決策の1つと言えます。

不衛生な環境が原因で命を落とす

2020年世界では約36億人が安全に整備されたトイレを利用できておらず、そのうち4億9,400万人は家・近所にトイレが無いため野外で排泄しています。排泄物が安全に処理されていなければ細菌が体内に侵入し、免疫力の低い子どもは下痢を発症してしまいます。なお、年間約52万5,000人の5歳未満児が、下痢によって死亡しています。

また、世界では6億6,300万人が安全に飲める水を手に入れられず、浄水処理がされていない池や川・井戸の水を飲み、下痢を発症する例も少なくありません。そのような危険な水を飲んで命を落とす乳幼児は年間約30万人、毎日800人以上もいます。

ユニセフやJICAは清潔な水を届けられるよう、世界中の村や学校・保健センターなどへの給水所の設置・トイレの設置を行ったり、石けんを使った正しい手洗いの習慣を広めたりなど、さまざまな活動をしています。不衛生な環境が下痢のような健康障害に繋がることから、こうした衛生支援が健康な生活の確保に貢献していると言えるでしょう。

安全な水とトイレに関する目標6の内容は、以下の記事で解説しています。

識字能力や健康に関する知識・情報不足

HIV感染者のなかで青少年と若者(10歳から24歳)が占める割合は増え続け、2019年新たに感染した若者は46万人でした。この背景には、若者のリプロダクティブヘルスに関する知識が十分でないことが関係し、学校やコミュニティを通してHIV・エイズの正しい知識や予防方法を伝える啓蒙活動が行われています。

また、世界にはアフリカ・南アジアなどの貧困層や女子を中心に、基本的な読み書きや計算が習得できていない子どもや若者が約6億人います。高校教育の就学率も低所得国では約9%であり、高所得国の就学率約75%と比べても大きな差が生じています。

識字能力が低ければ、健康・福祉サービスを受けるために必要な情報が得られず、正しい薬の内服方法を理解できないなどの問題の他に、教育や就業の機会が制限されることが考えられます。

JICAはこのような課題の解決に向けて、DXを活用した教科書・教材開発や「みんなの学校」の推進、女子教育・障害者教育の充実など、さまざまな取り組みを行っています。

セミナー_banner-Drop

他にもある、目標3に関連する課題のキーワード

目標3 画像6

今回の記事では紹介しきれなかった、目標3に関連する課題のキーワードを簡単に紹介します。興味のある方は、ご自身で調べてみてください。

超高齢化社会

人口に対する高齢者率を表す用語には、65歳以上の人口が全人口に対して7%を超える「高齢化社会」、14%を超える「高齢社会」、21%を超える「超高齢社会」の3段階があります。

2020年日本の65歳以上の人口が総人口の28.8%を占め、日本は超高齢社会です。今後も65歳以上の人口は増加が予測され、2042年に3,935万人でピークを迎えます。その後、65歳以上の人口は減少すると予測されていますが、高齢化率は上昇し、2065年には約2.6人に1人が65歳以上になると予測されています。

なお、65歳以上と現役世代(15〜64歳)の比率を観ると、2015年には65歳以上の者1人に対して、現役世代2.3人であったものの、2065年には現役世代が1.3人になります。このように、今後も高齢化率の上昇と現役世代の割合低下は進んでいくと考えられています。

健康寿命

健康寿命とは、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の時間を差し引いた期間を指します。

厚生労働省によると、日本の平均寿命は男性81.64歳、女性87.74歳であり、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳でした。一方、WHOによると世界の健康寿命の平均は男性62.5歳、女性64.9歳のため、日本は約10年も健康寿命が長いことがわかります。

ただし、日本では寝たきりの期間が欧米と比べて6年以上長く、平均寿命と健康寿命には大きな差があります。それを踏まえて、厚生労働省は2019年に「健康寿命延伸プラン」を策定し、2040年までに健康寿命を男女ともに75歳以上にすることを目指しています。

社会保険費

日本は、国民皆保険制度によって支払い可能な額で医療を受けられるため、世界でも最高水準の平均寿命と保健医療を実現しています。

一方少子化に伴う労働者の減少や、コロナウイルスの影響で一人ひとりの収入減少が懸念されており、高齢者の増加に伴う医療費の増額から、国民皆保険制度をどのように継続していくかが重要な課題となっています。

人権 eラーニング_banner-Drop

介護人材の不足

日本では少子高齢化が進んでいるため、要介護者は20年間で約2.6倍に増加し今後も増加傾向にあります。2025年度には介護職員が約32万人増の約243万人、2040年度には約280万人が必要と推測されており(2019年度比)、介護ロボットの活用推進が介護サービスの質向上や、人材確保の対策として注目されています。

一方、介護事務所に向けた調査(2020年)によると、介護ロボットやICTのいずれも導入してない事業所が全体の80.6%もいます。これを踏まえて、国は介護ロボット導入の補助額の引き上げや、現場の声を聞きながら開発できるように介護現場と開発企業の双方を支援するプラットフォームの設置など、さまざまな取り組みを行っています。

また、厚生労働省は団塊の世代が75歳以上になり介護ニーズが高まると予想される2025年に、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築を実現することを、急務の課題として掲げています。この実現に向けて、2014年以降に消費税増収分などを活用した財政支援制度を創設し、支援を受けた各都道府県は事業を実施しています。

認知症

認知症は脳の病気や障害など、さまざまな原因により認知機能が低下し、日常生活全般に支障が及ぶ状態をいいます。認知症にはいくつも種類があり、最も多い症状がアルツハイマー型認知症です。

日本では65歳以上の認知症患者は約600万人(2020年時点)とされ、2025年には約700万人が認知症になると予測されます。また、若くても認知症を発症することがあり、若年性認知症者は約3.57万人いると推計されています(2020年時点)。世界では、約5,500万人以上が認知症を抱えながら暮らしており、毎年1,000万人近くが新たに発症しています。

認知症は記憶障害や判断力が低下するなど、身の回りのことが自分でできなくなり、患者自身だけでなく介護者や家族・社会にも影響をもたらします。治療可能な認知症もありますが、アルツハイマー型認知症のように治療が困難なものもあり、薬の開発が進んでいます。

誰でも認知症になりうる可能性があるため、厚生労働省は認知症を正しく理解して、認知症になっても尊厳と希望を持って日常生活を過ごせる「共生社会」を創ることが重要だと示しています。

生活習慣病

生活習慣病は食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなど生活習慣が発症の原因となる疾患の総称です。例えば、動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などが挙げられ、日本人の三大死因であるガン・脳血管疾患・心疾患の要因となります。

20世紀以降、世界の主な死亡原因が生活習慣病となっていることから、2000年に厚生労働省は「健康日本21」を策定し、健康寿命の延伸や生活習慣病の予防を重視しています。

予防は規則正しい食事や運動不足の解消、禁煙などのストレスコントロールによる一次予防、定期健診や受診・人間ドックによる早期発見・治療を目指す二次予防、適切な治療やリハビリなどを通し、病気や障害の進行を防止する三次予防に分けられ、それぞれの段階に応じた対策が必要です。

SDGsのすゝめ基礎_banner-Drop

医師・看護師不足

世界では、男女合わせて約2,700万人が看護師や助産師として働いており、世界の保健医療分野で働く人の半数を占めています。東南アジアやアフリカでは看護師と助産師の不足が最大で、WHOは2030年までに世界中でさらに 900万人の看護師と助産師が必要であると推定しています。

なお、2016年時点で日本では国民414人に対し医師の数は1人ですが、途上国では深刻な医師不足で、病気になっても治療が受けられない子どもが過半数を占めています。

医療従事者の不足は、すべての人が平等に適切な治療をタイムリーに受けられない要因の1つであり、目標3の達成に向けて大きな課題だと言えます。

自殺

毎年約70万人以上が自殺で亡くなっており、2019年には15歳から29歳の死因第4位、世界の自殺の77%が低中所得国で発生しています。

うつ病やアルコール依存症のような精神障害と自殺は深く関係していますが、紛争や災害・暴力・虐待などの経験や、難民や移民・自身のセクシュアリティから差別を経験している人の自殺率も高くなっています。

自殺は、社会の複数の部門からの包括的なアプローチによって予防可能ですが、自殺を考えている、もしくは自殺未遂をした人は助けを求めることが少ないため、残念ながら必要な援助が届かない場合が多いです。

また、社会的にも自殺について公然と議論することがタブー視されていことから、WHOによると自殺予防戦略を持っていると報告している国は38カ国のみ(2021年時点)です。そのため、部門内のコミュニティの意識を高め、タブーを打破することが自殺防止のために重要となっています。

孤立死

孤立死は、誰にも看取られることなく息を引き取り、長期間放置されるような状態を指しますが、明確な定義は無く、全国的な統計も存在していません。

内閣府の発表によると、東京23区内の自宅で死亡した65歳以上の一人暮らしの人は2009年から2019年にかけて、2,194人から3,936人に増加しています。この死亡者数がすべて孤立死ではないものの、孤立死の多くはこの人数に含まれると推測されています。

別の調査では、60歳以上の一人暮らし世帯では、孤立死を身近な問題だと感じる人が5割を超えていることがわかりました。内閣府は、孤立死が人間としての尊厳を損なうものであり、親族や近隣住人・家主など周囲にも心理的衝撃や経済的負担を与えるとしています。

全国の自治体では、生きている間の孤立状態に対応するために、ガス・電気・水道などの事業者と協力したり、同じ地域に住む人達で見守ったりするなど、見守り活動によって普段の様子と変わりないかを確認し、孤立死を防止するような取り組みが実施されています。

セミナー_banner-Drop

まとめ

ここまで目標3の内容や課題・関連する用語について紹介してきました。

コロナウイルスの影響を受け、ご自身で健康や福祉について考える機会が以前より増えたかもしれません。この記事を読んで、世界に存在する多くの健康問題が、適切な医療をタイムリーに受けられれば予防・治療が可能であることを理解できたのではないでしょうか。

この記事を読んで学んだ取り組みを、周りに伝えたり自分でさらに調べたり取り組んだりしてみてください。

SDGsmediaでは、他の目標についても解説しています。気になる目標があれば、画像をクリックして解説記事を読んでみてください。各目標の詳細やSDGs自体について、企業とSDGsについてなど興味を持った方は、ぜひSDGsmediaで関連情報をご覧ください。

▶SDGsとは?17の目標内容と日本の政府・企業の取り組みを徹底解説 を読む

▶企業がSDGsにいま取り組むべき理由を解説 を読む

SDGsのすゝめ実践_banner-Drop

SDGs media 主催のセミナー情報

セミナーの開催予定・申し込みページ

SDGs media が開催するサステナビリティ・ビジネスと人権などに関するセミナーは定期的に開催しています。直近の開催予定・お申し込みは以下のページから。

▶SDGs media のセミナー情報はこちら

過去のセミナーアーカイブ動画を無料で提供中|SDGs media のセミナー情報

過去に開催して好評だったSDGs推進・企業と人権・カーボンニュートラルと企業などのテーマのセミナー動画を無料で提供しています。担当者自身の勉強や社内での研修・勉強会などにお役立てください。

▶過去の共催SDGs/サステナセミナーの動画を配信しています。詳細はこちら

SDGsのすゝめ第1回

SDGs基礎知識・外部環境の変化・SDGsに取り組むメリット・最新のビジネストレンド

▶視聴のお申し込みはこちら

企業の効果的な人権教育研修とは

人権尊重の意識醸成:自分ごと化から企業価値向上まで・サプライチェーン全体(川上〜川下)での理解浸透・ビジネスと人権eラーニングの変化したポイントを紹介・eラーニングのデモ版の紹介

▶視聴のお申し込みはこちら

ビジネスと人権(第1回)

人権とは・「ビジネスと人権」の考え方・企業活動と人権尊重・企業に求められる取り組み〜人権方針と人権デュー・ディリジェンス

▶視聴のお申し込みはこちら

ビジネスと人権(第2回)

ビジネスと人権の基本知識・企業による人権の取り組みのプロセスとポイント・人権に関する教育/研修の重要性

▶視聴のお申し込みはこちら

ビジネスと人権(第3回)

企業における人権尊重のあり方・企業の人権尊重に関する国内外の動向・企業による人権の取り組みのプロセスとポイント・参考になる企業事例の紹介

▶視聴のお申し込みはこちら

 

セミナーのお申し込みはこちら

資料請求_banner-Drop

 

参考サイト:

SDGsの資料請求はこちらから